「コッホ先生と僕らの革命」
この映画はよかった。素直に感動できる名作と呼べる一本でした。アカデミー賞候補になってもいいかもしれない。
19世紀の末、ドイツにサッカーが持ち込まれ広まるきっかけになった実話を元にしているが、物語の構成が実にうまいし、色彩演出が本当に美しい。
厳格そのものの封建的ともいえるドイツのある学校へ一人のイギリス帰りの教師がやってくるところから始まる。非常に平凡な導入部だが、当時の世相を端的にとらえたファーストショットが美しく、その後もブラウンとグリーンを基調に時折セルリアンブルーの落ち着いた青がちりばめられた画面が実にしっとりとした映像になっている。
もちろん、先見的な熱血教師の話なのであるが、画面全体が落ち着いているために非常に品の良いストーリーになっているのである。しかも、当然のように苦難に立ち向かい、生徒たちが先生の見方になり、教師や親に反抗するおきまりのストーリー展開なのだが、それぞれの生徒のキャラクターが個性的で丁寧に描写されているので、嫌みのない展開になる。
終盤はやや荒っぽい組立になっているのは残念であるが、それでも畳みかけていって、コッホ先生の友人イアンがイギリスからやってきてことが一気に好転する終盤は爽快であるし、それに続く生徒たちの立ち上がる姿、そして試合、、ハッピーエンドへ続く演出は小気味良く、そのままさっと終わらせるエンディングもさわやか。
脚本の組立のうまさと品の良い演出、趣味のいい色彩が見事にコラボレートした秀作と呼べる一本でした。見逃さなくて良かった。いい映画です。おすすめ。
「強奪のトライアングル」
この作品も香港映画はこれだといわんばかりの作品で、とにかく最後まで絶対に飽きさせないおもしろさを堪能できました。
映画が始まるとなにやら3人の男が悪事を働こうと画策している。そこへ一人の謎の男が一枚の金貨と謎の名詞を渡して去る。この金貨、古代のすばらしいしなものだとわかった3人は謎の男の言葉を頼りにその男が見つけたという箱を探すことにする。しかし、その謎の男は数日後、謎の死を遂げる。
さて、この3人、男のいうとおりなにやら博物館の地下から掘りだしたのはなんと金の服装を身にまとったミイラで、愛する男のために殉死したという内容の詩が添えられている。
そこへ、悪事を働くために声をかけていたやくざが絡んでくるし3人の男のうちの一人の妻と不倫している刑事が絡んでくるし、見る見る支離滅裂で先の読めない展開が繰り広げられる。しかも、次第にミイラから奪った金の装飾の服がこれらの諍いに呪いをかけたように見えてくるのだ。
そして、不倫をしていた妻は実は虚言癖や精神不安定だったり、その男の妻は交通事故で死んでいたりと、関係があるのかないのか男たちの過去が映されて話はどんどん複雑に絡んでくる。しかし、展開は実にシンプルで金の服を巡っての争奪戦なのである。
クライマックスでは突然、薬中のような男がでてきたり、マウンテンバイクに乗る警官が絡んできたり、水上のレストランを舞台に今まで登場したやくざが拳銃の取引にやってきたりとなにもかもが三つどもえになっての銃撃戦。
しかし、ふと三人の男と一人の女はこれらがすべて金の服の呪いであることに気がつき、その服を手放す。ほかの男たちは互いに撃ち合って死んでしまうが、三人だけが助かる。三人は最後に手にした警官を置き去りに闇に消えていく。
一種のファンタジーのような伝奇ストーリーのような拳銃アクションのような様相で、まさにツイ・ハーク、リンゴ・ラム、ジョニー・トーそれぞれがそれぞれの味を出した作品であることが明確にわかるエンディングににんまりするのです。
全く、香港映画というのは独特の娯楽性を帯びていて、ある意味はまってしまう魅力がありますね。本当に個性あふれるジャンルだと思います。この映画も本当におもしろかった。