くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ショパン 愛と哀しみの旋律」「ジュリア」

ショパン愛と哀しみの旋律

ショパン愛と哀しみの旋律」
昨年みた「別れの曲」は名曲にポイントを置いたショパンの物語でしたが、こちらはジョルジュ・サンドとの出会いから愛の日々、そしてジョルジュ・サンドの二人の子供との確執などを扱ったいわばショパンの人生の後半を描いた作品です。

大胆な演出で、素早いフラッシュバックや豪快なカメラワークで描く物語は、いわゆるショパンの人生の波乱の部分を描きたかったという意図がくっきりと伺えます。背後にショパンの名曲をちりばめる一方で、まるでアクション映画のごとくのぶつかり合うような画面づくり、さらにふんだんに使った色彩画面が非常に特徴的でした。

サンドの息子で画家でもあるモーリス、天才であるショパンに芸術的に嫉妬する結果、執拗にショパンを疎ましく思う。一方、恋の相手として母に嫉妬する娘のソランジャはこちらもショパンへの愛情がかえって、母や兄への対抗心という形で家族の不和を生み出していく。

そんな中で、必死にまとめようとするジョルジュ・サンドの姿、どうしようもないけれども次々と名曲を生み出していくショパンの姿、これらが時に不協和音のごとくちぐはぐに展開していくストーリーがある意味おもしろいといえるかもしれません。

2時間あまり、退屈のしない映画ですが、いかんせん、画面に品がありません。やたら花花を飾った画面で色彩をふんだんに作り出していますが、統一感がないために素人の絵のようになっている。さらにストーリーの組立もちょっと格調が低すぎるとおもいます。

楽しめるという意味では損をしたと思いませんが、作品の質は中くらいでしょうか。


「ジュリア」
30数年ぶり、午前10時の映画祭のパート2で公開されたので見直してきました。
こちらはすばらしかった。初めてみたときは、この映画こんなにサスペンスフルでおもしろかったと思いませんでしたが、今回は、汽車の中のシーンは手に汗握るおもしろさを感じました。

リリアンにつきそう二人の女性が、さりげなくリリアンをサポートしていく。最初はリリアンがたばこを吸おうとするといやな顔をするのに、無事国境を抜けた後は自分がたばこを吸っている、などという細かい演出。一方のリリアンの額にはうっすらと汗がにじんでいるという緻密な演出もすばらしい。

画面づくりも実に美しくて格調が高い。煙の中ですーと駅に入ってくる汽車の情景。部屋の中の金色と赤の豪華な中に品を漂わせた色彩づくり。夕焼けに走る汽車の背後にさーと広がる見事な夕焼け、どのシーンをとっても息をのむほどに美しいのに、物語はサスペンスフル、かつ二人の女性の友情の心温まる物語です。

脇に登場するジェーソン・ロバーツのあったかそうなキャラクターの存在感も見事。リリアンをサポートして次々と登場する人たちの入れ替わりのおもしろさもすばらしい。

さらに、脚本のすばらしいこと。一人一人の登場人物の関係をさりげないせりふの中に絶妙のタイミングで語らせ、さらに、適当なアクションでそれぞれのシーンを終わらせない練り混みのすばらしさには頭が下がりました。

やはり、これが名作と呼べるものでしょうね。

ジュリアが殺され、生前に頼まれていた娘の姿を探すも見つからず、すべてが無の帰してしまって、ファーストシーンに戻って一人湖でつりをするリリアンのシーンにつなぐエンディングはもうため息がでますね。いい映画でした。見直してよかった。