くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「彼女が消えた浜辺」

彼女が消えた浜辺

ベルリン映画祭で監督賞を受賞した話題のイラン映画。エリという一人の女性が姿を消したことから巻き起こる心理サスペンスを淡々と描いていく。

手持ちカメラを中心にしたカメラ演出と、次々と登場人物たちが繰り返す会話のうねりの中で進んでいく物語、抑揚のない映像リズム、一つ、また一つと隠された真実が表になるとともにわきおこる夫婦の確執や友人同士の諍い、心の葛藤は正直、ある意味、退屈という言葉さえも当てはまるほどしんどかった。

小さく光る横長の隙間のような映像をバックにイラン文字のタイトルが続く。そしてオープニングが終わるとその光の隙間はトンネルの出口であることが明らかになり、カメラが引くと、これからヴァカンスに向かおうと車を連ねて走る男女の姿がとらえられる。セビデー夫婦とその友人たち、そして誘われたエリというセビデーの保育所での同僚、彼女を紹介しようとする相手アーマードたちが乗っている。

ところが、予定していた宿は三泊の予定が一泊しか開いておらず、仕方なく海辺の空き家のような別荘で過ごすことになる。一泊しかとれないことを予約したセビデーは知っていたというあたりの伏線から、この物語のキーパーソンがこの女であることがわかる。しかも、海辺の別荘で過ごすものの、エリは翌朝には帰らなければならず、そこでも強引に、というより嫌みなくらい強制的に引き留めるセビデーの姿に、正直不快感爆発寸前でした。

そして、事故が起こる。息子がおぼれ、間一髪で助けたものの、今度はエリがいない。どうやらおぼれたらしいということで警察沙汰に。
この事件の後、少しづつ彼女のことが表になり始める。実は婚約者がいて、彼と別れたがっていた。それを知ったセビデーがエリをアーマードに紹介するつもりで誘ったこと。そしてそこへ婚約者からの連絡が入り、一気にこれまでの謎が坂道を降りるように明らかになっていく。そして物語は終盤へ。

子供が海におぼれるシーンへ入る直前の凧が飛ぶショットなどはなかなか秀逸なワンカットである。

結局、二日後にエリの溺死体が発見され、それを婚約者が見聞して映画は暗転、エンディングとなる。
果たして本当にエリはおぼれたのかは結局不明であるが、めくるめく登場人物たちの舞台劇のような会話の応酬はこの作品の見所なのかもしれない。終始音楽が挿入されず、エンディングショットで初めて流れるエリへの曲と呼ばれるテーマが見事な効果を呼んでいる。

と、全体に決して凡作ではないのですが、個人的にしんどくて、困りました。好みではないといえばそれまでですが、そういう感想です。