「ノンストップ」
非常に評判が悪いので迷っていましたが、意外に面白かった。韓国映画の幼稚さが程よい感じで生かされていて楽しいコメディになっていました。これでもかと次々と黒幕やら裏切り者やらが出てくるしつこさがもうちょっと上手く整理できたらもっと面白くなったろうにという出来栄えでした。こういう映画を粗探ししてはいけないし、素直に楽しむ作品だと思うので、十分だったと思います。監督はイ・チョルハ。
何かの任務で北朝鮮の工作員が次々と敵を倒していく場面から映画は始まる。そして一人の女性に逃げるようにという連絡が入り相棒らしい男性を撃って逃げる。そして物語は現代となる。
揚げパンを作る主人公ミヨンは、パソコン修理を仕事にする優しい夫ソクファンと娘と幸せに暮らしている。ソクファンはいつもくじ引き付きの栄養ドリンクを飲むのだが、この日もハズレ。そんなところへ帰ってきたミヨンは、たまたま飲んだ栄養ドリンクでハワイ旅行が当たる。これまで節約生活をし、娘にも贅沢させていなかったミヨンたちは、これを機会に旅行へ旅立つ。
やがて、飛行機はハワイへ飛び立つが、何と中には北朝鮮の秘密工作員が乗っていて、かつて脱北した諜報員、実はミヨンがこの飛行機に乗ったことを掴み、彼女を北朝鮮へ連れ帰る任務を帯びていた。そのリーダーはかつてのミヨンの相棒ヒョンミンだった。今やミヨンは整形して姿がわからない。突然テロリストたちが飛行機をハイジャックしたのに対し敢然と立ち向かっていく。
こうして、機内での予想外のアクションシーンとなる。この導入部はそれなりに面白いし、いかにも無能な客室乗務員なども登場して、まさに韓国映画感満載である。実はミヨンの夫ソクファンも工作員で、情報担当だったこともあり、パソコンを駆使して機内をサーチしていく。
一時は有利に展開したミヨンらだが、捕まってしまう。しかし、ヒョンミンも裏切られ、ミヨンとの疑惑も晴れた二人はヒョンミンと力を合わせテロリストを排除し、全てうまく収まったかと思われたが、乗客で乗っていた一人の男が実は北朝鮮が送り込んだ工作員で、ミヨンを連れて飛行機から脱出しようとする。間一髪、ミヨンの機転でその男は機外へ投げ出され大団円。一時は韓国へ戻る予定だったが機長の判断で予定通りハワイを目指す。実は栄養ドリンクのくじもソクファンの計画だったというオチで終わる。
まあ、あれよあれよと雑多に展開する映画ですが、退屈するような間延びシーンもしつこい稚拙なシーンも最小限で止められていて、乗客の中の女優や姑と同乗の嫁のエピソードなどそれなりに工夫も見られた。諜報員らの背後の政府関係者らしい人々の話は全くわからなかったのは残念。もうちょっと感性のいい監督ならもっと面白くなったかもしれないけれど、これくらいなら十分だと思います。面白かった。
「愛の濃淡」
イライラするほどにめんどくさい大人の恋愛ドラマ。これがこの時代の色なのですが、そこまでめんどくさくても今時の子供じみた恋愛ドラマよりずっと大人びているのだから大したものでもあります。主演の岡田茉莉子は相変わらず見事な存在感ですが、主演というより脇役に見えるストーリー展開は微妙ですね。監督は岩間鶴夫。
洋品店で新しい服を新調した主人公えり美のカットから映画は幕を開ける。店を任されている森子がデザインしたもので、えり美に褒められ有頂天。店員の間ではえり美はどこかのお嬢さんかマダムだろうと噂されている。そんなえり美は街で正彦という男性とぶつかってしまい知り合う。カフェでえり美は自分の商売のマッチを差し出す。それは娼婦ということだった。えり美の誘いを体良く断ったが、正彦の誠実さはえり美の心を掴んでしまう。
正彦は森子の勤める店のオーナー小織の弟で、正彦と森子は恋人同士だった。正彦は森子とデートしている時たまたまえり美が雅彦の会社の取引先の水沢という男性といるところを見かける。水沢には妻子がいるがえり美を娼婦と知らずに付き合っていた。伊豆に行った時、正彦は森子にキスを迫るが森子は頑なに固辞してしまう。
ある夜、正彦が家で寛いでいると突然えり美が訪ねてくる。水沢に住所を聞いたのだという。しかも部屋で飲んでいたえり美は突然倒れてしまう。とってつけたような展開である。慌てる正彦だが、すぐに気がついたえり美は部屋を後にする。この後、えり美と正彦は次第に親しくなっていく。
京都で森子のファッションショーが開催されることになり、森子はそこでショーのスポンサーでもある芦沢夫人の弟滋と知り合う。滋は一見紳士だったがいかにもな遊び人で森子に結婚を申し込む。森子は正彦のことが好きなので何とか断ろうとするが、そこに正彦とえり美のことを疑い始め、苦悩し始める。
えり美は、水沢に別れを言い出し、水沢の申し出で最後の旅行を承諾し伊豆に向かう。えり美はそこでたまたま正彦も伊豆にきているのを知る。一方森子は滋の申し出を断り、正彦を追いかけてくる。そんな頃、えり美は、水沢がえり美との別れに未練がましいことを言い出してきたので困って正彦に電話をする。その場にたまたま森子がいて、森子は正彦の元を離れる。えり美は何とか水沢から逃げて東京に戻り、友人のロロの部屋に転がり混む。
ロロは正彦を訪ね、えり美の苦しみを伝え、会ってやって欲しいと告げる。ちょうどその頃、えり美を見つけた水沢はえり美に迫り、とうとう刺し殺してしまい自らも自殺する。そこへ正彦を連れたロロが帰ってくる。悲嘆に暮れ外に出た正彦の前に森子が現れる。そして二人で歩いていって映画は終わる。あれ?滋はどうした?芦沢夫人はどうした?という感じで、しかも都合よく現れる森子がなんとも言えない存在感で、ではえり美の話はどうなのと思ってしまう展開で終わる。売春禁止法施行直後のメロドラマという色合いが懐かしい一本でした。