くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「遺灰は語る」「アシスタント」

「遺灰は語る」

物語があるようなないような、また、風刺なのかコメディなのか、シュールな映像世界なのか、如何とも感想できない映画でした。モノクロームとカラーを交え、第二次大戦の戦禍を描くようで、そうでもない。一人のノーベル賞作家の遺灰を巡ってのコメディでもない。さらにエピローグではこの作家の短編を映像化したものが語られる。不思議な作品でした。監督はパオロ・タヴィアーニ

 

1934年、ルイジ・ピランデッドという作家がノーベル賞を受賞し、その授賞式のニュース映像が流れタイトルへ。何やらベッド脇の薬瓶などをバックにクレジットな映された後、シュールでシンメトリーな一室で、一人の老人の独り言で映画は始まります。どうやら先ほどの作家の晩年の姿らしく、病の床で、間も無く死を迎えるらしい。

 

ドアから子供達が入ってくる。どうやらこの作家の子供らしく、オーバーラップして大人になり、髪の毛が白くなって、時が流れる。作家の遺言で、死後は火葬にして、遺灰は故郷シチリアの岩の中に収めてほしいと語られるが、ムッソリーニは彼の名声を利用するべく遺灰はローマの一角に留め置かれる。間も無く第二次大戦が起こり、戦火の映像が映されて、戦後、シチリアに移すべくやってきたシチリアの役人アグにより、塗り固められたレンガを壊して中の遺灰は取り出される。

 

遺灰は木箱に入れられ、空輸するべく飛行機に積んだのだが、同乗した客たちが死体と一緒に乗るのは不吉だと降りてしまい、さらにアメリカ人機長もエンジンをきってしまう。仕方なく列車で運ぶことにしたが、アグが居眠りして気がつくと、木箱がない。探し当てた木箱はカードをする台に使われていた。やがてシチリアに着いて、正式に葬儀を行うが、インフルエンザの流行で子供の棺しかなく、子供の棺に遺灰は収められる。見物する人たちは小人の葬儀だと笑う。

 

彫刻家が遺灰を埋める岩を選定し始めるが、結局完成したのは15年後だった。壺の遺灰をケースに移そうとするがケースに入り切らない分は、取り扱った男が新聞紙に包み、海へ撒く。そして、エピローグ、ルイジ・ピランデッドの遺作「釘」の短編が始まる。

 

一人の少年が釘で少女を殺したが、それは「定め」だと言い張っている。少年は移民で、この地のレストランに勤めていた。空き地で寝ていると、二人の少女が傍で喧嘩を始める。それを見ていた少年は、地面に落ちていた釘を拾い、一人の少女を殺す。少年は刑務所に入ることになるが、少女の遺体の前で、刑務所を出てきたら、墓に会いに行くと呟く。出所後、少年は少女の墓にやってくる。やがて時が流れ、少年は老人になって、背後に拍手が起こり、物語が終わったのか、ホールの天井が映される。こうして映画は終わっていく。

 

シュールなのか風刺なのか、捉えどころが難しい作品でしたが、時の流れを語ろうとした作品だったにでしょうか。

 

「アシスタント」

小品ですが、ちょっとしたクオリティの映画でした。左右対称のシンメトリーな画面と縦の構図のみで、主人公ジェーンをほとんど画面中央に配置し、他の人物は名前さえも描写せずに、淡々と日常のージェーンの姿を追っていく。しかし、その背後に隠れた不穏な空気感は、当たり前のように流れていく。劇的な展開もなく、この日常の不自然さをあえて表に出さずに、何事もないかのように夜の闇に消えるジェーンのシーンが見事でした。監督はキティ・グリーン。

 

ある会社の前に一台の車が停まる。主人公ジェーンは、大手映画会社?でしょうか、その紹介もない画面の中で、オフィスに入っていく。エレベーターに乗り、自分のデスクについて淡々と仕事をこなしていく。どうやら、奥の部屋の会長と呼ばれる人物のアシスタントチームの一人らしく、彼女以外に若い男性二人が仕事をしている。飲み物を用意したり、コピー作業したり、電話応対をしたり、いわゆる新人の秘書的な感じである。

 

会長と呼ばれている人物の妻からの苦情さえ、ジェーンは受け答えせざるを得なくなり、どうやら会長は女癖が悪いのではという推測が見えてくるがはっきりした描写はない。そもそも、主人公がジェーンという名というのも台詞に出てこない。ある時、地方から会長がスカウトした新人のアシスタントがやってきたので、ジェーンはあるホテルに案内する。そのホテルは会長が段取りしたものらしく、この日、会長は別のクライアントとの約束さえすっぽかしてそのホテルにいるらしいのが役員たちの雑談で推測される。

 

何かおかしいと感じたジェーンは、人事室だろうか、直接相談しにいくが、仕事を失いたくないなら黙っていたほうが良いというようなことを仄めかされ帰ってくる。その途端、会長から電話が入り謝罪文を送れと指示してくる。同僚たちも、ジェーンの謝罪文にさりげなくアドバイスしたりする。

 

しばらくしてその新人アシスタントがやってくるが、特に任される仕事もないままに定時に帰る。ある日、会長室に一人の女性が入っていく。深夜まで残っていたジェーンだが、会長から帰ってもいいと言われ会社を出るが、向かいのカフェに入り、会長室の窓を見上げる。実家から電話があり、調子はどうかと聞かれて順調だと答えるジェーン。店を出て、そのまま夜の闇に消えて映画は終わる。

 

おそらく行われているであろう何かは、画面に一度も映し出されず、ジェーンの視線や仕草、行動でこちらが推測していく展開となる。横長の画面ながらも、ジェーンを中心に配置して左右に空間を作る絵作りがかえって彼女の周りにある何かをこちらに問いかけてくる映像演出はなかなかのものです。少々あざといと言えばそれまでですが、それほど長くない尺で、訴えるべきを映像化した手腕は評価できると思いました。