くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「リトル・フォレスト冬編・春編」「フォックスキャッチャー

kurawan2015-02-18

「リトル・フォレスト冬編・春編」
「夏・秋」編につづいての物語。生まれ故郷に戻ってきた主人公いち子の生活の模様を、素朴な自然と、野菜などを使った料理を紹介していく、いわゆる癒し系のほのぼの映画である。

自給自足の生活の中にある素朴さ、人間の本来の生き物としての居場所と美しい自然の景色をきっちりととらえる映像が、とにかく美しい。

これという大きな展開はないのだが、みている間中、自分の今の生き方をついつい振り返っている。

時にあわただしく、時にゆっくりと、毎日を生きていく。それでも、時の流れは変わることなく悠然と季節を奏でていく。人間の自然の中での存在、そんな壮大なものとは少し違った、立ち位置がみえてくるのがなんとも落ち着くのです。

巧みにスプリット画面を利用したテンポのうまさと、流れる季節の移り変わりを見せるカメラが素敵なほどに美しい。ちょっと、見逃したくないような一本、心が落ち着きます。


フォックスキャッチャー
実話とはいえ、とにかく地味な映画である。徹底的に心理ドラマとして描いていく。その沈んだストーリー展開がたまらなく息苦しいが、それだけで見せるベネット・ミラー監督の手腕は認めざるを得ません。見事な映画でした。

狐を追いかける馬や人々の古いフィルムをタイトルバックに映画始まる。やがて、一人の男マーク・シュルツが、スピーチをしているシーン。どうやら生活のためのアルバイト的なものである。

次に、彼のレスリングの稽古場面。相手をするのは兄で同じく金メダリストのデイヴ。マークの視線の先には、いつも兄デイヴの姿が見え隠れし、常に自分を支えてくれている反面、支えられることの苦しさも感じている。

そんなマークに、大富豪のジョン・デュポンから連絡が入る。マークの才能を認めたジョンが、自分の夢のために、レスリングの練習場を提供し、資金を用意し、選手を育てたいのだという。

しかし、ジョンの本当に求めているのは兄のデイヴなのではないかという不安が、常にマークにつきまとっているのだ。

一方、ジョン自身にも、越えがたい母という存在が見えてくる。この二人のコンプレックスの中に、次第に入ってくるデイヴというふつうの存在。映画は、この三人の心理的な葛藤のドラマとして展開していく。

しっかりととらえるカメラの先には、常に三人の顔がある。笑っているのか不明で、不気味に口を開けているジョン。常に母にいいところを見せようともがく姿。一方、下から見上げるような視線で、常に、自分の上に存在する人間をみるマーク。

マークを愛し、ジョンに不気味さを覚えるデイヴ。そして、ラスト、母も死に、やっと、自分が上に立ったかと思うが、まだそこにデイヴという別の存在を認め、そして銃で撃ってしまう。

終始、深層心理の奥底に迫ってくるカメラワークと、演出が、おそろしい。その緊迫感が一瞬もゆるむことなくラストシーンまでいいく。見事ではあるが、しんどい映画だった。