くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」「ゆるせない、

オンローラヴァーズレフトアライヴ

「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」
ジム・ジャームッシュが描く、吸血鬼同士のラブストーリー。

退廃的な音楽と映像に彩られた、美しいながらも、どこか陰影のかかる映像は、はまる人にははまってしまうなかなかの傑作。その画面の美しさは、まさに映像作家のそれである。

物語は、ミュージシャンとしてもファンの多いアダム、実は吸血鬼でもある彼が何世紀にもわたって愛してきた恋人のイヴと再会するところから始まる。

現代の吸血鬼よろしく、食べ物である血液は病院から買い入れるという生活で、病院へ行ったときに名乗るドクターの名前が「ストレンジラヴ博士」(博士の異常な愛情)や「ドクターファウスト」「ドクターカリガリ」などと、映画の名作をちりばめた遊びが楽しい。

人間のことをゾンビと呼んで、その破滅的な振る舞いを憂いている彼らのところに、イヴの妹エヴァがやってくる。ところが彼女は自由奔放な現代っ子的な吸血鬼で、とうとう、クラブで知り合った人間の血をすって殺してしまう。その後始末をするアダムとイヴは、今すむ場所を離れタージマールへ。しかし、頼っていったマーロウは、汚染された血を飲んでしまい、瀕死の状態。

寄るすべがなくなったアダムとイヴは、仕方なく夜、カップルを襲うことを決意、牙をむきだしたところでエンディング。

すべて夜の景色ばかりなので、画面は暗いのだが、光と影を見事にアレンジした画面作りがとにかく美しい。そして、背後に流れる甘ったるいような曲の数々が、表社会から隠れていきるアダムたちの、もの悲しさを見事に増長させていく。

個人的にはこういうテンポの映画は苦手なので、好き嫌いをいうと、あまり好きなタイプの作品ではありませんが、さすがにジム・ジャームッシュならではのすばらしい感性が光る一本で、その意味でいい映画だったと思う。


「ゆるせない、逢いたい」
デートレイプという、まるで造語のような事件をテーマにした作品であるが、とにかく脚本が実にふつうすぎる。極端な言い方をすると素人っぽく見える。さらにその脚本による演出も、普通すぎる。結果として、ただひたすら、地を這っていくようなストーリーの流れと展開で、言いたいメッセージのインパクトが弱い作品でした。

監督は金井純一という人である。

ただ、はつ美を演じた吉倉あおいの存在感で何とか全体が持ちこたえた感じの出来映えでした。さすがに柳楽優弥の個性も、今一つ引き立っていないように思えるし、事件までの前半のバランスが妙に長く、その後の後半部分とほぼ同じ配分になっているように思えるために、インパクトが弱くなっているように思える。

終盤に突然、はつ美の友達の存在感を浮上させ、ラストシーンのはつ美のせりふで締めくくる展開が実に唐突。

結局、せりふの一つ一つや、場面描写の脚本の弱さが、最後まで作品のレベルをあげきれなかったことが、残念な一本。作りようによってはそれなりの社会ドラマ、人間ドラマ、青春ドラマ、いやラブストーリーにもなった映画だと思えるので、もう一工夫ほしかったかな。