くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「道」

道

いわずとしれたフェリーニの傑作。30年ぶりスクリーンで見直しました。そして、改めてそのすばらしさに感嘆してしまいました。

全編に漂うフェリーニらしいムード、すべての物語がサーカスの舞台のごとく、そしてひとときの夢のごとく語られていく独特の映像世界はフェリーニ作品としては一番分かりやすいこの映画でも徹底的に表現されています。

映画が始まると、完全に画面に釘付けになってラストシーン、浜辺で泣き崩れるザンパノ(アンソニー・クイン)のシーンに続くFINの文字まで片時も目を離せません。そして、改めてジェルソミーナを演じたジュリエッタ・マシーナの演技、存在感脱帽してしまいました。

ザンパノに買われて、うれしいような悲しいような表情でトラックに乗り込む彼女、そして、ザンパノに芸の時に着る帽子やことをもらって、くりくりとした目で半ば子供のように、半ば照れながら心が躍る様子を表現する彼女の表情、そして、ザンパノと初夜を迎えるときの戸惑いのある乙女の姿、などどれをとっても胸に響いてくる迫力があります。

奇人を誤って殺してしまったザンパノを見て精神に異常をきたしていく彼女の眉毛の上にはピエロのようなハの字の化粧が施されている。

夜の町で羨望のまなざしで綱渡りをする奇人の芸を見上げるときの子供のような彼女の視線、木枯らしが吹く夜の町にやってくるザンパノのバイクの姿、そして結局乗り込むことになるジェルソミーナのもの悲しいけれどどこかうれしそうな態度。

一つ一つのエピソードがまるでサーカスの出し物のごとく、そしてそこに描かれる粗野で不器用な一人の男ザンパノの何ともいえない愛情表現と悲哀、そんな男になぜか次第に惹かれてしまうジェルソミーナ。
「最初は嫌いだったけど、今なら結婚してもいい」と告白するジェルソミーナのせりふが実に純粋ですばらしいですね。

どこをとっても隙のない、それでいてしっかりと心に訴えかけ感動させてくれる映画、これが語り継がれる名作なのだろうと思います。