「雨に唄えば」
映画がまだまだロマンチックだった頃の名作をかなり久しぶりに見直した。今となっては、古臭さを感じる演出もあるもの、ジーン・ケリーの名人芸はもちろん、脇を固めるドナルド・オコナー、デビー・レイノルズらの職人芸の如し天才的なダンスシーンを鑑賞するだけでも値打ちがある。これがハリウッド全盛期のミュージカルと言わんばかりの迫力に圧倒されてしまいました。監督はジーン・ケリー、スタンリー・ドーネン。
ドナルド・オコナー、ジーン・ケリー、デビー・レイノルズが「雨に唄えば」を歌う場面からタイトル、チャイニーズシアターで行われるプレミア試写会に集まるハリウッド大スターたちの姿から映画は幕を開ける。時は1920年代サイレント映画全盛期である。颯爽と登場したのはドン・ロックウッドとその恋人と言われているリナ・ラモント。しかしドンはリナを恋人と思っていなかった。ステージでの挨拶でドンはこれまでの自分を回想して語る。
ドンとコスモはハリウッドへ出てきたがなかなか目が出なかった。たまたま代役したスタントの役でドンが気に入られ、コスモをマネージャーに映画の仕事に就くことになる。そんなドンに映画会社の社長シンプソンは、次回作の主役で当時大スターだったリナの相手役に選ぶ。そしてドンはリナと共にスターへの道を登っていく。試写会の後、通りでファンに囲まれたドンは、通りかかった一台の車に飛び乗る。運転していたのは駆け出しのイベント役者キャシーだった。彼女は映画役者を俳優じゃないとコケにしてドンをシンプソンのパーティに送り届ける。
ところがパーティの会場、運ばれたケーキから飛び出してきたのはキャシーで、ドンは盛り上がってしまう。そこへリナが現れ、キャシーとドンの仲を疑うが、キャシーはドンにパイをぶつけようとしてリナにぶつけてしまいその場を去っていく。その頃ワーナーブラザーズは「ジャスシンガー」でトーキー映画に進出してきた。最初はバカにしていたシンプソンらだったが「ジャズシンガー」は大ヒットし、焦り始める。キャシーはあのパーティでの失態でリナにクビにされたが、映画の端役で出演していた。
シンプソンは、次回作「決闘の騎士」をトーキーで作り始めるが、リナの声が最悪で、このままでは成功はおぼつかなくなる。そこでドンらは撮影中の「決闘の騎士」をミュージカルにする事を提案、歌とダンスシーンを追加することにし、映画も「踊る騎士」と改名する。さらにリナの悪声をカバーするためにキャシーに吹き替えを要請する。しかし、キャシーをこれからも売り出すためには今回限りということにしリナにも内緒で撮影が進む。
ところが映画が完成して試写会が決まった頃、吹き替えを知ったリナはシンプソンに契約書に基づいて、キャシーは今後も自分の声だけを担当させることに同意させる。試写会は大成功、リナがステージで挨拶を始めるが、スクリーンの声と違うリナの声に客席は大ブーイングとなる。さらに客は歌の披露を迫ったため、ドンやシンプソンらは、カーテンの後ろでキャシーに歌わせることにする。そしてリナの歌が佳境にな行った途端後ろのカーテンが開き全てが明らかになる。恥をかいたキャシーはステージを降りて逃げるように出て行こうとするが、ドンが呼び止めて抱き寄せてキスをし、新しいスター誕生を祝う。「雨に唄えば」の看板の前でドンとキャシーが口づけをして映画は終わる。
ミュージカル映画に変更した後、カフェを出たドンが雨の中を踊る名シーンのみならず、ドンが考えた映画のクライマックス「ブロードウェイメロディ」を延々と巨大セットで踊りまくる場面、前半、ドナルド・オコナーらと絶妙のコンビで踊る場面など、ずば抜けた個人芸を見せられる映像はもう圧巻。今となってはこういう個人芸を見せるミュージカルとは違う形に変わったものの、やはり名作は名作だと改めて感心してしまいました。
