「I’M FLASH!」
豊田利晃監督作品は二本目であるが、今回の映画はちょっとした一本だった気がします。音のセンスといい、細かいせりふの配慮といい、さらに演出の丁寧さといい、非常に細かい点まで行き届いた作品に仕上がっていました。
映画が始まると疾走するスポーツカーに乗った若い男女、一方で単車に乗って夜の町に飛び出していく青年。このスピード感あふれる画面が実に見事で、それにかぶるエンジン音の使い方が実にうまいし音楽のセンスもいい。そして、なるようになる両者の事故シーンだが、このリズム感も抜群で一気に映画に引き込まれる。
物語は若きイケメン教祖ルイをもつ新興宗教を舞台にその教祖を守るべく雇われた三人、そしてこの教祖の存在がどこかシュールな映像のリズムだけで語られていく。
三人のプロが紹介される場面は食事のシーンのみで描写し、教祖であるルイが冒頭で起こした事故のシーンの時間の流れの中でその後のストーリーが描かれていくという不思議な流れでシーンが組み立てられている。
教団を解散すると言ったルイに教団の影の実力者の母がルイを殺すことを命じる。やたら暴言を吐いて偉そうな姉やオカマになって訳の分からない行動をする一方で唯一正気でルイを守る兄など個性的な狂気的な教団の描写もおもしろい。
ルイがとどめを刺されたと同時に事故で昏睡状態だった女性が目を覚まし、なにごともなく映画はエンディングを迎える。なぜか松田龍平の後ろ姿でエンディングというのはちょっとあざといが、なかなかの一品だった気がします。好きなタイプの映像ですね。
「007 ロシアより愛をこめて(危機一髪)」
やはりこの映画は「ロシアより愛をこめて」がいいですね。今までスクリーンで見逃していた007シリーズの傑作でしたが、テレビでは何度も見ていたのです。しかし、テレビでは何度見てもこの作品のおもしろさ、すばらしさがわかりませんでした。
今回、スクリーンの画面で見ると、なんとも見せ場の連続が次々と用意されているし、せりふや仕草の一つ一つが何とも粋だし、このシリーズでついつい陥ってしまう過剰なお色気シーンが程良い加減でとってもロマンティックに処理されているし、そして一番の見せ場のスペクターがはなった殺し屋との格闘シーンも実におもしろい。
つまり、際だって独特の演出などを施したわけではないのですがテレンス・ヤング監督の演出がどれもこれも絶妙の長さのシーンの連続とリズムが整っている。そのために嫌みのないおしゃれで小粋なイアン・フレミングの007の世界が映画としてできあがっているのです。
ボンドがMの事務所からでていくときにターゲットのロシアスパイの女性の写真に「ロシアより愛をこめて」とサインして秘書に渡すシーンの粋なこと。冒頭シーンでスペクターが殺し屋を試すシーンを写してタイトルシーン。女性がダンスする体に写るクレジットの悩ましいこと。まったくこのシリーズの顔と呼んでもいいくらいに娯楽の固まりとしても完成されている。
有名なオリエント急行内でロバート・ショーとの対決シーン、大人のドラマとしての駆け引きのおもしろさとそれに気がつくことになるあたりのジェームズ・ボンドのサスペンス。まぁ一級品の映画というのはやはりスクリーンで見てこそその真価を発揮するのでしょうね。本当におもしろかった。傑作であることを再認識しました。