スパイダーマン デラックス・コレクターズ・エディション
サム・ライミ監督の映像美学が爆発した秀作でした。
冒頭のクレジットのシーンからすばらしい。長くもなく、短くもなく、端的なイラストとクレジット紹介で、いつの間にかスパイダーマンの世界に引き込まれていきます。
今回の敵は機械の手を背中につけた化け物ですが、バットマンシリーズと違いあまりにもコミカルな悪役は登場しない。その節度がいい。
恋人との関係に悩む主人公の描写もしつこくもなく、適度にスパイダーマンの活躍シーンを入れることで淡々とつないでいきます。
前半から中盤にかけてのやや平坦な物語展開から、スパイダーマン復活!で新聞の第一面から突き破るように登場するスパイダーマンの映像はまさにサム・ライミ監督ならではの演出です。
火炎に燃える建物をバックに主人公の恋人が振り返るシーンは「キャプテンスーパーマーケット」などで見せるサム・ライミお得意のカット。
背景の炎は明らかにスクリーンプロセスに見えるところがまたいい。
ちょっとわざとらしい電車を止めるシーンに続く人々のスパイダーマンをたたえる場面はおふざけでしょうか?
そしてクライマックスも度派手な爆破シーンを作るのではなく、スパイダーマンの売り物の飛び回るアクションをしっかり取り入れているところが、さすがに見事。
前作からもそうですが、ビルの谷間やハイウエイをクモの糸を自在に放ちながら次々と飛び進んでゆく展開は、いったいどんな絵コンテを描いて演出していくのだろうと感心してしまいます。
ここに、サム・ライミの才能があるのかもしれません。
第三作を予想させるラストもさりげなく、また、エンドクレジットもだらだらと長くならないのは冒頭のクレジットを適度の長さにしたからでしょうか?このあたりの観客への気の使い方も素晴らしいものがあります。なぜ、他の監督はこのことに気がつかないのでしょうかね。
いずれにせよ、前作よりさらにレベルアップした今回の作品でした。