くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ウォ-リアー&ウルフ」「ラビット・ホール」

ウオーリアー&ウルフ

「ウォ-リアー&ウルフ」
中国映画の巨匠ティエン・チュアンチュアン監督が井上靖の原作を元に描いた歴史超大作である。主演の陸にオダギリ・ジョーが扮し、ハラン族の美女にマギー・Qが扮している。

物語は今から2000年前の中国、辺境の地で遊牧民と戦う朝廷軍、その軍を率いる帳将軍。しかし遊牧民に破れ、撤退を余儀なくされた。ここに帳将軍にかわいがられ入隊した陸将軍は負傷した帳将軍を率いて退却を進める。

やがて吹雪に会った軍はハラス族と呼ばれる不気味な民族の住む村に避難する。そこで陸は床下にすむ一人の美女と出会い、やがて愛を交わす。そして7日を過ごした二人に訪れたのはんんと一夜で狼に変わり果ててしまうという呪いだった。

5年後、帳将軍が再びこの血を訪れ、最後の反抗を繰り返す民族の打倒を行う内に一組の狼に出会う。しかし、帳将軍はこの狼によってかみ殺されてしまうのである。

陸が帳将軍と過ごした日々がフラッシュバックで何度も挿入され、明らかにCGともとれる景色や狼の群、砂嵐などが描写されるが、全体の流れが実にアンバランスなリズムになっていて、ストーリー展開が見えてこないのである。結果として平坦なドラマになってしまって、帳将軍と陸の心の交流や陸と美女の愛のドラマも迫真性にかける結果となり平坦な退屈な作品として仕上がっているように思う。

大作というふれこみで公開されたものの、どこかシリーズドラマのダイジェストのように見えるところもあり、一本のまとまった作品という印象に薄いのが残念な作品でした。

ラビット・ホール
ニコール・キッドマンアカデミー賞ゴールデングローブ賞のWノミネートされた話題作である。

最愛の息子ダニーを交通事故で失ったベッカとハウイーの夫婦。いつも腫れ物をさわるように近づいてくる周辺の人たちにうっとうしさを感じながら、いつまでも亡くなった息子の思い出を捨てされない自分たちにもやりきれない気持ちを抱いている。

荒れた庭を戻すべく手入れをしているベッカ(ニコール・キッドマン)のショットから映画が始まる。隣の世話焼きのような婦人が夕食に招待するが体よく断り、帰ってきた夫ハウイーとさりげない会話を交わす。映画は最初からこの夫婦の最近起こった悲劇に触れてこない。

夫婦の会話は日常のままで、淡々と写されるが、夜中にスマートフォンに残った息子の動画を一人眺めるハウイーの姿を見せることで次第にこの夫婦が悲劇によってぎくしゃくし始めていることを語っていく。執拗に話しかけてくる実家の母や問題ばかり起こす妹にいらいらをぶつけるベッカの姿。次第に見えてくる夫婦の感情のもつれ。

被害者遺族の会にでるも、熱心な夫に対しついていけない妻の姿。映画の中盤まではやたらいじいじして情けないハウイーの様子がしつこいほどに語られ、一方、ベッカはふとした偶然で事故を起こした少年ジェイソンに出会う。そして、時折公園のベンチで会うようになる。一方のハウイーも被害者の会で知り合った人妻と親しくなる。

この映画のいいところはここで、このハウイーは一線を越えないこと、ジェイソンがふつうの高校生で、時折挿入されるイラストをコミックとして書いているという人物描写にあります。悲劇でこじれた夫婦が当たり前のようにそれぞれが勝手な人生へと逃げていかないところにこの作品の秀作たらんと仕上がった最大のポイントがあるのです。

そして、時に夫婦は距離を置き、お互いに譲り合って家の売却などにも前向きになっていく。閉じられた箱が次第に開かれていくかのごときストーリー展開が見る人をこの夫婦の未来に引き込まれ始めるのである。

終盤、どうしようもなくなったハウイーは被害者の会で知り合った人妻の家に出かける。ベッカはジェイソンが書いたコミック「ラビット・ホール」を返しにジェイソンの家に。

しかし、ハウイーは玄関で引き返し、ベッカは高校の卒業式に出かけるジェイソンの姿をみて車の中で泣きじゃくる。

家に帰ったハウイーは片づけられた子供の部屋でねむってしまい、ベッカも泣きつかれたかのようにくるまで眠ってしまう。そして、暗転。このフェードアウトがこの作品実にいい。

フェードインすると、卒業式から帰ってきたジェイソンがベッカの車をノックし二人は公園で話をする。コミックに書かれたパラレルワールドのはなし。自分たちは悲劇のバージョンだと明るく語る。

一方妻がでていったと思ったハウイーが目覚めるとベッカが帰っている。

二人はそれぞれさりげなく近づき始め、これからまずなにをするかを考え始める。庭でバーベキューをし、妹や母や友人を招き、ふつうに子供の話をし亡くなったダニーの話になるのをまとうと考える。

映画は庭でのパーティが終わりいすに寄りかかる二人のショットで幕を閉じる。なにか、二人にはかすかな未来が見えたような心地よいラストシーンです。

非常に押さえたストーリーの中に誰もが大なり小なり経験する悲劇へ立ち向かう姿を織り込み、そして、さらにかすかな希望を見いだしていく様子を丁寧に描いたジェー、ウズ・キャメロン・ミッチャルの演出が実に優しくて繊細。ニコール・キッドマンの非常に押さえた中にどうしようもない感情の高ぶりを見せた演技がこの物語を引っ張っていきます。

傑作とまではいかないまでも良質な作品だったような気がします。