くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「MONSTERZ」「家族の味見」「ぼくの伯父さん」

MONSTERZ

「MONSTERZ」
一見、ホラー映画のような物語なのだが、それを徹底的に、人間ドラマとして描いたのが、ある意味成功だったか、失敗だったか。微妙なバランスの出来映えの映画でした。原案は、以前、たまたま見た韓国映画「超能力者」で、あちらは単純な娯楽作品に仕上がっていたのがそれなりの面白さの原因だろうか。

視界に入る人を自由に操ることができる主人公の少年時代から映画が始まる。DVの父親をその能力で殺してしまい、母親をどん底につき落として20年後。隠れるように生きてきたこの男は、ある日、全く操れない男、田中終一と出会う。

一方の田中は、異常なくらいの回復力を持ち、ある意味彼もまた化け物である。

物語は、シンプルそのもので、この二人の出会いにより、主人公は田中を執拗に殺そうと氏、そんな企てに奇跡的に復活する田中の物語である。

いったい彼らは何のために生まれてきたのか。主人公は、その力を使うにつれて体の一部が次第に腐っていくらしく、片足の半分がない。しかも田中との対決で力を使うために手の指も腐りはじめる。

ストーリーの中で、この腐る意味の説明は全くなく、演劇ホールでの最後の対決で、田中はホール中心の吹き抜けの穴に落ちていく主人公を抱き抱えて助け、主人公は警察の監視下に、田中は元の生活に戻りエンディング。

石原さとみ扮するギター店の物語や、田中の育ての親である刑事の物語、さらに田中の友人のコミカルな二人のドラマはほとんど無視し、結局、物語の骨子が見えないままに終わる。

ただ、何度も背後に、もの悲しい曲が流れることから、進化してしまった特殊な人間二人の切ない物語なのだろうと理解できるのだが、今一つ、それぞれのエピソードが弱いのが残念な一本。これなら徹底的にホラーに傾倒しても良かったかもしれない。


「家族の味見」
ジャック・タチ映画祭の短編の一本で、一軒の店に立ち寄る人々の姿を、軽快なリズムで描いた一本。たわいのない一瞬を描いた感じの作品で、乾いた笑いというのがあるようだが、さすがに、はまれなかった。




「ぼくの伯父さん」
ご存じ、ユロさんが、妹夫婦が新居を建てたということでお客としてやってくる。仕事もないので、妹の夫のホース会社に採用してもらう。

いとこの男の子に気に入られ、彼とのいたずらなども描かれるために、こういう題名になったようである。笑いのエッセンスとしては、この作品に先立つ「ぼくの伯父さんの休暇」が抜群におもしろかったことを考えると、ややレベルダウンにみえる。

物語は、町の中で数匹の野良犬が、ごみ箱を漁っているシーンに始まる。この犬が道路を疾走し、とある一軒の家、つまりユロさんの妹夫婦の家をのぞくというコミカルなシーンか映画はいつもの軽快なテンポへなだれ込む。この導入部はまったく見事である

いかにも、最新式という感じの設備の数々と、幾何学的な家の姿、利便性より、デザイン重視の庭のデザインや、とってつけたような魚が水を吹く噴水などで、来客シーンやパーティシーンなどの軽いタッチの笑いが展開する。

例によって、サイレント映画のような演出と、ユロ氏がおりなすコミカルな笑いのシーンという組立ですが、今一つ乗り切らない笑いもたくさんあり、代表作の一本とはいえ、先日からみている作品のおもしろさまで追いつかない。

円い窓に写る人影が目玉に見えたり、犬がセンサーを通ってしまってガレージが勝手に閉まってしまって、メイドに頼むが、電気が嫌いだとわめいたり、庭に刺した棒のために噴水が壊れたり、次々とドタバタ劇が繰り返される。

結局、業を煮やした夫がユロ氏を追い返して映画は終わる。エピローグは、冒頭のシーン同様に野良犬が町を疾走する。

確かに、タイトルの出し方や、色の使い方、モダンな家をアイロニーいっぱいにふざけてみせるメッセージが前面にでる作り方は、笑いのみで突っ走るのとはちょっと違うムードもあるが、やはりジャック・タチならではのオリジナリティあふれる一本でした。