くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サブウェイ123激突」

サブウェイ123激突

ご存知のように、1974年の秀作「サブウェイパニック」のリメイクである。
今回の監督は、トニー・スコット

冒頭のタイトルバックからめまぐるしいほどの細かいカットの連続で、トニー・スコットならではのモダンで、スタイリッシュな映像が爆発する。
その映像の中で、物語の登場人物たちが紹介され、下準備としての犯人たちの姿がフラッシュバックのように映し出せれていく。もちろん、今回の地下鉄側のデンゼル・ワシントンの姿もこのカットの中に挿入され、お膳立てができていく。

そしてタイトルが終わるといきなり犯人が地下鉄を乗っ取るという本編へ一気に入り込む。ここからはスピード感満点のカットの連続で、正直、かなり緊迫感が圧迫感に変わる部分もあるような気がします。

オリジナル版は劇場で見た覚えはなく、レンタルビデオかテレビ放映で見たような気がしないこともないけれど、ほとんど覚えていません。パンフレットによる解説は、リメイク版とは少々、設定やキーポイントなどが違うことになっていますが、覚えていないので今回の作品のみで書いていきたいと思います。

本編に入れば物語は完全にデンゼル・ワシントン扮するガーバーと犯人の首謀者ジョン・トラヴォルタ扮するライダーとのやり取りがほとんどで、彼らの周りの登場人物にはほとんど力が注がれていないのか、見えない。
演技力抜群の二人なので、この二人のやり取りだけで、サスペンスフルな緊迫感は十分生み出されますが、作品全体としてはかなり希薄なものになってしまったようで、ライダーの片腕のように存在する鼻に絆創膏を貼った犯人の存在がほとんど無意味でちょっと、もったいない。オリジナル版ではかなりキーマンになるそうですが。

一方、いかにして計画を実行していくかという謎解きの面白さは、二人のやり取りの面白さにかかっているものの、極端に感情的なライダーの行動が、単調なテロ犯人にしか見えず、せっかくのライダーの本当の目的、動機が見えてきても、どんでん返しと思えるほどの感慨は生まれません。また、あらぬ疑いを受けているガーバーのライダーとの微妙な心のつながりも、今ひとつ作品のスパイスになりきれず、めまぐるしいシーンの連続に終始するのは、トニー・スコットのミスかもしれませんね。

やたら、派手な現金輸送シーンも時間に間に合わせるべくとはいえ、極端すぎてリアリティがかけ離れ、かえって、作品の質を下げたともいえなくもない。

オリジナル版が、その犯罪サスペンスの面白さと、人間心理の面白さをベースにした傑作であったために、あえて、その反対の路線で、モダンな作品にしようとしたトニー・スコットと脚本のブライアン・ヘルゲランドの意図は、かえってこの作品本来の厚みを打ち消してしまったのかもしれないですね。
気楽に見るには非常に面白いのですが、見終わったあとの充実感にはちょっと遠かったような気がします