くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「宝島」(大友啓史監督版)

「宝島」

三時間を超える長尺作品で、相当な力作である。エキストラも存分に使い、日本に返還されたとはいえ米軍基地が残存する沖縄の歪な風土の姿、その現実を一昔前の時代を背景に描いていく様は圧巻。しかしながら、やや力が入りすぎたのか、三時間余りの時間がかなりしんどい。描かれるドラマは非常に重厚で、グイグイと迫ってくるのですが、映像作品としての緩急が少なく、息つく暇もなく押し付けられる感がある。確かに大作なのですが、製作陣の思いを強引に描かれている感じがするのは私だけだろうか。監督は大友啓史。

 

1952年嘉手納基地、米軍の基地に潜入し物資を奪って困窮する島民に分け与える戦果アギヤーと呼ばれる若者達の姿から映画は幕を開ける。そのメンバー、グスク、レイ、リーダーのオンは、米軍に追いかけられながらもこの日も車で逃走していた。しかし、今回は状況が違った。今まで盗むことのなかった武器も積んでいたためか、米軍に挟み撃ちにされて銃撃され、オン、グスク、レイは草むらの中に避難する。彼らは執拗に追ってくる米軍に、とうとう散り散りになってしまう。この夜以来、オンはそのまま姿を消してしまう。

 

やがて時がたち1958年、グスクは刑事となり、オンの手がかりを探していた。この日、日本人が米軍兵士に殺される事件に遭遇し、その犯人を探していた。しかし、ようやく追い詰めた犯人を逮捕しようとしたら米軍MPに邪魔をされる。抵抗するグスクに、アーヴィンというアメリカ人が近づいてくる。アーヴィンは、グスクをクラブに連れていく。アーヴィンの傍には通訳の小松がいた。アーヴィンは諜報局の人間で、グスクが裏で捜査しているオンの件で問い詰めてくる。そして、お互いに情報を共有しようと提案してくる。どうやら、あの夜、オンは、予定外の何かを持ち出したらしかった。

 

グスクは、アーヴィンと接点を持つようになり、その関係でオンが行方不明になった夜の情報で軍関係の記録などを求めるが、なかなか埒が開かなかった。一方、レイはあの夜米軍に捕まり、刑務所に入っていたが、出てきてからチンピラのようなことをするようになる。彼らの幼馴染でオンの恋人でもあったヤマコは小学校の先生になっていた。その小学校はオン達が手に入れた戦果で設立したものだった。しかし、ある時、米軍機が墜落して小学校は大破してしまう。

 

沖縄住民の米軍への不審が募る中、デモが繰り返されるようになる。ヤマコのそばには米兵と日本人のハーフウタの姿が見え隠れする。レイは独自にオンの行方を探し求め、海岸で一人の老人からオンの首飾りを手に入れる。それをヤマコに届けるが、その直前、バーで暴れて米兵を痛めつけて血だらけになる。

 

米軍基地に毒ガス兵器が保管されているというニュースが広がる。その兵器の一部が奪われた事件もあったがそれは隠蔽されていた。時を同じくして島民の家々にガスマスクが配送される出来事が起こる。さらに、米兵が覆面をした何者かに襲われる事件が起こり始める。さらにグスクは、謎の男に拉致されて拷問されたりする。

 

1969年、ベトナム戦争が起こり、2年後の沖縄の本土復帰が決まるが島民の心はすっきりしなかった。そして、米軍兵士のひき逃げ事件に端を発した暴動が勃発する。ウタは成長し、レイ同様にチンピラのような生活をしていた。暴動に紛れてレイは基地に侵入する。レイの姿を見かけたグスクとヤマコが後を追って基地に飛び込む。レイは米軍から奪った毒ガス兵器を持っていた。これを使って要求することがあると叫ぶが、グスクは必死で止めようとする。そこへウタが現れる。米軍に取り囲まれたレイ達の前にアーヴィンが現れる。米軍がレイを撃った銃弾がウタを撃ってしまう。グスクは、このまま逃がしてくれたら毒ガスは残していくからとアーヴィンに懇願、グスク達は窮地を脱する。

 

瀕死のウタを抱えて、グスク、ヤマコ、レイは車で脱出、おそらく助からないであろうウタの望みである海岸に辿り着く。そこには白骨死体があった。それはオンの物だった。あの夜、米軍基地から持ち出した予期しない戦果とは赤ん坊のウタだった。ウタは米軍基地のかなり上層部の士官と日本人の間の子供で、米軍はこの事を公にしたくなかったので証拠を処分し、オンの事を調べているグスクに近づいたのだ。

 

オンは、あの夜、逃げる中で偶然草むらで出産したウタを救い出す。ウタの母はその場で息を引き取ったのでそのまま赤ん坊を抱いて逃走、ベトナム人らしい一団に拾われてウタを育てたが、米軍の攻撃があり、オンとウタは小舟で脱出、沖縄にたどり着いた。しかし、オンは怪我をしていてそのまま息を引き取っていた。全てが明らかになり、グスク達はオンの葬儀を行う。それを陰で見つめるレイはその場を去っていく。こうして映画は幕を閉じる。

 

沖縄という矛盾した歪みのまま日本復帰をした土地柄、そこで生きる人々にとって、かけがえのない宝島である沖縄への思い、米軍との確執、本土への不満、そんな様々を一気に描いていく物語はかなり重い。見応えのある作品ではあるけれども、商業映画でもある事はどこか隅に意識して作品作りをしてほしかったようにも思います。良い映画ですが、さすがに長かった。