「ACIDEアシッド」
もっと際物のホラー系映画かと思ったら、至って真面目なサバイバル映画だった。深読みすれば、酸性雨は局地戦争か何かの暗示なのかもしれないし、逃げる人々は難民問題を暗に描写しているのかもしれない。映像は普通だが、逃げ場のない雨という恐怖に襲われる主人公たちの悲劇はかなり緊迫感が漂う演出にされていた。監督はジュスト・フィリッポ。
労働争議の場面だろうか、カリンという女性を救えと言わんばかりの男たちの暴動に、機動隊が突入、キレた一人の男ミシャルは機動隊の一人を殺さんばかりに襲いかかっている場面から映画は幕を開ける。ミシャルはあの時の暴力沙汰で外出制限がかけられているが、恋人で足の何か難病らしいものを抱えるカリンの病室を訪れる。
一方、アフリカ大陸で広まった高濃度の酸性雨は次第に北上しフランス全土へ迫っているというニュースが流れる。すでに日常茶飯事に酸性雨が降る状況らしく、人々はそれなりに逃げたりしている。ミシャルの元妻エリーヌは娘のセルマを寄宿学校へ入れていたが、セルマは事あるごとに問題を起こし、しかも元父ミシャルの事件もあって、肩身の狭い思いをしていた。
この日、セルマは馬術の実習で森へ出かけたが、おりしも酸性雨がフランス北部に迫ってくる。エリーヌはセルマを迎えに行こうとするが車がなく、仕方なくミシャルに連絡してセルマを迎えにいくが、たくさんの車と交通規制でなかなか辿り着けない。セルマが森へ実習に行ったことを知ったミシャルらは車を森に走らせ、なんとかセルマを助け出す。そして、エリーヌの兄の家を目指すが、途中でその兄と連絡か取れなくなる。
ミシャルは恋人のカリンの病院へ向かおうとし、セルマ、エリーヌ、ミシャルは東を目指すが、途中国境の橋でエリーヌは酸性の川に落ちて死んでしまう。ミシャルは泣き叫ぶセルマを連れさらに進むが、途中でミシャルが怪我をして動けなくなる。セルマが助けを求めて、一軒の屋敷に逃げ込むがそこには人工透析をする息子とその母が住んでいた。まもなくして酸性雨が襲い、家は崩壊、ミシャルとセルマはなんとか脱出するが、錯乱したセルマが酸性の沼に逃げ出し、それを救出したミシャルは脚を酸で溶かされてしまう。ミシャルとセルマは病院へ搬送され、ベッドに横たわるミシャルのそばにセルマが寄り添って映画は終わる。
現在の様々な世界情勢を、酸性雨に襲われる人々の姿というストーリーに置き換えた作品という感じの映画で、ストレートな娯楽映画とは一線を画した感のある映画だった。
「大東亜戦争と国際裁判」
小林正樹監督の名作「東京裁判」とは違ってドラマとして再構築した反戦映画ですが、なかなか重厚な演出で見応え十分な映画でした。太平洋戦争の流れを走り抜けた前半もうまいですが、特にクライマックスの裁判シーンは圧巻でした。監督は小森白
日本が太平洋戦争へ向かっていく過程を、走り抜けるようにハイテンポで描いて映画は幕を開ける。やがて真珠湾攻撃、ミッドウェイ海戦から、敗戦へ向かう流れ、そしてポツダム宣言受諾までを駆け抜けた後、物語は東京裁判のシーンとなる。そして丁々発止の日本弁護団と連合国側のやり取りの末、東條英機らが死刑を宣告されて、絞首台に向かったあと、その後の繁栄を映し出して映画は終わる。
何度も描かれてきた物語ですが、流石に戦後十数年という時期の作品の迫力はやはり見事なリアリティを生み出しています。決して傑作などではないかもしれませんが、見てよかったと思える一本でした。
「女巌窟王」
アレクサンドル・デュマの「巌窟王」を翻案した作品ながら、なんともお手軽に作った感満載の映画だった。執拗に出てくるお色気シーンと、とってつけたようなアクションシーンにお決まりのキャストが揃うという安直な作りの一本でした。監督は小野田嘉幹
九州のとある街のブルームーンというキャバレー、そこのダンサールミと妹エミのステージから映画は幕を開ける。ここのオーナー岩原は、キャバレー以外に麻薬の密売もしていて、その運び屋にルミたちの兄を使っていた。しかし、麻薬と知らず運んでいた兄が別の組織に荷物を奪われ、その責任で拉致されてしまう。ルミらが兄を助け出すも、岩原の手下に殺され、ルミたちも拉致される。
岩原は麻薬を取り戻すべく、奪った組織の取引現場を襲って麻薬を奪い返し、ルミたちを銃で追いかけ回す。ところがルミたちは逃げる途中で洞窟を見つけて駆け込む。その直後、洞窟は落盤し、ルミたちは死んだと思われ岩原らは引き返す。ルミとエミは洞窟を彷徨ううちに宝の箱を発見、さらに絶壁の出口を見つける。
洞窟を脱出したルミたちはヨットで通りかかった英次に助けられる。ルミらは二階堂と名前を変え、見つけた宝を使って岩原に復讐を開始する。そんなこととは知らず、岩原は自身のキャバレーが嫌がらせを受けたりし始め、不審に思い始めたが、二階堂という女が近づいてきて、取引を始めるようになる。しかし、二階堂との取引は次々と失敗し、二階堂という女と洋子という女に不信を抱く。岩原の手下の矢島は二階堂に酒を飲まされた挙句車で事故を起こし死んでしまい、岩原の右腕の手下も二階堂を追っていて遊園地で事故死してしまう。
身の危険を感じた岩原は逃げようとするが、英次がやって来て二階堂の経営のキャバレーに連れて行かれる。そこで、ルミとエミのダンスが披露され、二階堂がルミだと判明、身悶えする岩原に英次が通報した刑事がやって来て岩原は逮捕される。エミと英次は恋仲になっていて、ヨットで新婚旅行となり、二人を見送るルミのシーンで映画は終わる。
とにかく、なんとも、安っぽい映画だった。