くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「恋人たち」

恋人たち

唐突な物語であるが、アンリ・ドカエの見事なカメラ、ブラームスの美しい調べが何ともいえないロマンティックなラブストーリーに私たちを誘ってくれます。

ルイ・マル監督の代表作の一つで、ジャンヌ・モローが抜群に美しい人妻を演じています。

映画が始まるとブラームスの調べの中でのタイトルバック、そしてクリケットの試合を見るジャンヌとマギー。
新聞社の社長をする夫の薦めでこのマギーを訪ねるうちにジャンヌはラウルという男性と恋に落ちています。
背の高い完璧に近いラウルとのつきあいにどこか面倒くささを感じ、一方の夫との愛には窮屈さを覚えていた矢先、ヒッチハイクのような形で知り合ったベルナールと一瞬で恋に落ちてしまいます。

ベルナールとジャンヌとのボートの流れの中でのラブシーンのうつくしいこと。揺れる木々の木漏れ日の陰と水のさざ波が一つになってまるでボートが透明になったかのような錯覚にさえ陥ります。そんな中で二度、三度と抱き合う二人の姿は濃密なほどに美しい。

さらに、ジャンヌの部屋に入り、少しずつベッドへと近づいていく抱擁シーンの見事なこと。これこそラブシーンの名場面ではないかと思います。
さらに何度も抱擁を繰り返し、次の朝になっても薄れることのない二人のラブシーンが実に魅惑的です。

そして翌朝、車に乗った二人が道を走り去っていく。どこか戸惑いを見せながら走り去る車の脇に真っ白な馬がたたずんでいるショットからFINの文字へ。まるでスタンダールの「恋愛論」を読むがごときラブストーリーの名編でした。

こうして数本続けてみてくるとルイ・マルの映画の作風がちらほら見え始めて来た気がします。