くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バーン・アフター・リーディング」

バーン・アフター・リーディング

コーエン兄弟が久々にはなった、コミカルサスペンス「バーン・アフター・リーディング
冒頭から、衛星上から地球を見る俯瞰、そしてぐーっと寄っていって、この物語の舞台の街へと入り込んでいくあたり、テンポのよい、それでいてどこか意味ありげな音楽をバックにタイトルと共に映し出されるこの冒頭から私たちはコーエン兄弟の痛烈な風刺劇の世界へ引き吊り込まれています。

本編が始まっても、一体なにがどうなってるの、この映画、シリアスなサスペンスなのか、それとも軽快なコメディなのか、あれよあれよとコーエンマジックに翻弄されていくのです。

それぞれの登場人物はそれなりに個性はあるものの、どこか頼りない、いわゆるつまらない部類の人物ばかり。まるでヒーロー像のかけらもない。
CIAの本部らしき物から、機密情報のやりとりまでまるでスパイドラマの定番の品物がたくさんでてくるにもかかわらず、お馬鹿な展開に、次第にどこか違うなと勘ぐり始める

そのころには、完全にコーエン兄弟の社会風刺の術中にはまっているから、すでに立て直しようがなく、結局、謎解きとははらはらどきどきなんてお構いなく、あれよあれよとクライマックスに入り込んだと思う暇もなくカメラは冒頭の逆にすーっと衛星上から地球を見るところまで引いて、突然終わってしまう。

ここに来て初めて「え?おわったの?・・・痛烈な風刺か!」と知らされるのです

どうでもいい人たちの、どうでもいいええかげんな行動に、くそまじめに対処する政府の要人、そして、仰々しいファイルをぱたんと閉じて、カメラがすーっと引き始めるラスト。まさにコーエンならではのお遊び映画でした。

宣伝フィルムの頃から、衝撃のラストとか、どんでん返しとか、を期待していくと、狐につままれたような気持ちになって劇場をでてしまいますからご注意を!