「サルベージ・マイス」
広島ホームテレビが製作した低予算ローカル映画であるが、大好きな(最近多い)谷村美月主演のアクション映画ということで見に行きました。
ローカル映画だから期待をするのが間違いというもので、実際、ストーリーの展開といい、「仮面ライダー」レベルのアクションといい、谷村美月以外の俳優たちの演技といい本当に大したことのない映画です。
博物館などに無理矢理寄贈されたりした宝物を本来の持ち主に帰してやるというサルベージ・マイスといういわゆる義族たち。この日もある博物館から一体の仏像を盗むべく進入するが、途中で乱入した別の強盗団に邪魔されたあげく、真唯(谷村美月)の相棒には裏切られてしまう。
「キック・アス」のヒットガールのような出で立ちの真唯がなかなかかっこいい。
それでも目的を果たした真唯だが、相棒は別の窃盗団に寝返って、怪盗マイスなるぬれぎぬを着せられ、自分は一人になる。
ここ広島に少年たちが自警団を作り町をきれいにしている。そのリーダーは空手が得意な美緒(長野じゅりあ)。
たまたまその活躍をみた真唯は彼女たちに接近、自分のぬれぎぬをはらすために利用しようとする。
空手少女で売り出し中の長野じゅりあの宣伝も含んでいるかのような映像と寂れた広島空港のシーンなどかなりあざといショットがふんだんに取り入れられた広島映画というイメージ炸裂。
こうして、真唯と美緒の友情の物語と本物の窃盗団との戦いのお話が非常にありきたりの展開で進んでいく。低予算映画なので、これといった映像のテクニックもなく、まさに「仮面ライダー」レベルのストーリー展開とアクションで分かりやすいお話が進む。
そして、当然、すべてのぬれぎぬがはれた真唯は今度は美緒とコンビを組んであたらしいサルベージ・マイスを作ってエンディング。エンドタイトルにネットアイドル「ももいろクローバーZ」のハイテンションな曲が流れて終わり。
まぁ、爽快感もないし、おもしろかったぁという感動もない。ひたすら谷村美月をみていただけの映画でした。
それにしても、観客が私を含めた中年のおっさんばっかりってどうよ・・・・笑
「青い塩」
大阪アジアン映画祭上映された作品で、「イルマーレ」のイ・ヒョンスン監督作品である。ソン・ガンホが結構好きなので見に行った次第です。
とにかく、夜景のショットが実に美しい。港に光るライトの遠景を水辺に映しながら物語が進行する様は絶品。さらにセビンがドゥホンを向かいのビルからねらうシーンで、あわや引き金を引く瞬間に花火があがって、その音が響き、ウィンドウに花火が映し出され、ドゥホンがセビンに電話をする。ロマンチックすぎる演出に胸が熱くなってしまう。
韓国映画というのは時に幼稚な場面や展開が多かったが、これはなかなかの韓国フィルムノワールの秀作でした。
映画が始まるとセビンのアップ、代わってドゥホンのアップ。ドゥホンが撃たれ倒れる。
画面が代わりマンギル組の会長が何者かに自動車事故で襲われ瀕死の状態で入院している。この会長がかつてのやくざ組織にいたドゥホンを跡継ぎにするべくドゥホンを呼べとつぶやくシーンへ。
ドゥホンというのはかつて伝説のやくざと呼ばれた、やくざ組織のボスでもあったが、今は引退してプサンで第二の人生を目指している。彼が第二の人生としてレストラン経営をするべく料理教室でつたないてつきで料理勉強をしているシーンに変わる。隣にいるのはセビンで、実はドゥホンを見張るために派遣された殺し屋組織のスナイパーである。しかしこのセビン役のシン・セギョンという女優さんが抜群にキュートでかわいいから、すっかり引き込まれてしまいました。
やがてマンギル組の会長が死亡、組織の中で金の洗浄をしたり麻薬の密売を行っていたヤクザ同士の抗争とヤクザ組織に目を付ける政府からの目を逸らすためにドゥホンにぬれぎぬを着せるべくドゥホン殺害の指令が降りている。
セビンはドゥホンを監視するうちに、その純粋すぎる人柄に次第に引かれていく。ソン・ガンホという俳優さんは韓国スター的な目のさめるような二枚目ではないが実に演技がうまい。今回もものすごい二枚目でかっこよく見えてくるからもうびっくりである。
なかなか殺せないセビンに業を煮やした組織はその友人のウンジョンにドゥホンをねらわせる。実はセビンとウンジョンには7000万ウォンの借金があるのでその返済を交換条件にしたのです。
