くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

映画感想「風前の灯」「トガニ 幼き瞳の告発」

「風前の灯火」 木下恵介監督作品の中で裏の傑作といわれている作品だが、なんとも珍品であった。三人の泥棒が一軒の家に目星をつけて今にも押し入ろうとしている。ところがこの家、次々と人の出入りが多くて入れない。そんな外の状況とこの家の中の嫁と舅の…

映画感想「二人で歩いた幾春秋」「アナザー Another」

「二人で歩いた幾春秋」 木下恵介監督作品の中では決して傑作の部類には入らないが、見終わって涙が止まらない。まったくこの手の感動ドラマを作らせると実にうまいなと思ってしまう。物語は戦後すぐに始まる。復員してきた主人公野中は山梨で道路工夫として…

映画感想放課後ミッドナイターズ」「あの日 あの時 愛の記憶」「テ

「放課後ミッドナイターズ」 いわゆるナンセンスアニメのジャンルには入る物語。竹清仁が描くCGアニメだが、とにかく宣伝フィルムを見ていたときからおもしろそうで楽しみにしていた作品である。三人組の幼稚園児マコ、ミーコ、ムツコのキャラクターもとっ…

映画感想「香華」「プロメテウス」

「香華」 有吉佐和子原作の作品であるが、さすがにここまで完成度が高いと言葉がでない。七色に変化するようなカメラアングルのすばらしさも冒頭の葬儀の場面から引き込まれてしまう。同じ有吉佐和子原作の映画では「紀ノ川」が自分のベストテンにはいるが、…

映画感想「海の花火」「春の夢」

「海の花火」 この作品、びっくりするほどにカメラが美しい。構図の点、ワーキングの点で目を見張るものがある。しかも人々のクローズアップとドキッとするような遠景が織り交ぜられたリズムは全くすばらしい。ので、これは紛れもなく傑作かと身を乗り出すの…

映画感想「かぞくのくに」「愛の残像」「灼熱の肌」

「かぞくのくに」 25年ぶりに北朝鮮から病気治療のために帰国したソンホ。その彼が日本での家族とのひとときの交流を北朝鮮と日本の政治問題にはほとんど触れず描くいわゆる家族ドラマである。もちろん、その背景には未だ謎に包まれる北朝鮮の政治情勢や理…

映画感想「歌え若人達」「日本の悲劇」

「歌え若人達」 高度経済待っただなか、日本の大学生の青春群像劇で、これという派手な内容もメッセージもそれほど見えてこないきらびやかなオールスター映画でした。脚本が山田太一と木下作品としてはちょっと異色ですが基本的な演出に変わりはなく、四人の…

映画感想「今年の恋」「スリランカの愛と別れ」「ぼくたちのムッシュ

「今年の恋」 とにかく楽しい。こんなテンポのいい映画はそうざらにあるものではないですね。上級生に絡まれる青年たちのファーストショットから除夜の鐘を突くラストシーンまで間段無く繰り返されるしゃれたせりふの応酬と軽快な映像と音楽。これがモダンコ…

映画感想「今日もまたかくありなん」「新釈四谷怪談」「なつかしき笛

「今日もまたかくてありなん」 高度経済成長まっただ中のあるサラリーマン夫婦。一夏を自宅を上司に貸すことになり、妻は軽井沢の里へ帰る。そこで繰り広げられるなんとも奇妙なエピソードの数々なのだが、いったいなにをどう描いていくのかが突拍子もないく…

映画感想「喜びも悲しみも幾歳月」「新・喜びも悲しみも幾歳月」「風

「喜びも悲しみも幾年月」 かなり以前に見た作品だが、この年になって本当のこの映画の価値がわかるものかと再見。この作品、前半の第一部よりも後半の第二部の方がカメラショットといいドラマ性といいしっかりとしてくることに気がつく。確かに前半は主人公…

映画感想「アベンジャーズ」

この手の映画はとにかくおもしろいかおもしろくないかだけで十分かもしれないが、映画としてレベルが高いかどうかはもう一度見たくなるかどうかではないかと思う。その点、この映画は面白かったけれどももう一度見ようとは思わない。同じ二時間以上ある「ダ…

映画感想「桐島、部活やめるってよ」

ちょっと不思議な映像感覚で私好みの吉田大八監督の最新作。期待通り、ちょっと風変わりな青春群像劇の秀作でした。大満足の一本。映画は「金曜日」というテロップから始まり、ある高校のとある金曜日の一日が繰り返し繰り返しオーバーラップしながら語られ…

映画感想「トータル・リコール」(2012)

8月10日に父が急逝し、ばたばたですごした一週間が終わり、少しずつ元の生活に戻そうと久しぶりに劇場へ息子と一緒に足を運んだ。この一週間で見逃した映画はたくさんありますが、父の面影に浸る毎日にとても映画を見る気分ではなかったことも事実だった…

映画感想「こうのとり、たちずさんで」「霧の中の風景」

「こうのとり、たちずさんで」 公開当時見たのだが、ちょっと記憶が薄れているので再度見直しました。お世辞にも娯楽映画とはいえない。延々とした流麗なカメラワークと長回しで描く圧倒的な映像表現の美しさに目を奪われるものの、スローテンポで語られてい…

映画感想「生きてゐる孫六」

関の孫六という刀といえば名刀の誉れ高い一品。その刀を中心に古い因習にとらわれた田舎町の人々のほほえましくも人間味あふれる人情喜劇です。製作されたのが1943年と第二次大戦まっただ中なので、冒頭で兵士の教官が延々と日本国の軍人としてどうある…

映画感想「ユリシーズの瞳」

決して娯楽映画とは呼べない。テオ・アンゲロプスならではの長回しによるロングショットの連続と重厚な画面づくりの3時間足らずはさすがにしんどいというのが正直なところである。しかし、作品は群を抜いたハイレベルの完成度にはうならされる。モノクロー…

映画感想「野菊の如き君なりき」

木下恵介監督のこの作品の感想を書くのは二度目です。 5年前に始めてみたときは一緒にみた「紀ノ川」が余りにすばらしくて色あせて見えたが、今回見直してみるとこれはこれですばらしい映画だったことに気がつきました。ラストシーンは涙が止まらず、徹底的…

映画感想「少年期」

とにかく絵の美しさに目を奪われる。遠くに山々をいただいた近景に小さく点景のように配置する人々のショットや登場人物が歩きながらはなしているバックに農作業をする人々が配置される構図、さらに見上げるようなショットの背後に大きく膨らんで見える入道…

映画感想「破れ太鼓」「遠い雲」「惜春鳥」

「破れ太鼓」 しゃれたモダンコメディの傑作。阪妻の並外れたカリスマ性に驚かせる作品でした。全く木下恵介のジャンルの幅の広さには感服します。一見、日本の映画なのにどこかエキゾチックなおもしろさがあるし、空間を通り越した演出の見事さ、さりげなく…