くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジェーン・エア」

ジェーン・エア

「闇の列車、光の旅」の監督キャリー・ジョージ・フクナガ監督の作品。原作を読んだのが学生時代なので、その物語をほとんど覚えていないが、ご存じシャーロッテ・ブロンテの名作である。こういう文学史上の名作を映画化するにはやはり原作が持つ行間の美しさをいかに映像にするかが最大のポイントだと思います。

非常に静かなタッチで淡々と物語を紡いでいくが、映像表現に変えるに当たって物語の組立を再構築し、フラッシュバックの利用とアップテンポなショットを挿入してストーリーの転換点を巧みに操りながら語っていく演出はなかなかの物である。

前半部分のやや寒々としたイギリスの風景からロチェスター氏によるプロポーズから結婚式までの華やかなシーン、そして発狂した妻の存在を明らかにされ再びつき落とされるジェーン・エアの姿を描写する荒涼とした広大な景色のショットと、一見同じ景色を描きながらも微妙なタッチの変化を加える表現がある意味劇的な様相を作品に与えます。

映画が始まり、何かから逃げるように飛び出す主人公ジェーン・エア。さまよう姿から雨の中助けを求め一軒の家に。そこで世話になるうちに農村の教師の仕事に就く。悲惨な少女時代がフラッシュバックされ、ロチェスター家に家庭教師として赴任。ロチェスター氏に曳かれ、やがて結婚へと進むが、発狂した妻の存在が明らかになる。

その家を飛び出し、ファーストショットに被さり、現代へ。そして再度宣教師の妻としてプロポーズを受けるが、ロチェスター氏を忘れられないジェーン・エアは再び飛び出し、かつての屋敷へ行くとそこは火事で崩れかけていた。

傍らに座るロチェスター氏はすでに目が見えなくなり、その手をそっと握るジェーン・エア。触れた手にロチェスター氏が戻ってきてくれた彼女を感じてエンディング。

何度か映画化されたこの作品は火事で燃え盛る派手なシーンをクライマックスにすることが多かった気がしますが、今回の映画化ではあくまで原作のドラマを丁寧に映像にしていくという手法を徹底しています。その為地味な作品に仕上がりましたが、こういう文学作品の映画化としてはこれくらいの品の良さが一番ベストではないかと思えます。たしかに派手なシーンがないので今時の映画としては退屈だと思われるかもしれませんが、良質の文芸作品としての位置づけは成功だったと思います。