くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ゲーテの恋 君に捧ぐ 若きウエルテルの悩み」「フェア・

ゲーテの恋

ゲーテの恋 君に捧ぐ『若きウェルテルの悩み』」
思っていた以上に良い映画でした。全体に物語の展開のバランスが本当によく組み立てられているのです。静かで淀みの無かった海が次第に波立ち、やがて怒濤のようにうねり初めて岸壁にぶつかって砕け、やがて静かに引いていくかのように主人公ゲーテの劇的な恋の情熱のうねりがみごとに描かれています。

物語は若いゲーテが後の「若きウェルテルの悩み」として結実するジャルロッテとの出会いと別れを描いたラブストーリーでもあるが、一人のゲーテという人物のほんのひとときの熱い人生であるようにも見える。しかも、周りに登場する人物が本当に人間味があってあたたかい。それに、ドイツの町並みの景色や郊外の広々とした自然の風景が押さえられた色彩で実に上品に写されている。

学校で法律を学ぶゲーテは法律になんの興味もなくひたすら詩や戯曲を書いては出版社に送っている。しかし、彼の書いたそれぞれはどれも今一つ芽を出さない。そんな息子に業を煮やした父は田舎の裁判所へ実習生として送り込んでしまう。そこでゲーテはその村の一人の娘シャルロッテと出会う。

一方、仕事の処理能力に秀でたゲーテはその上司である参事官アルベルトに信頼され、常に右腕として働くようになる。

ゲーテシャルロッテの仲は日毎に深まり、ある日それぞれがそれぞれに住まいへ会いにでかけ、ふとしたすれ違いで帰り道に出会い、そこで愛の契りをかわす。

ところが、ある日、アルベルトは密かに思いを寄せる女性への愛の告白の言葉をゲーテにアドバイスをもらうことになる。まさかその女性がシャルロッテであることを知らないゲーテは熱い言葉をアルベルトの捧げ、見事にアルベルトはシャルロッテと婚約を果たすのである。

ゲーテに大変な恩を着ることになったアルベルトはますますゲーテに信頼し、シャルロッテとの婚約の披露パーティにゲーテを呼ぶが、病の後の見舞いがてらにシャルロッテのもとに出かける予定だったゲーテはそれを断る。

シャルロッテゲーテに婚約した旨の手紙を送るもすれ違いでゲーテは婚約披露パーティの行われているシャルロッテの家にやってきてしまう。こうして、アルベルトの知ることになり、ゲーテは自暴自棄に。一方ゲーテと同じ部屋の親友は恋に破れてある朝ピストル自殺をしてしまう。

そして、シャルロッテをめぐるトラブルでゲーテが思わずアルベルトを殴ってしまったためゲーテとアルベルトは決闘をすることに。

しかし、決闘が法律違反であるためゲーテは投獄。やがて、シャルロッテとアルベルトは結婚式を挙げる。このアルベルトの人物像も世間体や見栄ばかりのいけ好かない人物として描いていないのが実に好感で、作品の質を見事に押し上げている。

獄中でゲーテシャルロッテとの想い出をつづった「若きウェルテルの悩み」を執筆。ウェルテルとはまさにゲーテ本人なのである。そしてそのラストはウェルテルがピストル自殺をするという悲劇で幕を閉じるのだ。

完成した「若きウェルテルの悩み」はシャルロッテの元に届けられ、驚いたシャルロッテは獄中を訪れ、アルベルトを愛している旨を伝えてゲーテに別れを告げる。

シャルロッテとアルベルトの結婚の日、ゲーテは獄中で自殺をしようとピストルをこめかみに当てるが決心が付かない。

そして6ヶ月後、ゲーテの父がゲーテを引き取り、フランクフルトへつれていく。そこでゲーテは「若きウェルテルの悩み」がベストセラーとなり、一躍自分が有名人になったことを知る。獄中からシャルロッテに送った原稿をシャルロッテが出版社へ持ち込んだのだ。

法律家とならなかった息子ではあるが、人々に慕われる姿を見た父は周りの人に「あれは自分の息子だ」と自慢げに語る。ほほえましいほどに胸が熱くなるクライマックスである。

ゲーテシャルロッテの恋が盛り上がり、やがてそのすれ違いからシャルロッテがアルベルトと結婚、そしてゲーテの別れ、そしてラストへとうねるような展開が実に見事で、前半からこのクライマックスとの配分のバランスが拍手したくなるほどに見事なのです。そして、ゲーテの父のうれしそうなほほえみで締めくくるシーンが本当に感動的。なかなかの秀作だった気がします。

フェア・ゲーム
アメリカによるイラク戦争大義名分であるイラク大量破壊兵器破壊。しかし、真実はそのような破壊兵器は存在しなかったといわれる。その真実が明るみになる事件を描いた作品がこの映画である。

ダグ・リーマン監督はこの衝撃の事実をまるで張りつめたピアノ線が共鳴するくらいの緊迫感のあるストーリー展開でその出だしからラストシーンまでを描いていく。前編緊張感に包まれたこの作品、その冒頭部分からいきなりサスペンスフルなシーンで始まる。

投資会社につとめるヴァレリーが次の商談にそのエージェントとの取引のアポイントの場面から始まる。そして、そこにその取引相手のいとこというバカ息子が彼女を口説きにかかり、車で連れ出して道路脇に止める。ところがこの車をつけてきた車が園は意義にぴたりと止まり、今までふつうのOLだったヴァレリーはその男をいきなり脅す。

実はヴァレリーはCIAのエージェントで、もちろん家族と両親以外は極秘である。そして、イラクが大量は破壊兵器を作ろうとする真相を探るために様々な国に出かけては情報を収集している。夫のジョーは元切れ者の外交官で熟知しているアフリカのニイジェリアへ情報収集に言ってくれと妻に頼まれる。

しかし、ヴァレリーの調査もジョーの情報もイラクへの核兵器材料の搬入の証拠はなく、その真相を政府に報告し始めると、イラク戦争の正当化に焦る政府特に副大統領からの死つような反発を招く。そして、ついには極秘であるはずの妻の正体が新聞に暴露されるに及んで、この家族が窮地に立たされていく。

市民からの非難、中傷にジョーは完全と立ち向かい、政府の法律違反を徹底的に糾明するとマスコミ等を味方に反撃していくのだが、権力の前に次第に劣勢になっていく。ひたすら沈黙を守るヴァレリーともいつの間にか溝ができ始めていく。

家族という問題を執拗に描写せずにひたすらジョーヴァレリーの苦悩を中心に描いたために最後まで緊張感が持続し、結果として、ラストで副大統領が起訴され、ヴァレリーが証人台で証言をするラストシーンが生きてきたように思います。

重厚な中に実話の迫力を全面に出し、シリアスな政治ドラマとしてサスペンス色も持たせた物語はなかなか見応えのある一本でした。