バイクでドゥホンに迫るセビン、そこへくるまでウンジョンの車でドゥホンに迫り跳ね飛ばす。しかし、すんでのところで身をかわしたドゥホンが車の窓を割りそこの女性がいたためひるんでしまう。
ドウホン殺害に失敗したウンジョンはその後行方不明になる。
命を狙われたドゥホンがウンジョンを殺したと思ったセビンはドゥホン暗殺を引き受けるが自分の想いとの葛藤でなかなか実行できない。このあたりのもどかしい展開が実に切なくなってきます。
シン・セギョンがとにかくかわいらしくて、ソン・ガンホとのラブストーリーが本当にほほえましいほどに純粋で、次第に心が揺れてくるセビンの姿が本当にロマンティックなのです。
一方で、セビンがドゥホンを暗殺するのを監視するために殺し屋組織が別のスナイパーKを送ってきてドゥホンをねらってくる。ウンジョンを殺したのはドゥホンではないと知ったセビンはドゥホンを守ろうとする。こうして三者の展開がスリリングに物語をどんどん進めていく。
このままではドゥホンを殺さなければ自分が殺されるし、ウンジョンの行方も探したい自分は死ぬわけにも行かない。
一方ドゥホンはセビンの正体も知り、行方不明のウンジョンの居場所を弟分のエックに突き止めてもらい、そこへ向かうが、そこでは殺し屋Kが待ち受けている。
どうしようもないと悟ったセビンは自分の作った塩の弾丸でドゥホンを撃ち、ドゥホンは塩田に倒れ込むというファーストシーンに続く。
こうして殺し屋から逃れたドゥホンはかつての夢である海際のレストランを開業、セビンとウンジョン、ドゥホンのエックと楽しくやっている姿でエンディングである。
スナイパーからセビンとドゥホンがカーチェイスによって逃亡していくスリリングなシーンも独特のカットで見せてくれるし、細かい編集とクローズアップを多用した画面づくりにサスペンスタッチのストーリー展開が本当にスピーディで、一方でライティングを駆使した美しい夜景のシーンが実に深みのある映像になって作品を膨らませてくれます。
だれるシーンの全くないストーリー展開と散りばめられた韓国映画独特のユーモアで本当にうっとりと楽しめる秀作でした。おもしろかった。
「トロール・ハンター」
ノルウェー映画で、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」ヤ「クローバー・フィールド」のようないわゆる似非ドキュメンタリー映画であるが、非常に話題にもなっていたので、見に行きました。
ノルウェーの森の奥にトロールという「ネバー・エンディング・ストーリー」などでもおなじみの伝説の巨人が住んでいて、木々を倒したり家畜をおそったりしている。政府はTSTという特殊機関によって隠蔽している。そのトロールの狩りをする人物ハンスを追っていく大学の映像製作チームがとらえた映像を公開するという話である。
冒頭の二作品とは違って、トロールがもろに画面に登場するという代物で、どう考えても特撮だから、この作品をB級映画ととらえてみると実におもしろい出来映えになっています。
木々を倒しながらおそってくるトロールや、ハンスを手ではり倒したり、雪原の彼方から60メートルもある巨人が向かってくる様は単純に怪獣映画である。
首が三つあり、紫外線を当てられると石になって固まったり、爆発したりする。キリスト教徒を目の敵にしていて、キリスト教徒であることを隠していてもトロールにはわかるというあたり、ちょっと笑ってしまうのですが、それをいとも本物のドキュメンタリーの衝撃映像のようにまじめに映される。そののりが何とも楽しい。
結局、政府機関によってこの学生たちは行方不明になり、フィルムはなぜかテレビ局へ届きそれを編集して公開しているという設定である。
ただ、エンドクレジットにはちゃんとスタッフの中にSFX担当とでているし、エンドタイトルの後にトロールがワンカットでてくるというお遊びシーン、さらに「この作品の中でトロールに虐待行為はありません」というロゴなど微に入り細に入り徹底的にこだわった映画作りが本当にほほえましいほどにばかばかしいのです。
まぁ、TOHOシネマフリーチケットがなかったら入っていないかもしれない一本ですが、結構楽しんでしまいました。