くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「犬部!」

犬部!

重くもなく軽くもなく程よい感じでメッセージを伝える一方で心地よく感動される良質の一本。良い役者とそれなりの監督が作るとこうなるという典型的な秀作でした。メッセージを押し付けてこない展開、過去と現在を巧みに組み合わせたストーリーと、未来の希望を感じさせるエンディングがとっても良かった。掘り出し物でした。監督は篠原哲雄

 

獣医学部の学生花井は、自分の下宿アパートに見捨てられた犬や猫を飼って世話をしていた。同じアパートに住むよしみはそんな彼の部屋に新しく生まれた仔犬を見にやってくるところから映画は始まる。友人の柴崎にレポートの資料を借りに出た花井は道端で一匹の見窄らしい犬を見つけて連れ帰る。後日、この犬は恩師安室教授のところの実験犬だと判明、乗り気はしないものの柴崎に諭されその犬を手放す。ところが、数日してその犬は花井のところに帰ってくる。連れ戻しにきた安室教授らの前でためらう花井の姿を見た教授は特例として花井にその犬を託す。

 

時は少し遡り、花井は動物愛護センターに見学に行き、殺処分される動物を目の当たりにして、一匹の犬を引き取り花子と名付ける。その時同じく一匹の犬を引き取ったのが柴崎で、柴崎が引き取った犬は太郎と名付ける。柴崎も花井と同じく、動物の殺処分に反対し、動物実験にも反対していたこともあり、気のあった二人はこれをきっかけに友人となる。当時、外科実習が必修であったが花井は拒否し、獣医師のところを回ってレポートを書き安室教授に合格させてもらったりする。花井たちは「犬部」というのを作り、身寄りのなくなった動物の引き取り手を探す活動を始める。

 

東京で獣医師になった花井の元に川瀬美香という女性が訪ねてくる。知り合いの動物ショップの動物を引き取って欲しいということで花井が行ってみると、放置に近い形で飼われている動物たちを目撃、一旦全部引き取るが、後日、そのショップのオーナー久米から被害届を出されて花井は逮捕されてしまう。久米は一旦は手放したものの、妻が可愛がっていた犬もいたので再度取り戻したかったのだという。熱心な花井の活動で、再度久米は、動物保護施設へ引き渡すことを決意。花井はかつての友人を誘って全ての動物を避妊処理をする。それがネットで話題になる。

 

花井はもう一度、犬部を作ろうと決意し、かつてのメンバーに声をかけるが、今ではそれぞれに人生があった。しかも柴崎は卒業後動物愛護センターへ就職し、殺処分ゼロを目指していたが、結局心が折れて退職したままだった。花井は柴崎の実家を訪ね伝言を残し、後日再訪し柴崎と再会する。やがて、花井が計画した久米のショップの動物の引き渡し会が開催される。実は川瀬美香は、花井が学生時代にやった引き渡し会で柴崎に勧められて犬を飼った少女だったことがわかる。そして柴崎も手伝いに来る。

 

イベントが終わり、柴崎はもう一度愛護センターに戻ってやり直すと言って帰っていく。それぞれがそれぞれに思う道を進んでいく。花井が歩いてくるカットで映画は終わっていきます。

 

動物愛護のメッセージを強く出してくるわけでもなく、程よい感じで感動の物語を入れながらそこに埋め込んでいく脚本が上手い。決して大傑作とまでは行かないまでも、丁寧に作られた良質の映画だったと思います。