「ゴールド・ボーイ」
原作が弱いのか脚本が甘いのか、登場人物が全く生きた人間に見えない上に、それぞれの人物背景が全く感じられず、しかも小手先だけの展開を繰り返し、キレのない演出で目先の面白さだけを追いかけていく作品だった。役者陣も精彩がないし、怖さもサスペンスも感じられないとっても物足りない映画でした。監督は金子修介ですが、どうしたのだろうという作品でした。
沖縄の崖の観光地でしょうか、義理の両親を親切に案内する東昇の場面から映画は幕を開ける。体良く記念撮影した東は突然二人を崖から突き落とす。夏休みの終業式のある中学校の教室。一人の女生徒が自殺したらしく机に花が飾られている。そのクラスの安室朝陽が自宅で勉強してると、外に幼馴染の上間浩と義理の妹の夏月がやって来る。義父を刺して逃げてきたという。朝陽は二人を家に入れて泊めてやる。母の香は仕事で留守らしい。
朝陽、浩、夏月は街に出る。浩は不良らしく、恐喝して小遣いを手に入れ、三人でご飯を食べる。どうやら刺した義父は無事らしくニュースに出ない。三人は海岸で写真を撮るが、朝陽は間違えて動画撮影してしまう。ところがその動画に崖から突き落とす映像が映る。それは東昇が義父と義母を殺した映像だった。朝陽の家に朝陽が子供を殺したと落書きされ、父の打越一平が駆けつける。一平は今は別の女性と結婚して家を出ていたが、その女性の娘が冒頭で自殺したという女生徒で、朝陽に殺されたと一平の今の妻が言い張っていたのだ。
朝陽、浩、夏月はニュースで崖から転落した夫婦の報道を見て、その息子東昇の存在を知り、しかも転落した夫婦が大企業東コーポレーションの社長夫婦だった事から東昇を脅して金を取ろうと朝陽は提案する。そして東に接触し六千万要求するが、後日、東は入婿だからとりあえず六十万だけしかないと朝陽らに渡す。折しも、東の妻静が愛人と密会の後、車で事故を起こし死亡する。静と昇ら夫婦の仲は冷めていて離婚する予定だった。しかも、刑事の東巌は、東コーポレーションの関係者で公に捜査できないが、内密情報で静が覚醒剤を飲んでいたことを知る。
朝陽は東に接触し、静を殺したことを自白させ、殺し方を教えて欲しいという。朝陽は父一平の妻と一平を殺したいのだという。東は義両親殺害動画のデータと脅迫金をチャラにする条件で、浩と夏月、そして自分が一平らを殺し、埋める計画を立てる。朝陽は一番に疑われるから、補習授業に出てアリバイを作ることにする。墓地で一平ら夫婦を夏月と浩が巧みに接触して毒殺、東昇がすぐ見つからないように埋めたのだが、なぜか散歩中の犬に掘り出されてしまい、事件が明るみに出る。実は朝陽が事件が早く見つかるように掘り起こしていた。東巌は、次々起こる殺人事件を不審に思い、捜査を進める。
全てが終わった朝陽ら三人と東昇は東のマンションで祝杯をあげ、これを最後にそれぞれ会わないようにしようと言い合っていたが、突然、朝陽、浩、夏月が苦しみその場で死んでしまう。東昇が氷に毒を混ぜて三人に飲ませたのだ。一人悦に浸る東昇の首筋にナイフが突き立てられる、朝陽は東昇の計画を予測して、氷を飲まなかった。安室香から、朝陽らが東昇に会いに行ったと聞いた東巌がマンションに駆けつけるが、自分に刃物傷をつけた朝陽が助け求め、東巌は朝陽を介抱してやる。東巌は、朝陽の言動に不審を抱くが証拠がなかった。
自宅に戻った朝陽は全て終わってくつろいでいた。香が買い物に出ようとして、夏月から朝陽宛の手紙を見つける。朝陽がよく寝ているので、そっとその手紙を開くと、夏月によるこれまでの全ての告白文が載っていた。夏月は朝陽と恋愛関係になっていたのだ。香は東巌に電話をかけるが、そこへ朝陽が現れ、全てを告白し手紙を燃やす。しかし香の携帯は通話中のままだった。買い物に出た朝陽の前に東巌が立ち映画は終わる。エンドクレジットの後、「ゴールド・ボーイ2」のテロップが出てエンディング。
その場限りの面白さだけを追いかけていくなんとも稚拙な脚本で、冒頭のきっかけや、財産問題、さらには家族内の確執などはほとんどそっちのけでラストあたりでは全てどうでもいい流れで映画が終わる。あまりに出来が悪いので情けなくなってしまった。残念な映画でした。