くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「オークション〜盗まれたエゴン・シーレ〜」「アーサーズ・ウィスキー」

「オークション〜盗まれたエゴン・シーレ〜」

実話を元にしているので物語の流れはなかなか面白いのですが、登場人物などの描写の創作部分が十分に描ききれておらず、ややチグハグな物足りない印象が垣間見られて、エゴン・シーレの絵画の神秘性とかオークションの駆け引きのサスペンスとかが見えてこない上に、ラストをヒューマンドラマ的に終わらせたのでそれもまた思うように締めくくれなかった印象を持ちました。駄作とは言いませんが、こういう話もあったという作品でした。監督はパスカル・ボニゼール

 

競売人のアンドレが研修生のオロールと、ある家を訪ねて、オークション出品依頼の絵を鑑定している場面から映画は幕を開ける。アンドレは高級車に乗りオロールと事務所へ向かうが、終始横柄な態度でオロールの気分は最低である。事務所に戻ったアンドレにエゲルマンという弁護士からエゴン・シーレの絵画の鑑定の依頼の手紙が届く。最初から贋作だとたかを括ったアンドレは実物を見てくるように依頼し、ポイントを教える。

 

後日エゲルマンは絵画の現物を見ながらアンドレに電話していきたが、その内容からアンドレは何かを感じ取る。早速元妻で絵画の専門家であるベルディナと現地に向かう。絵画を所有しているのは夜間労働者のマルタンという若者だった。現在の家を譲り受ける際に前所有者から絵ごと貰ったのだという。アンドレとベルディナは、一眼見て、行方不明になっているエゴン・シーレのひまわりだとわかる。どうやら戦時中にナチスによってユダヤ人一族から略奪した一作で、ナチスは古典絵画以外は価値を認めなかったために手放されたものだった。

 

アンドレは本来の所有者であるアメリカのワルベルグ氏に連絡をし、その弁護士であるロシュブールを通じて取引が始まる。アンドレは最初から二千万ユーロ以上の価値を見出すことに自信があったため、まず絵画の存在を世間に知らしめるためのレセプションを行う。ところがそれを見に来た絵画鑑定の重鎮サムソンは、この品物は傷みすぎているとこき下ろす。

 

後日ワルベルグから、オークションではなく八百万ユーロで売却する方が賢明らしいと言われたことがアンドレの元に届く。しかし、オロールはこのカラクリをアンドレに話す。最初はオロールの提案を信じなかったが、気を取り直したアンドレは再度ワルベルグ氏に確認、価格の提案はロシュブールとサムソンからだと知る。

 

彼らが暴利を得るために手を組んだらしいと知ったアンドレはワインベルグ氏を説き伏せてオークションを開催、見事二千五百万ユーロで落札される。しかし、マルタンは複雑な思いだった。盗品である上に、汚れた過去を持った絵という印象が拭えなかった。しかし。落札後、ワルベルグ氏は一族の食事にマルタンを招待し、一族全員から感謝の気持ちを伝える。マルタンは、取引で得た二百万ユーロの件は友人に話さず、いつも通り夜間工場の仕事を続けているとアンドレに知らせる。アンドレはオロールと組んで絵画取引の仕事をするため独立する。こうして映画は終わっていく。

 

全体に描き足りない感じで、もっと掘り下げて描写していけば面白くなったところも多々あり、マルタンとその周辺の友人や母親の存在やオロールの父親との確執の問題、アンドレとベルディナとの関係、ワルベルグ一族の悲劇の過去など、掘り下げて深みを出す方法は至る所にあるのにあっさり流したのが実にもったいない。結局、事実を語るのみの映画に終わった一本でした。

 

 

「アーサーズ・ウィスキー」

面白い話なのですが、オープニングと中盤、終盤と色合いがバラバラで、どう楽しむものかわからない映画だった。B級ホラーのような稲妻の出だしからファンタジーな色合いへ、そして次第に人生の生き方を問いかけてくるヒューマンドラマで締めくくってしまう。なんとも掴みづらい映画だった。監督はスティーブン・クックソン。

 

稲妻が鳴り響く夜、小さな小屋で、一人の男アーサーが何やら成功したと叫び、鏡に映った自身の顔を見て外に飛び出した途端雷に打たれてその場で倒れると、みるみる老人に変わって映画は幕を開ける。発明好きな夫アーサーを亡くしたジョーンは、親友のリンダ、スーザンと夫の遺品の整理に小屋を片付けていた。そしてどうやらウイスキーを作っていたらしいと見つけて、三人でそのウイスキーを飲んで朝を迎える。ところが、三人が目覚めると二十歳代に若返っていた。

 

嬉々とした三人だが、どうやら六時間ぐらいで効果がなくなることを知る。そこで三人はその六時間を楽しもうと、ウイスキーを飲んではクラブで踊ったり、男漁りをし始める。そして三人それぞれの若き日の思い出を回想する。ジョーンは実はバイセクシャルで、若き日、シャーウッドの森で会ったカレンのことが今も気になっていた。リンダは自分を捨てた夫のその後が気になっていた。スーザンはこの年まで独身だったが、キッチンカーの男性にいつのまにか恋を覚えていた。

 

ウイスキーが残り少なくなった三人は、ラスベガスへ行って遊ぼうと計画して、ウィスキー持参でベガスに乗り込む。実はリンダはその前に癌が再発したことが判明していた。ベガスで散々に遊んだ後、スーザンとジョーンがリンダの部屋に行くとリンダはベッドで亡くなっていた。ジョーンたちは自宅に戻り、スーザンは元の姿でキッチンカーの男性に会いにいき、ジョーンの息子ロバートは母の思い出のカレンの居場所を調べて教える。ジョーンはカレンに会いにいき、ウイスキーであの日の姿に戻って語った後、元の姿になって別れていく。

 

この日、ジョーンとスーザンはスカイダイビングをする場所に来ていた。二人が大空から舞い降りる姿をキッチンカーの男性やロバートが微笑ましく眺めて映画は終わる。

 

全体に一貫性のない作品ですが、退屈するということはなかった。もっと深い話にできなくもないと思いましたが敢えてあっさり仕上げたのかもしれません。そういう映画でした。