くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ブラインドスポッティング」「引っ越し大名!」「ガーンジー島の読書会の秘密」

「ブラインドスポッティング」

思いの外いい映画でした。ありきたりの展開を次々と覆していくテンポの良さが作品に深みと厚みとユーモアを生み出していく。それでいて、どこか胸に迫ってくるあったかいものを感じられる作品でした。監督はカルロス・ロペス・エストラーダ

 

一人の男コリンは傷害で逮捕され、刑期を終えて保護観察期間一年を言い渡されるところから映画は始まる。顔のアップ、幼馴染マイルズと悪友たちのパーティにいて、車の中で、マイルズが銃を買ったと言われ、こらえてくれとコリンが叫ぶ。コリンはあと三日で観察期間を終えて晴れて自由になれるのだ。

 

コリンとマイルズは引っ越し会社に勤めていて、この日、コリンは一人、門限の11時に焦ってトラックを走らせていた。信号で止まっているところへ一人の黒人がぶつかってくる。あとを追いかけてきた白人警官が逃げる黒人を撃ち、射殺する。

 

その翌朝、コリンとマイルズはいつものように仕事に出かけるが、昨夜のことが引っかかるコリン。この街では黒人は白人に明らかに見下げられていた。マイルズはキレやすく、一触即発になることが頻繁にあったが、幼馴染のコリンは耐えていた。

 

今回逮捕されるきっかけになったのも、コリンと白人の喧嘩にマイルズが加わりエスカレートしたが、コリンだけが逮捕されたのだ。

 

ある朝、マイルズの娘ショーンがマイルズのピストルを見つけて遊ぶ現場をコリンとマイルズとその妻が目撃してしまい、間一髪でコリンが銃を取り上げ、そのままマイルズと喧嘩してしまう。

 

そしてなんとか三日間が終わり、晴れて自由になった最初の仕事で、マイルズとコリンはその引っ越し先へ行く。ところが、最後の荷物を取りに入ったコリンは、そこでこの家の主人があの時黒人を撃ち殺した警官だと知る。

 

そして地下で一人いるその警官にコリンはマイルズから取り上げていた銃を向ける。慌ててマイルズが駆けつけるが、コリンは、いかに黒人が蔑まれているのかをその警官に銃を向けながら叫んでいた。

 

その警官は、最後に涙を流し、実は殺すつもりではなかったこと、これまで後悔し続けていることを涙ながらに見せる。コリンは銃を下ろしマイルズに返して、二人は次の引っ越し先へ向かうところで映画は終わる。

 

マイルズは終盤まで、キレやすいいけ好かないキャラクターで描かれるが最後の最後にコリンを思う気持ちを見せる脚本がうまい。途中、マイルズの銃を取り上げたコリンにパトカーが近づくが、すぐに走り去る演出も見事。

 

スプリット画面を何度か挿入しながら、一見、おとなしいコリンとキレやすいマイルズのよくある話のようでいて、次々と、常道の展開を覆して二人の友情ででまとめていくくだりが実に心地いい。マイルズの妻や娘の存在もうまく効果を上げているし、最後まで感情を押し殺すコリンの描き方も見事。

いい映画を見たなという感想で締めくくれる映画でした。

 

「引っ越し大名!」

例によって、ウケ狙いだけの薄っぺらい映画かと思ってましたが、そこまで低レベルの作品ではありませんでした。といっても、よくできた映画とは言えませんが、ため息が出るほどな雑なつくりではなかったのは良かった。ただ、ここにもゲイの場面をとってつけたように配置した脚本は最低でした。監督は犬童一心

 

姫路藩に突然の国替えの沙汰が降りる。しかも禄高も減らすということで、もともと金も人もないこの藩では大騒動。国替えの責任者として、うだつの上がらない書庫版の片桐春乃介に白亜の矢が下る。

 

前半は、悪戦苦闘して金を集め、人を減らしの大奮闘をコミカルに描いていくが、剣術の達人の旧友の源右衛門がなんとも弱い。さらに、国替えを利用して出世しようとする藤原修三のくだりが実に適当に描かれているので、全体がノリだけに見えるのは残念。

 

なんとか無事に引っ越しが終わったものの、それから15年が経ち、ようやく禄高も戻り、姫路で百姓で待ってもらっていた家臣を呼び戻すドラマを大団円に映画を締めくくる。

 

ドラマ部分もある程度描いたのはマシだったが、映画全体の構成は全く良くないし、うまく作ればもっとノリのいいドラマになったようにも思えるのは残念。高畑充希も生き生きしてこないし、脇役が光らないのは演出の弱さか。まあこの程度ならまあまあヒットするだろうからよしとしようという映画でした。

 

ガーンジー島の読書会の秘密」

話の論点がずれているようで、本筋が中途半端になってしまって、しかもジュリエットの描き方も中途半端になって、小賢しい尻軽女にしか見えなくなってしまったのが残念。監督はマイク・ニューウェル

 

第二次大戦下のガーンジー島で、内緒で豚肉を食べ食事会をした面々が、帰る途中ドイツ軍に呼び止められ、苦し紛れに読書会の帰りだと言い訳するところから映画が始まる。

 

戦争が終わり、ベストセラー作家のジュリエットは、一通の手紙を受け取る。そこにはガーンジー島で読書会をしているドーシーから一冊の本を送ってほしいが、頼むところが見つからず、たまたま手元の本にあったサインからジュリエットに連絡したのだという。

 

ジュリエットは本を送る一方で、その読書会を記事にすることを思いつき、ガーンジー島へ向かう。ところが着いてみると読書会の主催者のエリザベスという女性はいない上に、なぜかみんな彼女のことを隠したがっている様子であることを知る。

 

ジュリエットはドーシーからの聞き込みを皮切りに、読書会成立の経緯やエリザベスの娘キット、そのほかここでの戦時中の出来事が明るみになっていく。

 

エリザベスは、この地に派遣されたドイツ兵と恋に落ち、キットを産んだことがわかる。さらに、終戦前にドイツ兵に捕まり収容所へ収監されたらしいと知る。

 

ジュリエットは渡航前にプロポーズされたマークの助けを借りてエリザベスの行方を捜してもらう。しかし、ジュリエットはいつの間にかキットを通じてドーシーとの距離を縮めていた。

 

そして、エリザベスは収容所で死んだことを知ることになる。突然、マークはガーンジー島にやってきて、取材も終わったジュリエットを連れ帰る。しかし、ジュリエットの心はすでにマークになかった。

 

やがて婚約は破棄、ジュリエットは落胆に沈む。そんな彼女は、記事にすることを拒否されたガーンジー島の読書会のことを書き始める。しかし出版する気はなく、書き上げたものを読書会に送る。そして自らももう一度ガーンジー島へと向かおうとするが、ドーシーもまたジュリエットへの気持ちが忘れられずロンドンにやってくる。そして二人は港で再会、結婚することを決める。

 

印税でエリザベスの家を買い、ジュリエット、キット、ドーシー三人の幸せなカットで映画は終わる。読書会のドラマとジュリエットのドラマがどっちつかずになってしまい、気持ちがのめり込む方向が見つからないままに物語が展開、結局、ジュリエットの心の変化をつかみきれなくなってしまいました。

悪い映画ではないのですが、思い切った物語構成のし直しをすればいい作品になった気がします。