「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」
たった一人の演技力だけで二時間半をリードしていくものすごい映画にであった気がします。全く、全盛期のアル・パチーノの真骨頂を見たという傑作。これが演技力、これが役作りというものでしょう。素晴らしい作品に出会いました。監督はマーティン・ブレストです。
ベアーズ高校に通うチャーリーは奨学金をもらいながらオレゴンからやってきた苦学生である。友達のジョージはこの学校の大口寄贈者を父に持ついわゆる金持ちだが、いつも彼らの取り巻きと遊んでいた。
ある夜の学校帰り、ジョージとチャーリーは友達が校長先生の車にいたずらをするべく駐車場の街灯に仕掛けをしているを目撃する。その翌朝、そこに車を止めた校長の車にペンキがばらまかれる。激怒した校長は、たまたま前夜、ジョージとチャーリーと出会った先生の連絡で二人を呼び、夕べ見たことを白状するように迫る。しかも、チャーリー一人にはハーバード大学への推薦と引き換えに真犯人を言うように迫るのだが、チャーリーは答えない。
みんなが感謝祭で実家に戻る時、行くところもないチャーリーはクリスマスの帰省の費用を稼ぐために、週末だけ、盲目の退役軍人の世話をするアルバイトを見つける。行ってみると、やたら口の悪い男フランクが待っていた。
初登場のシーンがとにかくすごい。目が見えないので眼球が微動だにせず、じっと一点を見つめている。そのフランクが窓の明かりを背にしてこちらに向いている。そこへ子供みたいな青年チャーリーが入って行くのだ。しかも、軍隊で鍛え上げられた腹の底から飛び出してくるようなフランクの言葉に震え上がってしまう。アル・パチーノの素晴らしい役作りの賜物と言うほかない。
いとこ夫婦が週末の旅行に出かけたのを見送ったフランクはいきなり荷造りをしてチャーリー共々ニューヨークへ旅立つ。予想外の行動に翻弄されながらもついて行くチャーリー。そしてニューヨークに着いたフランクは次々と自分で計画したプランを実行して行く。豪華なホテルに泊まり、リムジンに乗り、贅沢な食事をし、一級品の娼婦を雇う。一方、チャーリーが学校で真犯人を言うかどうか迷っていることにしっかりと目を向けてやるのだ。
フランクはすべての計画が終えたら自殺をするつもりであり、チャーリーを巧みに買い物に出し、自らは軍服を着て正装し、銃を準備するが、おかしいと思ったチャーリーが戻り、自殺を阻止する。
娼婦と過ごした翌朝、ニューヨークで、ぐったりと生気を失ったフランクをチャーリーが励まし、フェラーリを乗り回すシーンがまず爽快である
目の見えないフランクがチャーリーの指図だけでぶっ飛ばし、警官に捕まり、そこも巧みにかわす。またレストランでチャーリーが目をつけた女性に近づくために、見えないままにその女性とタンゴを踊り、チャーリーと親しくさせてやるシーンなど素晴らしい。
やがて、戻ったチャーリーは学校の懲罰集会にジョージと呼ばれる。その場でジョージは巧みに犯人を匂わす。そこへフランクがやってくる。最後まで真犯人の名前を出さないチャーリーに学校側は懲罰を言い渡すが、そこでフランクが例の調子で、「友を裏切らないことの美徳」を演説、場内が大喝采となり、懲罰はなくなり、フランクは姪のもとに帰って行く。
物語は実にシンプルなのだが、とにかくフランクのキャラクターが絶品というが素晴らしい。こういうタイプの名作もあるものだと唸ってしまいました。
「ライフ」
宇宙の未知の生命体に襲われるパターンは今時もう珍しくない。だからどういう経緯で現れるのか、どういう対決をするのか、どういう結末にするのかはよほど工夫しないとありきたりになる。その意味でありきたりだったと言わざるを得ないが、面白くなかったわけではないので、まあいいとしよう。監督はダニエル・エスピノーサです。
火星のサンプルを回収するべく地球圏外に設立された宇宙ステーション。そこで回収されたサンプルの研究が進むが、そのサンプルは次第に進化し、突然人間に襲いかかる。
アメーバ状のヒトデのような姿で人間に絡みつき、絞め殺し、酸素を吸収、徐々に巨大化してくる。六人のクルーが次々と殺されていき、地球へ持ち込まないために隔離作戦が実行されるが功を為さず、最後は残った二人デビッドとミランダが救出ポッドに誘い込んで宇宙の彼方に送り出すことにする。
そして、デビッドが生命体を持ったままポッドを発射、ミランダがもう一つのポッドに乗り地球にむかう。
やがて、地球に一機のポッドが落ちて着て、漁師が開けようとすると、なんとそれは生命体を閉じ込めたデビッドのポッドで、ミランダのポッドが宇宙の彼方に弾き飛ばされたのだとわかる。そして、制止を聞かず漁師がポッドを開けた風になりエンディング、悲劇的結末である。
まあ、それほど長くないし、シンプルなストーリーなので楽しめたからいいとしよう。そんな映画でした。