くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「KIDDOキドー」「天国の日々」(4K)「カップルズ」(4K)

「KIDDOキドー」

小品ですが、ちょっと素敵なロードムービーという一本。細かいお遊びカットを挿入しながら、名作映画さながらに展開する親子のアドベンチャーは、これと言って目につくほどの仕上がりでもないけれど、好きになってしまいます。母親を慕っている割に、どこかクールな主人公ルーと、はちゃめちゃながら憎めない母親カリーナの会話劇も楽しい。背後に流れる音楽センスも良くて、惹かれてしまう一本でした。監督はザラ・ドビンガー。

 

施設で暮らすルーに施設の職員から、翌日ママが迎えにくると電話がきた旨が知らされて映画は幕を開ける。ルーは心待ちに翌日を過ごすも母親は現れず夜が来てしまう。その翌日、施設の子供達を連れて職員はプールへ行くことにするがルーは体調が悪いと施設に残る。そこへ派手な格好の母カリーナが現れてルーを車に乗せて走り去る。カリーナは自称ハリウッド女優ということだがルーは信用していなかった。

 

カリーナは一日一回は叫ぶことにしているとルーを誘う。その日の夕方には戻ると置き手紙をしてルーは出てきたが、カリーナは、ポーランドの祖母の家に向かうという。そしてこれは誘拐で二人はボニーとクライドだとはしゃぎ始める。ルーは小さな蛇を飼っていたがカリーナは嫌ってトランクに仕舞わせる。しばらく行くとボロボロの車はエンコしてしまいカリーナが押しがけして走ったりする。

 

やがて手元の金も尽きてレストランで食い逃げした二人だが、畑の真ん中で車は止まってしまう。カリーナはルーの蛇を座席に戻してもいいと許可するが蛇は行方不明になってしまう。橋の袂まで来た時車がまたエンコし、今度は煙を吐き始める。慌てて逃げた二人の前で車は燃え上がってしまう。

 

二人はヒッチハイクで祖母の家を目指す。そしてようやくついたが。すでに祖母は数年前に死んだという。カリーナは台所に隠していた大金を見つけ出して祖母の家を飛び出す。車を買って次に進もうとするカリーナだが、施設に帰りたいというルーは言う。しかしカリーナはもっと自由でいようと言ったのでルーは叫んでしまい、普通のママに戻って欲しいと迫る。

 

カリーナは、ハリウッド女優というのは嘘だというがルーは知っていたと返す。カリーナは最後に祖母の墓地に寄りたいと言って二人は墓地に行きその後施設に戻ってくる。ルーが車で目覚めるとカリーナの姿はなく、トランクには金が残されていた。ずっと持ち歩いていた大きなクマのぬいぐるみから蛇が出てくる。ルーは金と蛇を持って戻っていって映画は終わる。

 

たわいない映画なのですが、会話の中に出てくる想像が映像で挿入されたり、行く先々に謎の不良少年が出てきたり、食い逃げしたレストランの主人がバイクで追いかけてきたりと、細かいところがさりげなく多彩に散りばめられているのがいい。背後の音楽も軽いタッチで軽快だし、乗ってる車はボロボロだが味がある。結局カリーナはどうなったかという余韻と、決して落ち込まないルーのサバサバしたキャラクターも映画の面白さを生み出していていい。こういうのはちょっと好きな映画です。

 

 

 

天国の日々

約十年ぶりの再見でした。ネストール・アルメンドロスの美しいカメラを鑑賞する映像詩という感じの一本ですね。派手な物語は展開せず、淡々と流れる男女の三角関係がニ十世紀初頭の農場を舞台に繰り広げられる。必見の一本に変わりはありませんし、素晴らしい作品ですが、娯楽映画という一面はほとんどない気がするのは初見の時と印象は変わりません。監督はテレンス・マリック

 

シカゴの製鉄工場ではたらくビリーは監督官と喧嘩をして殺してしまい工場を出ていく場面から映画は幕を開ける。妹のリンダと恋人のアビーを連れて汽車に乗ったビリーは麦の収穫農夫を集めている大農場へやってきて働き始める。その農場の主人の青年チャックはアビーに惹かれ、やがて収穫が終わった後も農場へ残ってくれと求婚する。

 

