「バッドランズ」
「地獄の逃避行」の題名でテレビ放映されただけの作品が劇場初公開されたので見に行きました。デビュー作らしい荒削りな演出とカスみたいな若者のがむしゃらな青春ラブストーリーという作品ですが、テレンス・マリック監督らしい地平線を捉えた横に広がる構図を多用し、美しいインサートカットを挿入した作りは非常に上品な映像の仕上がりになっていて楽しむことができました。もう少しパンチが効いていたらもっと面白かったかもしれないけれど、これが彼の個性ではあるとも思います。テレンス・マリック監督長編デビュー作。
1959年、サウスダコタ州の小さな街、ベッドで犬と戯れるホリーの一人セリフの姿から映画は幕を開ける。母はホリーを産んですぐに亡くなり、父が彼女を育てたのだが、それほどの愛情は注がれていなかった。やがて15歳になったホリーは、バトントワリングだけが得意な少女に育っていた。ある日、清掃員のキットが、庭にいるホリーに声をかけてくる。ホリーは父が絶対にキットに近づくなというのがわかっていながら、逢瀬を繰り返し始める。
ホリーの父は、ホリーが遊ぶ暇がないようにクラリネットを習わせ、車で送り迎えを始める。キットは清掃員の仕事を首になり、牛舎で働くようになる。ある日、キットは勝手にホリーの家に入ってトランクにホリーの荷物を詰めて、出て行こうとする。そこへ父とホリーが戻って来る。キットは銃でホリーの父を脅かすが、父は不法侵入だと警察に連絡しようとしたので撃ち殺してしまう。
キットは死体と共に家を燃やしてしまい、ホリーと共に逃避行を始める。河岸にツリーハウスを作って生活し始めるが、賞金稼ぎらしい男たちがやってきたので返り討ちにして殺してしまう。キットたちはお尋ね者になっていた。ツリーハウスを離れ、いく先々で殺人を起こし、清掃員時代の知人ケイトーの家に立ち寄るが、ケイトーが警察に連絡しようとしたので銃で撃ち、訪ねてきたカップルも撃ち殺してしまう。
裕福な家に押し込み、キャデラックを奪って逃走するが、ヘリコプターで警官が迫ってくる。逃げようというキットにホリーはもう嫌だと言ってキットと別れる。キットは一人で車で逃げる。ホリーはヘリコプターで来た警官に逮捕される。パトカーがキットの車を見つけて追跡、キットはわざとパンクさせて警官に捕まる。そして飛行機でサウスダコタ州へ護送される。ホリーのナレーションで、ホリーは執行猶予がついたこと、キットは結局電気椅子に送られたことが語られて映画は終わっていく。
若き日のシシー・スペイセク、マーティン・シーンが懐かしい作品で、ジェームズ・ディーンを気取るキットの姿に、当時の青春映画の一つの型を見たような気がします。美しい映像と行き場のない当時の若者たちの生き様、そんな一昔前のメッセージが見えてくる作品でした。