「空母いぶき」
よくある戦争アクションかと思っていたのですが、意外に深さと重みのあるドラマでした。戦争に対する視線、人々の心の動き、そしてエンタメとしての戦闘シーンがうまい配分で組み合わされているために、本物に見えます。さらに、つまらないテーマ曲などもないのが良い。若干、甘いところもないわけではないですが、ここまで描ければ十分でしょう。監督は若松節朗。
新興国の軍事勢力が日本の離れ島の領土を占拠し、海上保安員を拉致したところから映画が始まる。時に自衛隊に導入されたばかりの小型空母いぶきを中心とする第五艦隊がその救助に向かうが、新興国が迎え撃ってくる。
自衛のための戦闘に固執するが一方で、敵側は執拗に挑発してくる。新たにいぶきの艦長となった秋津と防衛大同期で生え抜きの副官新波が対処していくが、この二人のドラマ部分がもうちょっと突っ込んで描いても良かったかもしれない。
最新鋭の戦闘戦が次々と展開、そのスピード感と緊張感は流石に見応えがあります。たまたま乗ってしまった記者の物語がややおざなりになっていなくもないですが、2時間余りで描くにはこれも限界でしょう。政府の対応場面も程よい長さで見ていられるレベルだし、どんどん戦闘がお拡大していく様をストーリー展開の軸にしたのは成功だと思う。
そして、これ以上無理となったところで、国連軍が登場して大団円。クリスマスイブ前夜からクリスマスまでのタイムリミットの舞台背景も面白い。メッセージも程よく伝え、全体に程よく完成された佳作という感じでした。
「貞子」
まだやるかという、リングシリーズ。流石にビデオテープは過去のものとなり、今時ということでSNSを使ったものになっているとはいえ、全然怖くないし面白くない。第一作はサスペンスの面白さが秀逸であったが、今や完全に過去の遺物。原作者鈴木光司に才能がなかったということか、第一作以外は駄作ばかりだった。監督は中田秀夫。
とある団地で一人の少女がクローゼットに監禁されていて、そこに帰ってきた母親がガソリンを撒いて火事を起こす。ところが、そこになぜか貞子が。
なんとか助かった少女が病院へ入院して、そこに心理カウンセラーの茉優がいて、彼女の弟がユーチューバーになって、火事の団地に侵入して、貞子の呪いを受け行方不明となる。
茉優は弟を助けるために小豆島に出かけ、そこで貞子の洞窟へ行く。まあ、物語はかなり雑で、なんでこういう展開するのかの裏付けのないままに無理やり貞子が出てきて、みんな呪われていく。
あとは呆れるままに映画は終わる。こんなもの作ってたらあかんやろという一本でした。