アビーは兄ということにしているビリーと妹のリンダが一緒なら農場に残ると答え、やがてビリーたちはチャックの農場で贅沢に過ごすようになる。しかし、ビリーはアビーと離れることが寂しく何かにつけ近付いていくのをチャックはとうとう怪しいと感じ始める。飛行機に乗ってきた芸人たちがやってきた日に、チャーリーは、ビリーとアビーの姿を目撃して追求する。しかしアビーはチャーリーを愛し始めているのを知ったビリーは農場を出ていく。

 

時が流れ、ビリーはこの日バイクで農場へ戻ってきた。リンダに歓迎されたが、アビーとの仲が再燃することをチャーリーは危惧するのだった。そんな空気を読んだビリーは出ていくことを決意するが、おりしもイナゴの大群が農場を襲う。炎に包まれる農場、やがて鎮火したものの自暴自棄になったチャーリーはビリーに襲いかかるが、ビリーは手にしていたドライバーでチャーリーを刺し殺してしまう。

 

ビリーはアビーやリンダを連れて農場を逃げるが、警察がビリーを追ってくる。森に追い詰められたビリーはついに警官によって撃たれてしまう。リンダは一時寄宿舎に入れられるも逃げ出しアビーと共に去って映画は終わる。

 

二十世紀初頭のアメリカを舞台にした映像詩で、美しい映像を抒情的な展開で描いていく作品。派手な娯楽作品ではないものの高級感漂う映画でした。

 

 

カップルズ」

男と女の青春群像劇を交錯させながら、混沌とした展開で描いていく作品。中心になる話があるわけでもなく、登場人物たちのそれぞれに次々物語がオーバーラップして、心の拠り所を失った若者たちの姿を描き出していく。何を追いかけていけばいいのかと思いながらも登場人物それぞれが明確に見えてくるから見事なものです。経済成長真っ只中の台湾の世相も垣間見られるなかなかの一本でした。監督はエドワード・ヤン

 

疾走する軽トラックを追う一台のヤクザものの車。台湾の大富豪チェンが行方不明となり、ヤクザたちがその糸口としてその息子を拉致して探そうというセリフが被って映画は幕を開ける。リーダー格のレッドフィッシュ、プレイボーイのホンコン、偽占い師のトゥースペイスト、新入りのルンルンらは、金も愛も自由に経済成長真っ只中の台湾の街を闊歩している。

 

出会った女性たちと好き放題に遊んでいた彼らだが、フランスから来た少女マルトの出現で彼らの関係が微妙に歪み始める。英国人のマーカスはロンドンから来た少女アリソンと恋仲になり成功を手中にした。そこへフランス人の元恋人マルトがやってくる。店の外に出たアリソンにホンコンが言い寄り、マーカスに振られたマルトをレッドフィッシュは売春組織に入れようとする。

 

レッドフィッシュとトゥースペイストは、ジェイの店でレッドフィッシュの父の愛人らしいアンジェラにとりいる。アンジェラこそレッドフィッシュの父を破産に追い込んだ女だった。レッドフィッシュの父を追って来た間抜けなヤクザたちは間違えてルンルンとマルトを拉致してしまう。マルトの機転でヤクザたちの拳銃を奪い逆にヤクザたちの仲間を誘い出そうとする。そしてレッドフィッシュの父がいるであろうマンションへやってくるがレッドフィッシュの父は愛人と死んでいた。ヤクザたちは、警察に連絡、マルトは保護される。

 

マルトを引き取りに来たのはマーカスだった。レッドフィッシュは父の知人に呼び出され、父が死んだマンションは不吉だから取り消してくれと頼まれる。さらにアンジェラは父の愛人ではなく、レッドフィッシュの父を破滅させた女とは別人だとわかる。レッドフィッシュは狂ったように手にしていた拳銃でその男を撃ち殺してしまう。

 

マーカスはマルトを車に乗せて、これからはここが世界の中心になるからと豪語するが、車を離れた隙にマルトは居なくなる。グループを抜けたルンルンが自宅に戻るとフランス人が訪ねて来たという。マルトだと思ったルンルンは夜の街に出ていきマルトと出会ってキスをして映画は終わる。

 

経済成長著しい台湾の夜の街を舞台にした青春群像劇という一本で、一つの作品として振り返ったときにこの映画の面白さが見えてくる。見ている途中はあれよあれよと先を追うだけなのですが、一つにまとまったラストシーンは見事なものです。なかなかの作品だった。

 

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