くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「鳩の撃退法」

「鳩の撃退法」

原作を知っていたから面白かったのか、映画自体がよく出来ていたのか、その微妙な境目がはっきりしないほど、面白く見れました。キャストが良かったというのもありますが、背後に流れる曲の効果が抜群にうまかった気もします。あの複雑な話を綺麗に整理していたというのも上手い脚本かなという感じです。見方によれば傑作と言えるかもしれません。監督はタカハタ秀太

 

かつて直木賞を取ったこともある小説家の津田は、今やデリヘル嬢の送迎をしている。今日もまりこの送り迎えに向かっていた。彼女には三万円金を貸していた。まりこは客からもらった三万円を津田に返す。津田は本にしおりがわりに金を挟む習慣があった。津田は深夜の喫茶店で沼本というウェイトレスと絡みながら、一人の男性秀吉と知り合う。彼はバーのマスターをしている男で、家には妻と四歳の娘がいたが娘は秀吉の子供ではなかった。津田は持っていたピーターパンの本を貸す約束をする。カットが変わり、津田は行きつけの古本屋へ行き、そこで、本を売りにきた女性とすれ違う。その帰りチンピラに絡まれ殴られる。

 

カットが変わり、秀吉は、出がけに妻奈々美から妊娠を知らされるが、それは自分の子ではないとキッパリ言う。秀吉は子供を作れない体だった。秀吉は従業員の女性から三万円の前借りを頼まれていた。まもなくして、秀吉らの一家三人家族は失踪してしまう。そして、古本屋の主人も突然亡くなり、津田にキャリーバッグが与えられる。津田はそのバッグのダイヤルキーの番号を解き、開いてみると三千万と三万円の現金が入っていた。三万円は本に挟み、床屋のまえだで一万円使うが、まえだの主人はパチンコ好きの姉にその金を貸してやる。ところがそれは偽札だった。デリヘルの社長川島は、裏社会の倉田というのが動いているから、あれ以上金を使うなと忠告する。

 

そんなこんなの流れを、津田担当の編集者鳥飼なほみが聞き取りながら原稿をせかしていく場面が被ってくる。津田は、晴山という男を駅まで送ってほしいと店の女性に頼まれ乗せるが、川島社長からファミレスで待つ吟子という女性を拾ってほしいと同時に頼まれる。津田は晴山を送り届けるが、晴山は待っていたベンツに乗りそこで一人の女奈々美と抱き合っているのを目撃する。帰りに吟子を拾った津田だが、吟子には子供が二人いた。その娘は座席に金を挟んだ津田の本を持って出てしまい、その本を返すために吟子は古本屋の主人に頼みにいく。

 

時間を前後させているが映画では閏年の2月29日を起点にちゃんと整理されて、並行して描かれているので、原作を知っていたとはいえ、よく整理された脚本として展開して行きます。まえだの主人の忠告で、津田は倉田から離れるためにまえだの姉加奈子がやっているバーでバーテンとして働くことにする。

 

倉田は秀吉に、ある物を預かってもらうように依頼していた。それは三万円の偽札だったが、秀吉が妻に妊娠を告げられショックで店に行かず、たまたま女性従業員が金庫から、秀吉が用意してくれた金と勘違いして持ち出したのが偽札の金だった。彼女は晴山に三万円を貸し、春山はその金をデルヘル嬢のまりこに渡し、まりこはその金を津田に返した。そして本に挟んでいた三万円を吟子の娘が本ごと持ち去り、吟子が古本屋の親父にその本を託し、古本屋の親父は急逝して、三千万とともに津田に流れた。津田は、どこまでが偽札かわからず、全てを倉田に渡してしまった。

 

津田が働くバーに、慈善団体の男が来て三千万の寄付の領収書を持ってくる。倉田が三千万だけ寄付したのだ。一方、晴山と奈々美は奈々美の娘を連れて駆け落ちしようとしていて倉田に捕まる。秀吉は倉田とともに、晴山らが痛めつけられている現場にやってくる。子供の頃から施設で育ち家族に飢えている秀吉は、たとえ自分の子でなくても育てたいから奈々美らを助けてほしいと懇願する。そして、その場から車に乗って逃げてしまう。

 

では、津田が持っていたピーターパンの本はどこへ行ったか。津田のいるバーに来た客が津田へ届けものをして去る。それがピーターパンの本だとわかり、後を追う。そして秀吉が倉田の車で去るのを見る。こうして津田の小説は完成、鳥飼に、「鳩の撃退法」と題名を告げて映画は終わる。

 

時間を前後させて展開する原作の面白さを見事に映像化した感じです。背後の曲の選定も面白いし、とにかくテンポが良いです。面白い作品でした。