くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「さよなら子供たち」「白いリボン」

さよなら子供たち

さよなら子供たち
ルイ・マル監督の代表作の一本でもある。
主人公ジュリアンはカトリックの寄宿学校に通っている。そんなところへ一人のジャンという少年が入ってくる。
お互いに仲良くなる二人でしたが、時は第二次大戦真っ最中、やがてドイツの圧制が色濃くなってきて、ある朝、ドイツ軍将校がやってきてユダヤ人だったジャンを始め、学校の校長などを連行していく。去り際に校長が「さよなら子供たち」と声をかけるせりふが題名の由来である。

反戦色が濃い作品であるが、語られるドラマは繊細な心を持った少年たちのあまりにも平凡な日常の姿である。そのドラマがよけいにラストの衝撃を色濃く映し出してくれる。名作と呼べる一本である。


白いリボン
2009年度カンヌ映画祭グランプリ作品、ミヒャエル・ハネケ監督の年度末最大の話題作の一本。しかも、毎回満員なので、仕方なく夜の回にでかけた。

モノクロームの非常に格調の高い映像と演出に正直芸術性と娯楽性は比例しないというのを目の当たりにする一本でした。
といって、全く退屈というわけではありません。しっかりと計算されたかのような構図やカメラワークの完成度の高さに引き込まれる魅力があることも確かです。

とはいっても、登場人物の交錯する展開は時に混乱をもたらすこともある。それはそれぞれの人物の個性がだれ一人秀でた描写がされていない。つまり、それぞれが秘めるそれぞれのドラマが次第に不気味なほどに崩れていく様を描くことが目的であるため、あえて、押さえた人物描写を行っているためでしょう。

そういう淡々と描くドラマを背後に先生のナレーションで補っていくという脚本構成はこの場合最大の効果を発揮しているといえると思います。

物語はドイツの片田舎の町、ある日患者のところから馬で帰るドクターが針金にひっかけられて落馬する。犯人がわからないままに小作人の妻が製材所で事故で落命、さらに地主の息子が乱暴される。と、平穏だったはずの村に忍び寄るように事件が起こってくる。それに伴って、村人たちの確執や欺瞞がフツフツと沸き上がり始める。さらにそれぞれの家族、親子、夫婦それぞれにも今まで陰に隠れていた諍いが表に現れ始めてくるのである。

次第に物語はぎくしゃくした欺瞞の固まりになっていくのであるが、しっかりと風景や建物をとらえた美しいモノクロ映像が不思議にそんな崩壊劇を包み隠してしまう。
そしてクライマックス。すべての犯人に気がついた先生が真相を神父に語る下りから、その村を離れたという先生のナレーション。第一次大戦勃発という時代の変遷が語られて映画は終わります。

クララとマルティンという子供が犯人の首謀者であるのは冒頭のシーンと先生のナレーションから薄々感じていましたが、それであっても、結局さらりとエンディングを迎え、何事もないようにミサに集う村人たちのシーンでフェードアウトする演出は全く、芸術とはこれだといわんばかりである。

作品の完成度は一級品であるが、かなりの体調を整えてみないとしんどい映画であることは否めないと想います。