くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ろまん化粧」「すばらしき世界」

「ろまん化粧」

入り組んだ男女が織りなす恋愛模様という感じで、どれという核の話もなく、ただ入り乱れて雑多な展開となる。まさに映画黄金期のプログラムピクチャーという空気の映画でした。監督は穂積利昌。

 

パリで学んできたヘアスタイリストの女性が日本へやって来るところから映画は始まる。彼女を迎えにきたのは美容室を営む掛井だが、空港で新聞社の真木という男と出会い一目惚れしてしまう。しかし、掛井の所の専属モデルの一人木塚の弟隆が掛井に一目惚れしてしまい、強引にキスをする。しかし掛井にその気がないため、自暴自棄になった隆は大学を辞め、真木の紹介で出版社に勤める。しかし、そこの上司の女性と良い仲になり生活は荒れてくる。

 

一方、あるミスコンに出場した真木の妻の妹が見事優勝し、どんどん有名になっていく。そんな話の合間に掛井は大会社の重役風間と見合いすることになる。しかし、どうにもいけすかない風間に愛想を尽かした掛井は、やはり真木を忘れられない。しかし、真木の心が定まらず、たまたま出会った隆と一夜を過ごしてしまう。

 

直後、掛井は真木から結婚を申し込まれるが、すでに遅いと断る。そんな時、サラリーマン仲間に恨まれた隆はチンピラに刺されて死んでしまう。死ぬ直前、掛井は真木を愛していると言って息を引き取る。

 

掛井はフランスにもう一度行くというヘアスタイリストと飛行機で旅立って映画は終わる。って、結局何なのだという物語ですが、今みれば当時の世相や風俗が垣間見られる面白さがあります。

 

「すばらしき世界」

なんとも嫌味な映画である。映画としてはよくできた作品だが、ラストで初めて出るタイトルクレジットで一気に嫌な気分になってしまった。何でもっと素直にたのしめる映画を作ろうとしないのだろう。「ヤクザと家族」とほぼ同じテーマを扱っているが、あちらが男目線のドラマ作りなのにこちらはインテリの女目線の作品になったように思えます。ヤクザとして生きたことによるペナルティを描く一方で、母親への追慕を終盤に盛り上げてくる。しかも、ラストで健常者たちがする行為に目をつぶれるようになった結果ああいうラストを迎え、そしてタイトルクレジット。これはどうなんだろうか。監督は西川美和

 

雪が深々と降る刑務所の場面から映画は幕を開ける。主人公三上が十三年の刑期を終え、北見の雪深い刑務所を出る日が来た。荷物を返してもらい、見送られてバスに乗る。今度こそ堅気になると呟く。そして、保護士の元へ出かけ、生活保護の申請をし、仕事を探そうとするも、すぐに昔の癖が出てキレて暴れてしまう。高血圧で薬を手放せない。このあたりの三上の描き方の描写がまるで聞かん坊の子供を描いているように見える。

 

ここに、刑務所から出て来た人物に焦点を当てて番組を作ろうとしている吉澤という女が、今は小説を書こうと頑張っているかつての同僚津乃田を誘い、三上が刑務所にいる時に自らの服役記録を綴った身分帳から母親を探してほしいという依頼に乗るという企画を進めようと近づいてくる。そして、津乃田らは三上に近づくが、三上がチンピラを袋叩きにするのをみて、津乃田は尻込みしてしまう。この後、吉澤も含め取材の二人は消えてしまう。

 

免許を取ろうとしてもうまくいかず、スーパーでは疑われてしまうがそこの店長と仲良くなる。生活保護課の担当者からも哀れみを受ける。しかし、どうにもうまくいかずもがく中、いけないと思いながらかつての兄弟分に電話をしてしまう。そして故郷の九州へ行った三上はそこで気楽に自分の居場所を見つけた気がする。ところが、そこにも警察が踏み込み、すんでのところで女将さんに助けられて脱出した三上は再び東京へ戻る。

 

心配していた津乃田は、かつての孤児院の手がかりが見つかったからと話し、自分が三上のことを小説にするから、元の状態に戻らないでくれと頼む。三上も受け入れ、孤児院へ行くが、三上の母親のことは結局わからなかった。このエピソードを入れた理由がどうも曖昧なのが気になりました。

 

三上は生活保護課の担当者の提案で介護施設にパートに行くことになる。さまざまなことに目を瞑って生きろと保護士らに諭され、それを頑なに守る決心をする。

 

ある日、三上が仲良くしている発達障害のある職員が健常者の若い職員にいじめられているのをみて、思わず手が出そうになるが、必死で三上は感情を抑える。そして、職員らが障害者をネタにふざける姿にも同調してしまう。

 

その帰り、障害のある職員から花をもらう。それを持って帰る途中、三上にかつての妻から電話が入る。出所祝いにご飯でも行こうという。今や人妻となり子供もいる元妻との会話にかすかに心が晴れる。雨が降ってくる。三上は家に帰るが、高血圧のためかそのまま死んでしまう。

 

駆けつける津乃田やスーパーの店長、保護士、生活保護課の担当者、映画はここで空にカメラが振られタイトル「すばらしき世界」と出る。醜いものに目を瞑って自分のことだけで生きる普通の人たちが作る世界がすばらしき世界になっているかと言わんばかりで、そうなって初めてまともになる三上を描くという嫌味さはさすがにいただけない。深読みしすぎかもしれないが、そのほか三上の脇の人物の存在感が今ひとつ薄いのが余計に嫌味さが目立つ仕上がりになった気がします。