くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「危険な関係」(ロジェ・バディム監督版)「三十路女はロマチ

kurawan2018-04-03

危険な関係」(ロジェ・バディム監督版)
カメラがとにかく美しい。と思って見入っていると、いつのまにかサスペンスのような展開になって、あっというラストシーンに流れて行く。まさに名作とはこういうものかというほどのクオリティの高さに圧倒される一本でした。

映画が始まると、光と影を大胆に取り入れた画面にロジェ・バディムが登場し、男と女の物語についての序章の言葉を語る。画面が変わると、チェスを大写しにした画面にタイトルが写され、モダンジャズが流れる中、外交官のバルモンとその妻ジュリエットのホームパーティの画面へ。とにかく、光りと影だけでなくカメラワークの美しさもなんとも言えないほどに魅力的なのがこの作品の最大の特徴でしょう。

バルモンとジュリエットはお互いに情事を繰り返し、その経緯を手紙に書いて告白しながら楽しんでいる。この日もお互いが手に入れた相手を自慢し合いながら語り合っている。しかし、その元では二人は愛し合っているのである。

バルモンは、純情なセシルと情事を交わし、人妻で貞淑な妻マリアンヌと出会う。そしてマリアンヌに本気になってしまう。一方、お互いに認め合い告白し合っているバルモンとジュリエットだが、どこか、かすかな嫉妬も芽生えている様が終盤に頭を持ち上げてくる。

そして、マリアンヌに本気になっていると知ったジュリエットは、復讐のために
セシルのフィアンセに近づき、それを阻止しようとしたバルモンに逆に復讐をする。そして、マリアンヌもバルモンに本気になってしまい、夫に別れを言った直後、ジュリエットが勝手に打ったバルモンからの別れの電報が届く。

一方、セシルのフィアンセに会いにいったジュリエットに先手を打って、バルモンはセシルとフィアンセとの間を固めてやるが、その腹いせに、ジュリエットはバルモンとセシルの関係を綴った手紙をフィアンセに見せる。逆上したフィアンセはバルモンを刺し殺す。

そして、刑事の捜査が迫ったジュリエットは、夫との交わした手紙を焼こうとして誤って自分が火だるまになり火傷を負う。

終盤にかけて、ショッキングな超クローズアップや切り替えしながらカメラのアングルが正反対になるなど見事なカメラワークも目を引くが、奥の深い構図で影をうまく使った画面も素晴らしく、終始流れるモダンジャズが独特の雰囲気を生み出していく。

ラストのジュリエットの顔が火傷に爛れているアップでの暗転もショッキングで、本当に卓越した演出力により生み出された一本の映画の素晴らしさを知った気がしました。



「三十路女はロマチックな夢をみるか?」
かなり荒い脚本と演出で今一歩キレが足りないとは言え、こういう映画は大好きです。監督は山岸謙太郎。

公務員として平凡な毎日を送る主人公那奈の愚痴とも取れる一人ゼリフから映画が幕をあける。ひたすら愚痴って、間も無く三十を迎えようとしている。しかも同僚で同い年の親友が寿退社を迎えるという発表にとどめを刺される。

そして家に帰ってみたら、逃げてきた銀行強盗に拉致され、彼らとの逃亡劇に加わることになる。こうして、なにがしかの夢を強盗たちと過ごすことで叶えようとする那奈の姿が物語の中心になる。

かつて美少女アイドルを夢見て、結局挫折の末に、父の勧めで公務員になり今がある彼女。強盗たちは奪った金で借金を返さないといけないのだが、行動を共にするうちに、二人の女を殺して、最後は首班で映画好きの青年と逃避行する決心し、もう一度夢を見ようとする那奈。

そしてクライマックス、ヤクザに金を渡し撃たれた首班の青年は那奈の元へ。実は全て、フェイクの銃で、撃たれたのも演技だった彼の前に、那奈は手錠をかける。なんと那奈は婦警だった。そして、住んでいたのも警察の女子寮という種明かしが行われて映画が終わる。

面白いのだが、どうも展開にキレがないのがなんとも惜しい。所々に貼られた伏線がラストでなるほどと思わせる仕組みになっているのが痛快ですが、その一つ一つがもうちょっと物足りない形になっている。でもインディーズで活躍するだけのことはある演出レベルだと思います。ここから、力を磨いていって面白い日本映画を取ってほしいなと思う。