「DIE MY LOVE ダイ・マイ・ラブ」
出産後の女性の不安定な心情を映像だけで語っていくという非常にシュールでクオリティの高い作品ですが、やや作り込みすぎたきらいがあり、物語の構成が反復して繰り返していくので、どこまでが現実でどこからが幻覚で、行き着く先がなんだったのか完全に目眩しにあってしまった。監督はリン・ラムジー。
作家のグレースと夫のジャクソンが、先日亡くなった叔父の家に移り住んできたところから映画は幕を開ける。奥行きのある縦の構図で二人の姿を延々と描いた後、いきなり山火事の森、激しいビートの効いた曲が爆発的に挿入され、踊り狂いながら体を合わせる二人のシーンへ続く。
場面が変わると、グレースに赤ん坊が生まれている。すっかり育児に翻弄される日々になって、執筆活動もできず、身繕いさえ適当になって育児に専念する。夫は仕事で三日に一度くらいしか戻れず、その間、赤ん坊につきっきりになるグレースは、セックスレスになり欲求不満になる。幻か現実かわからないバイクに乗った黒人を見かけたり、黒い馬が庭にいたりする。そんな彼女の周りの人達の言葉も虚しく聞こえ、グレースはますます孤独の底に沈んでいく。
ジャクソンは犬を拾って来るが、その犬の鳴き声がさらにグレースを苛立たせる。夫の友人グレッグのパーティに出かけたグレース達だが、グレースは突然下着姿になりプールに飛び込んだりする。グレースの行動は明らかに異常さを増し、自宅の洗面所を破壊したり、具合が悪く泣き続ける犬を銃で撃ち殺したりする。
突然、鏡に額を打ちつけ、そのまま子供を連れて家を出て行ったグレースに、見かねたジャクソンは、彼女を病院に連れて行き入院させる。グレースは病院のベッドで幻覚の中で暮らすが、やがて退院、自宅で快気祝いのパーティが開かれる。そこでグレースは、義母のパムに別れを告げて部屋を出ていく。ジャクソンが追いかけて、グレースを連れて森へ向かう。グレースが、もう十分だからとジャクソンに別れを告げて森の奥へ向かうと、森は火事になっている。その炎の中へ入っていくグレースを、なすすべもなく見送るジャクソンの姿で映画は幕を閉じる。果たして、どこまでが現実だったのか、その境目が見えないままに終わる。
結局、グレースは立ち直れず消えて行ったという結末なのだろうか、だとするとちょっと悲しい。残された赤ん坊はどうするのだろう。そういう伏線が画面に挿入されているのだろうか。そんな事を考えると深読みが難しい作品だった。
「メモリィズ」
本当になんの変哲もない映画だった。スナップ写真のようなショットを繰り返し挿入し、何故か東京と大分を繰り返す構成で、さりげなく過ごす日常のささやかな記憶を淡々と描いていくだけの映画。さすがに終盤は退屈になってしまったが、と言って駄作ではない一本だった。監督は坂西未郁。
東京で暮らす雄太が、妻の実家の父誠が足を骨折したとのことで、大分にある誠の写真館に手伝いに出発するところから映画は幕を開ける。田舎町の一角にある古い写真館で手伝いをしながら、犬の散歩や食事の準備などをし、東京で中国人の観光ガイドをする妻ゆきや娘とスマートフォンでやり取りし、これということもない日常を過ごしていく。
散歩の途中で、面白い景色などがあればスマホで写真に収め、誠が出張で学校や結婚式場などで写真を撮る手伝いをする。散歩の途中で見かけていた佐々木さんが亡くなったり、たわいない出来事が続き、やがて誠の怪我も治り、ゆきと娘もやって来る。誠はゆきに、亡くなった妻の留守電の声を聞かせ、その場面を雄太が誠にもらったカメラで撮って映画は終わる。
本当に何もないたわいない物語で、東京で観光客を案内するゆきの姿と大分で誠の世話をする雄太の姿を交互で描いていくだけの作品。そんな日常の積み重ねが人生となって記憶のドラマが作り上げられていくのだろう。そんな雰囲気を感じさせる一本でした。

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