「白雪姫」(実写版)
もはやディズニーは夢の工場ではなくなったなあと実感。これを子供向けに作ったのだとしたらアホだと言うほかない。期待はしていなかったがその通りというのも寂しい限りの映画だった。ディズニーの長編アニメ第一作「白雪姫」のラストシーン、霞の彼方に見えてくる城の場面はいまだに自分にとってアニメシーンの傑作だと思っているので、とにかく今回の実写版はがっかりの極みだった。監督はマーク・ウェブ。
「白雪姫」の本が開かれ、かつてある王国に立派な王様とお妃がいたが、子供がいなかった。そんな二人にある日女の子が授かる。雪のように白い肌ではなくて雪の日に生まれたから「白雪姫」と名付けられる。と、いきなりのオリジナル改変。やがて白雪姫は成長したが、母が病気で亡くなる。王が後添えに迎えた女王は、自身の欲望だけに生きる女で、王を騙して戦に行かせ、結局王は亡くなってしまう。
女王は魔法の鏡に向かい、世界でいちばん美しい女性は誰かと尋ねていた。ところが、白雪姫が成長するに伴い、鏡の答えは女王から白雪姫に変わってしまう。女王は白雪姫を召使のように酷使し、屋根裏に住まわせてしまう。そんな時、一人の青年ジョナサンが食糧を盗みに城に忍び込んで白雪姫に見つかってしまう。白雪姫は城門に繋がれたジョナサンを解放してやる。女王は白雪姫を亡き者にするべく、猟師に森の奥に白雪姫を連れて行き殺すように命令する。
森に着いた猟師は、結局、白雪姫を殺せず森の奥に逃げるように言う。白雪姫は森の奥へ逃げ、穴に落ちて水流に流されて奥深い森に辿り着く。そこで動物と仲良くなり、動物に導かれるままに一軒の小屋に辿り着く。そこは七人の小人たちの家だった。仕事を終えた小人たちは白雪姫を見つけるが、白雪姫の優しさに絆されて仲良くなる。そこへ、ジョナサンたちが現れる。ジョナサンらは森の奥でかつての王に仕える集団として反撃の機会を探っていた。
白雪姫が生きていると知った女王は森の奥へ手下を派遣し、ジョナサンらと戦う。しかし白雪姫は動物達に守られて難を逃れる。ジョナサンは捕まったが、白雪姫にもらったペンダントをしていたために、女王に、白雪姫の居場所を見つけられてしまう。女王は老婆に変身し、毒林檎を持って小人たちが留守の時に白雪姫を訪ねる。そして、白雪姫の父を助けにいくように言い、リンゴを食べさせるが、白雪姫が倒れる寸前、白雪姫の父も自分が殺したと自分が女王である事を明かす。七人の小人たちは動物たちに言われて慌てて戻ってきたがすでに白雪姫は死んでいた。そこへ、牢屋を抜け出したジョナサンが戻って来る。そして白雪姫に口づけをすると、白雪姫の魔法が解けて目を覚ます。
白雪姫はジョナサンたちと城を目指す。そして、白雪姫は庶民を率いて女王の前に現れる。出迎えた女王は兵士に白雪姫を殺すように命令するが、白雪姫が兵士の一人一人の名前を呼びかけて、兵士たちの心を解き放つ。女王は鏡に向かって再度訪ねるが、鏡は、女王は上部は美しいが白雪姫は心が美しいと答えたので、鏡を割ってしまう。鏡の破片が女王を包み女王は鏡の中に取り込まれてしまう。白雪姫は女王となり城を治め、平和になったと語られて映画は終わる。あれ?ジョナサンは?と言うエンディングである。
夢を壊すなと言いたい。今時のお話なら女は強くて、人の上に立つことも間違いではないと言いたいのが鼻につくほどに迫ってくる作品で、ミュージカルの楽しさも冒頭の数分だけで、白雪姫が森に入ってからは間延びしてしまってしんどいだけ。あまりと言えばあまりの改変に開いた口がふさがらなかった。