「砂の器」
30年ぶりだろうか、見直す機会に出くわす。午前10時の映画祭である。
本当に大作の貫禄十分な名作と呼べる一本だと改めて感じいった。初めてみたときは、相当長く感じたが、結婚もし、家族を持って初めて理解し得る感情がこの作品にはあることに気がついた。
なんといってもスタッフ、キャストともにすごい。監督は野村芳太郎、カメラは川又昂、脚本は橋本忍と山田洋次である。主演は丹波哲郎、脇に佐分利信、緒形拳他そうそうたるメンバー。なんといっても、和賀英良扮する加藤剛の存在感も抜群である。
事件が起こり、捜査を始めた今西刑事達のシーンから、次第に一人の人間の生きざまに迫っていく中盤、そして、すべてが明らかになり、人間の感情の複雑な一面から起こった切ない犯罪とその背景を壮大な交響楽に乗せていくクライマックス。
二時間半という長さ故に描きうるあまりにも悲しい物語は圧巻。
見直して、そのすばらしさに改めて気がつく映画こそ、名作たるゆえんかもしれません。
「愛しのゴースト」
タイで「アナと雪の女王」を越えて大ヒットしたというホラーラブストーリーだが、何とも楽しい一本だった。
よけいなセオリーを無視して、遊び放題に楽しませてくれる。一見、ホラーなのだが、至る所にちりばめたコミカルシーンが、不思議なラブストーリーのムードを醸し出していく。そのこだわりのなさがエンドクレジットまで遊んでくれるのでいいのである。
映画は、いかにもなカメラワークで一人の女性がたたずむシーンへ。そして、足から血が流れ、その女性が「マーク助けて」とつぶやいて倒れ込む。タイトル。
画面が変わるとどこかの戦場で、主人公マークと友達が、今にも戦死するかもしれないというようなはなしと、ふざけた会話で戯れている。そして、戦場で、次々と負傷する。
やがて、彼らは故郷へ戻ってくるが、マークの妻ナークの話をすると村人達は逃げてしまう。どうやら、ナークは死んでいて、村に優麗となって住み着き、マークを待っているということらしい。
最初は信じないマークとその友人達だが、次々と不可思議な出来事が起こり、疑心暗鬼から、自分達こそが死んでいるのではとさえ重い始める。
この展開を、時におどろおどろしく、時にバカ騒ぎのようにコミカルな演出で見せていく。ストーリーを追っていくおもしろさより、その場限りで展開するようなエピソードが楽しいのである。
結局、ナークに呪い殺されるのではというような展開で、寺のお堂でマーク達とナークの対決がクライマックスになるが、最後の最後、ナークが、マークを愛していること、マークはナークがたとえ幽霊でも一緒にいたいという会話で大団円。
そのあとのエンドクレジットで、村人達とわきあいあいとするナークの姿をコミカルに描き、何とも陽気なラストシーンで映画は結びを迎える。
有名なタイの怪談話らしいが、この陽気さがお国柄なのかもしれず、とっても好感度抜群の一本だった気がします。楽しかった。