くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「月の輝く夜に」

月の輝く夜に

午前10時の映画祭選定作品というだけの興味で見に行った作品なのですが、非常によかったです。
コミカルに、軽快に展開するおしゃれなラブコメディの傑作でした。

フェリーニ作品を思わすようにミラノオペラの車がニューヨークにやってくる。背後にイタリア調の音楽が流れ、夜空にはファンタジックな月がドンと映し出される。
まるで、その月が様々な男と女の物語を生み出していくかのようです。

主人公は一度結婚したが夫に死に別れた一人のやや中年前の女性ロレッタ。今にも中年の恋人ジョニーからプロポーズされようとしている。そして、レストランでプロポーズされた彼女は式の段取りをジョニーに尋ねるが、ジョニーは危篤の母のところへ行かなければいけないと空港へ。どこかマザコンのジョニーが何とも存在感がある。

そして、頼みごととして弟のロニー(ニコラス・ケイジ)を結婚式に招待してほしいとロレッタに頼む。ジョニーとロニーは仲違いをしているのである。
ロレッタがロニーの元を訪ね、さんざん言い合った後愛し合ってしまう。まさに満月が呼び込んだ不思議な愛の物語が始まる。

せりふの数々がテンポよく掛け合って物語がスキップするように進んでいく映像展開はすばらしい。それにさりげなく壁に掛けた絵画などに趣味のよい設定がこれまたみごと。巨匠ノーマン・ジュイソン監督のこだわりと演出の力量が見事に発揮されています。

ロレッタの父コスモの浮気やふと心が揺らぐ母ローズの浮気心など微妙な女心もさりげなくそしてコミカルに描かれ、満月と夜景が不思議な媚薬となって映画を盛り上げていく。さらに背後に流れるイタリアン曲の歌声が実に映像にマッチングして、心地よいのです。

果たしてこの家族はイタリア移民なのでしょうか?英語だけでなくフランス語やそのほかも聞こえた気がしますが、さすがに聞き分けられないので何ともいえません。

結局、ロレッタは婚約者ジョニーのことがあるのでロニーと分かれることにするが、ロニーは最後にオペラにつきあってほしいという。ロレッタは髪を染めめいっぱいのおしゃれなドレスと装いで出かける。一方のロニーもシャツ一枚の無骨な姿から一変してタキシードの紳士に変身して彼女を迎える。

ところがそのオペラ会場にはロレッタの父コズモが愛人と来ていた。さらに、ひとりぼっちのロレッタの母ローズが行きずりの男性(冒頭でレストランで水をかけられる男)とつかの間のアバンチュールを楽しみ、祖父に目撃される。

どうなることかと半ばハラハラとニンマリの中、すべてが終わり、自宅に帰るロレッタ。ジョニーもすっかり母が回復したので戻ってくる。ロレッタの家にロニーもやってくる。全員が一同に集まり、ロニーがロレッタにプロポーズ、ジョニーは婚約は解消したいといい、ロレッタの父も浮気を認めて謝罪。なにもかもがうまく収まって、カメラはゆっくりとその部屋を離れていってエンディング。すばらしいラストシーンでした。

好みのジャンルではありませんが、映画のリズムにすっかり乗せられてしまう一品でした、みてよかったです。