くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ネオン・デーモン」「アイ・イン・ザ・スカイ  世界一安

kurawan2017-01-17

ネオン・デーモン
正直、かなりシュールで、終盤はついていけなくなった。スタイリッシュな映像美で描かれるファンション界を舞台にしたミステリアスなサスペンス映画。監督はニコラス・ウェンディング・レフン。これを聞いただけでわかるという感じですね。映像美は覚悟してましたが、物語までここまで来るとは、参りました。

点滅する光の映像に浮かび上がる少女ジェシー。ネットで知り合ったカメラマンに写真を撮ってもらっている。シンメトリーな画面によっては引いていくカメラワーク。脇に置いたライトが微妙なシュール感を作り出して、暗闇で妖艶に横たわるジェシーの映像のオープニングにまず驚いてしまう。そしてこれに続く物語のミステリアスな展開を予想させます。

田舎からトップモデルを目指して都会にやって来たジェシーは、撮ってもらった写真を持ってモデル事務所に売り込みに行く。彼女に魅力を見出した代表は彼女を早速売り出しにかかる。

天性の魅力が次々とジェシーをトップの座に押し上げて行くが、一方で回りのモデルたちの嫉妬を買う。

ブルーやゴールド、レッドなどまばゆい光の演出と、ロケーション場所にも幾何学的な壁や配置のある場所を選び、独特のモダンな映像で物語が展開。ジェシーの住むアパートの管理人が妙に暴力的で怖いし、帰ってみたら部屋にヤマネコがいたりと現実離れした展開もいたるところに登場。

女同士の関係を迫られたり、異常な整形手術をしているモデルや、屍体に愛撫する場面なども繰り返され、どんどんシュールなイメージに流れていき、終盤、ジェシーは空のプールに突き落とされる。

しかし、次のカットでまた撮影場面となり、突然、気分が悪くなり、吐いたら目玉が出てきて、体から彼女を追い出さないとと叫んで自ら命を絶つ。吐いた目玉をライバルのモデルが口に含み映画はエンディング。うわあ、グロいけどスタイリッシュ。しかもシュール。

感覚だけでストーリーを追いかけて行く感じの作品で、確かに美しいし、ミステリアスホラーのような空気なのですが、流石に、芸術的なクオリティ満載という映画でした。


「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」
映画としては抜群に面白い。ストーリーの組み立て、クライマックスまでの物語配分、終盤の畳み掛けとラストの処理。しかし、これでいいのだろうか?何か根本的なものが完全に抜けた映画に見える。心がない。それは割り切りで済むものかと思うと、どうにもたまらなくなってきた。これが現代なのだろうか。監督はギャビン・フッド。

ナイロビの街、一人の少女がフラフープをしている。父親に飾りをしてもらい、無邪気に遊ぶ。手伝いをしてパンを売りに行ったりする。

この街の上空にはイギリス軍のドローン攻撃機が飛んでいる。通常は偵察のみの任務で飛んでいるが、武器を供えられている。ある時、ナイロビの一角の建物の中に、重要指名手配のテロ犯人とさらに自爆テロに使うと思われる大量の兵器を発見。軍事本部はこの建物をドローンで攻撃し自爆テロを阻止するという作戦に出る。

そして、照準を合わせ、準備をしたところ、なんと危険区域に冒頭の少女がパンを売りにやって来る。

発車担当の士官も躊躇し、再考を求める。ここからがこの映画の見せ場になる。いかにして少女への被害を減らすか、一方でいかにしてテロ犯人を完全排除するか。一人の少女を犠牲にして自爆テロを防ぐという判断に動く軍本部に、様々な意見が錯綜し始める。

少女を遠ざけるためにパンを買いに行かせた人物は敵側に追われ、さらに無理やりの確率で少女に被害は少ないというターゲットを策定、ついに攻撃する。間一髪で、パンを買いに行った少年が全て買い、少女は持ち場を離れるが、爆発で吹き飛ばされてしまう
ターゲットは破壊したものの、少女は両親に抱き起こされ、テロ軍のトラックに乗せてもらい病院へ連れて行くが、死んでしまう。複雑な思いのまま、イギリス軍本部は散会となる。

なるほど、正しい判断だったのだろう。作戦の指揮をとった上官のさりげないエピソードなどの組み入れも実にうまい脚本である。冷静に考えれば、やむを得ないことだったのに、何か現代の人間が大切なものをなくしてしまったように思えて、少女の死にたまらない涙が溢れてしまいました。

いや、こういう展開で締めくくる最近の映画人たちの心にも疑問が湧いてしまいます。何かが違う。何か人間は変わってしまったのではないでしょうか。辛いですね。