くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ロバート・アルトマン 」「チャルラータ」「ビッグ・シテ

kurawan2015-10-26

ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男」
映画監督のドキュメンタリーなので見に行った。まぁ、普通のドキュメントで、奇才だったロバート・アルトマンの作品を紹介しながら、彼の素顔に迫っていくというストレートな作品である。

特に奇をてらったような演出もせず、真摯に彼に向き合った映画なので、普通に楽しむことができました。

彼の作品は一部しか見ていないので、残念なのですが、こういうドキュメントを見ると、見ていない映画を、ぜひ見て見たいと思います。


「チャルラータ」
なるほど評判通りの傑作である。体調悪くて、前半一部眠気をもようしてしまったが、カメラワークと音、そして登場人物の視線、仕草、何もかもが見事にハーモニーを奏で、素晴らしいな映像作品として結実している。これがサタジット・レイの真価だろう。

映画が始まると、刺繍をしているアップにタイトルがかぶる。主人公チャルラータは愛する夫と何不自由ない生活だが、夫ブパチは仕事一筋で、チャルラータを構わない。リズム感ある音が流れ、双眼鏡を持って窓の外を眺めるチャルラータのシーン、そして、廊下の奥の夫の姿も双眼鏡に捉える。この、今の彼女の心情を描写する映像から素晴らしいのです。

そして、突然嵐がやってきて、風と埃の中飛び込んできたのが夫の従弟アマル。そして物語が動き出す。低い位置からのカメラワークで人物を捉えるアングル、縫うように移動するワーキング。

アマルはブパチが構わないチャルラータの文才を認め、さらに、文学等に興味のあるチャルラータの話し相手になる。やがて、チャルラータはアマルに恋心を持ち始める。しかし、アマルは、仕事を見つけ去っていく。このままいては、ブパチたちに申し訳ないと判断したのだ。そんな折、ブパチの会社の支配人が金を横領して姿を消し、会社は瀕死の状態に。

チャルラータは、アマルに薦められて投稿した雑誌に文章が掲載され、ブパチは妻の才能をようやく認め、夫婦仲睦まじくなるかと思われたが、そこにアマルから、ブパチに手紙が届く。ただ、元気だという内容だけだったが、夫が出かけたと油断したチャルラータは手紙を握りしめ泣き崩れる。ところが、その姿を、たまたま戻ったブパチが見てしまい、すべてを知る。

ブパチの登場を杖をつくトントンという音で表現したり、チャルラータの思いを幻想的な花火の描写で表現したり、様々な映像感性で描く物語は実に見事です。

そして、出かけた夫が帰ってくる。それを迎えるチャルラータ、召使のおじいさん、すべての姿が、ストップしてスチール写真になりエンディング。唸ってしまう傑作とはこういう映画を言うのだろう。素晴らしかった。


「ビッグ・シティ」
まだ、女性が外で働くことに否定的だった時代、しがない銀行員ジブラトを夫に持つ妻のアラチは、家計を助けるため仕事にでく決心をする。こうして物語は幕をあける。

舅はかつて教師をし、それなりにプライドがあり、そのプライドが、保守的な考え方から脱却できない。そんなどこにでもありそうな過程を舞台にしたサタジット・レイ監督作品だが、やはり彼の視点はどこか辛辣。

セールスレディで勤めたアラチは、天性の才能か、どんどん成績を上げる。一方の夫の銀行は経営破綻で倒産、舅は教え子を回って金をせびる毎日。しかし、アラチの上司が、同郷のよしみでジブラトに仕事を紹介すると約束した日、同僚が解雇されたことに腹を立てたアラチは勤め先に辞表を出す。

こうして無収入になっに状態で、夫婦で向こうに歩く二人の姿でエンディング。大きな街だから、どんな仕事もあると楽観的な妻のセリフで幕を閉じるが、夫は失業後仕事が見つかっていないのに、それは無理やろうという思いがよぎる。

どう考えても、厳しい状況になることが予想されるエンディングがかなり辛辣である。

「チャルラータ」のような演出テクニックを見せるわけではなく、真正面から捉える作劇で展開する物語ですが、飽きさせず見せてくる。インドの貧困層と富裕層の格差をまともに捉える画面がかなりストレートで、舅の教え子はそれなりの生活なのに、舅は、古風な考えから抜け出せなかった結果現代の状況になっているという皮肉も垣間見られる。

そう考えると、サタジット・レイはかなり範囲の広い作品を撮ってきたのだと思うのです。