「チャイナ・ゲイト」
わかりやすい展開の戦争アクション映画という感じで、娯楽映画としては普通に面白かった。監督はサミュエル・フラーである。
インドシナの第二次大戦前からの歴史が語られる冒頭部分から映画が始まる。時は1954年、一人の少年が懐に犬を抱いて廃墟を歩いている。そして一軒の壊れかけたバーにやってくる。そこには母親のリーアがいた。
第一次インドシナ紛争の時代である。アメリカ人の傭兵ブロックは、中国国境にある武器基地を爆破する任務につくことになるが、現地の案内役に選ばれたのが、常に国境を行き来しているバーの女性リーアだった。彼女はブロックの元妻で、二人の間に生まれた子供が、中国人風の顔立ちだったためにブロックはリーアを疎んじてしまったのだ。
こうして戦争アクションという感じのストーリー展開で、男たちがリーアの案内でジャングルの奥地に入っていく。いく先々に、共産党軍の基地があり、巧みにすり抜けたりしながら、やがて目的地へ。そこにはリーアに思いを寄せるアメリカ人の傭兵ゴールディがいた。
爆薬を仕掛け、リーアが戻るのを待って、スイッチを入れようとする時になり、リーアはゴールディに見つかる。しかしゴールディを突き落とし、切断された起爆スイッチに手を添えて、自らを犠牲にリーアは爆破する。
無事任務を果たしたブロックはリーアの残した子供をアメリカに連れ帰るべく手続きしてエンディングとなる。
廃墟で下から見上げるカメラアングルや、壊れた建物のカットなど、サミュエル・フラーらしい美しい構図も多々見られる作品で、B級とはいえ、見ごたえのある一本でした。
「素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店」
ブラックな色合いのあるちょっと粋なコメディ、やはりこういう映画はヨーロッパでないと作れないなと思える一本でした。それほどの傑作とまではいかないけれど、最後まで飽きずに見ることができました。監督はマイケ・ファン・ディムです。
一人の男、主人公ヤーコブが指に糸を巻いているアップから映画が始まる。傍に老婆が寝ている。どうやら死期が近づいた彼の母のようで、その直後、彼女は死んでしまう。葬儀の後、ヤーコブは首を吊るために屋敷の森に入れば、人に邪魔をされ、車で自殺しようとすれば、また邪魔が入る。
彼は一人、郊外へ出かけるが、そこで不思議な霊柩車を見つける。そこから降りた車椅子に乗った老人は、崖から突き落としてもらった風である。ヤーコブはそこで、その男が落としたマッチを手にする。そこに書かれていた代理店の住所をたどり、ブリュッセルまで行ってみると、なんと、そこは自殺を助けてくれる仕事をしていた。
早速ヤーコブは契約をするが、棺を選ぶ部屋で一人の女性アンネと知り合う。彼女もまたここの客だという。
こうして物語が始まる。流れとして、父が死んでから感情を持たなくなったヤーコブはこのアンネと知り合ったことで、愛に目覚め、死ぬことをやめるという展開だろうと予想がつく。当然、そういう展開になるが、実はこのアンネはこの代理店の社長の娘で従業員。ヤーコブを殺すために近づいていたのだ。
一方、死を決意したヤーコブは広大な屋敷を売る契約を交わし、48時間内なら破棄できる契約をしている。
しかし、アンネの本当の姿も何もかもが中盤過ぎにヤーコブに知られるし、それより、アンネが代理店の娘だというのもかなり早めに明らかになるのがちょっと早すぎる気がする。それに、ヤーコブの執事長で老人のムラーの存在もやや弱い。
結局、自殺の契約を中止する代わりにヤーコブはアンネと結婚という流れと、代理店の仕事を引き受けることになり、最初の仕事がムラーを死に導くというラストになる。
粋なシーンも多々あるのに、もう一歩、にんまりさせる小粋さが見えなかったのが残念。面白い映画ですが、もう一捻りと、ストーリー構成のバランスを考えれば傑作になったろうにとも思える映画でした。でも良かった。