今更いうまでもないノーマン・ジュイソン監督スティーヴ・マックィーン、フェイ・ダナウェイ主演の名作である。ストーリーさえいまさらいうまでもない映画で、ミッシェル・ルグランのテーマ曲もスクリーン名曲集に必ず選ばれる。と、まぁここまで一応紹介すると後はなにを感想に書くのかというものだが、実はスクリーンで見たのは初めてなのです。
スプリットイメージで導入部からどんどん物語の核心に飛び込んでいく展開はやはりこれこそが映画といわんばかりの迫力があります。
一人の太った気の弱そうな男が長い廊下を歩いてきてある部屋にはいる。とつぜんまぶしいライトが彼に向けられ、マイクを持った男が影になって彼にある計画を語る。あまりにも有名なファーストショットである。
主人公は大金持ちの実業家トーマス・クラウン(スティーヴ・マックィーン)。彼は自分の道楽として銀行強盗を計画、自らたてた綿密な計画を遂行するために顔さえお互いに知らない仲間を集める。
犯行シーンは画面にスプリットイメージを繰り返して手早く終わらせ、この物語の本筋である保険調査員ビッキー(フェイ・ダナウェイ)との丁々発止の駆け引きが展開していく。
もちろん、その駆け引きも見物だが、しだいにトーマスに本当の恋心を抱いていくかに見えるビッキーの姿が実にセクシーで魅力的である。一方のトーマスもビッキーの魅力にしだいに真相をあかし、第二の犯行の計画をすべて語る下りは不思議な感覚に陥って、果たしてどこまでが二人の本心か混乱し始める。
そしてラストシーン。自分の葬式だといって最初の犯行と同じ場所で金を受け渡そうとし、それを取りに行くかに見せて愛車のロールスロイスがやってくる。それを見守るビッキーと刑事たち。やがて車がやってきて警察が取り囲みビッキーがロールスロイスの車のドアを開けるとロールスロイスからは運転手のジミーがあらわれビッキーに一通の電報を渡す。
「金を持って後を追ってくるかどうかは君の自由だ」
飛行機の上でじっと地上を見つめるマックィーン、電報を粉々に破ってだまされた悔しさか自分の恋心を試された寂しさか複雑な表情で天を仰ぐフェイ・ダナウェイのショットが交差して映画は終わる。これぞ映画、これぞラストシーンの醍醐味なのである。
リメイク版も作られたが、そちらはただ、あっといわせるラストシーンの妙味だけをエッセンスにした凡作でした。
さすが、これこそが名作の貫禄でしょうね。