リドリー・スコット監督、デンゼル・ワシントン主演の期待作「アメリカンギャングスター」を見てきました。
2時間を越える作品なのと、かなりハードな内容のようでしたので、覚悟して見に行きましたが、何のことはない、のめりこむほどに見入ってしまいました。
久しぶりに完成度の高い作品にめぐり合ったという感じです。
物語は1968年頃、アメリカの裏社会に君臨した伝説の麻薬王フランク・ルーカスの半生と彼を追い詰め、ついには逮捕にこぎつけた麻薬捜査官リッチー・ロバーツの実話を基にした作品です。
とにかく、冒頭からかなり練りこまれた映像で、登場人物を的確に紹介していきます。最近の映画はこの紹介をおろそかにするので、特に長尺な作品はわけがわからなくなるのですが、さすがベテランリドリー・スコット、そのあたりはしっかり抑えてくるところが見事。
一通りの設定を紹介したあとは、物語は徐々に、そして一気に本編へと進み、辣腕で次々と組織を巨大化していくフランク・ルーカスの姿を見事に描ききっていきます。もちろん、デンゼル・ワシントンの演技も見事。
一方のリッチー・ロバーツ役のラッセル・クロウはやや存在が薄く見えますが、主人公をフランク・ルーカスに絞った展開ゆえに、ラッセル・クロウを控えめに演出したことで物語がきれいに見えて、わかりやすい展開になりました。
自分の才覚で、巨大な金を手にしながら、表向きは質素を心がけ、最後まで、麻薬捜査官に目をつけられなかった彼の隅々まで行き渡る見事な知力をスクリーンに事細かに映し出し、一方で、組織と家族を守るためにはためらいもなく人を殺す非情さも描きこんで、すばらしい一人の人間のドラマに仕上げていました。
クリアマックス、協会を出たところで警官たちに取り囲まれ、悠然と逮捕されるルーカスの姿、そしてそのあとに続く裁判所のシーン等々、最後まで手を抜かない演出に脱帽。いい映画でした。