くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師」「ぼくらの居場所」

ボンヘッファーヒトラーを暗殺しようとした牧師」

例によってのナチス物ですが、映画的な美しい映像作りと、時間を前後させての込み入った作劇がなかなか面白かった。ただ、主人公の行動の核が今ひとつ迫ってくるドラマがなく、ストーリーはわかるのですが、物語に今一つ迫力がなかった。監督はトッド・コマーニキ。

 

主人公ディートリッヒ・ボンヘッファーの少年時代の顔のアップから、兄と戯れる姿に移って映画は幕を開ける。場面が変わると終戦間近のドイツでナチスに捕えられた若き牧師ディートリッヒが、バスに乗せられて輸送されていく場面となる。間も無くして第二次大戦、ディートリッヒの兄は戦地へ向かうが、しばらくして戦死してしまう。バスに乗るディートリッヒがナチスに捕えられバスで輸送されるに至る物語が語られる。

 

牧師になるためにアメリカで勉強し、有色人種差別を目の当たりにするディートリッヒは、人々の平等に立ち向かう意識が強くなっていく。そんな頃、母国ドイツではナチスが台東し、ユダヤ人への差別政策が過激になっていく。ドイツに戻ったディートリッヒだが、ドイツの教会がナチス国教に蝕まれている実態を目の当たりにし、反ナチスを全面に出した説教を行いナチスから目をつけられる。心配したレジスタンスのハンスは、ディートリッヒを英国に逃し、英国でスパイ活動をして情報を集めるように勧める。

 

一度は英国に行ったディートリッヒだが母国の状況は変えられないと判断し、危険を承知でドイツに戻ってくる。そこでハンスから、ヒトラー暗殺計画を告白される。ハンスの同士ルドルフやディートリッヒらは、ナチスに傾倒したと偽りの態度を見せてヒトラーに近づこうとする。そしてやがてヒトラーの側近の地位を得たルドルフは体に爆薬を撒き、ヒトラーに近づくが、なぜか見破られて暗殺計画は失敗する。

 

ハンスやディートリッヒは収監され、バスで移動させられるが、連合軍が迫ってきていた。ある日、途上の民家に集められたディートリッヒらに、彼らをあわれむナチスの看守から、翌朝処刑されるから、今夜脱出するようにとディートリッヒに提案してくる。しかし、ディートリッヒは拒否し、翌朝絞首刑になる。その二週間後、連合軍が侵攻してきて、間も無くヒトラーは自殺、戦争が終わると言うテロップが出て映画は終わる。

 

絵作りは美しいのですが、ドラマ部分がやや希薄で、主人公がたどる波乱の物語が迫ってこないのがちょっと残念な映画でした。

 

 

「ぼくらの居場所」

これは良かった。というより単純に良かったと言う表現はよくないかもしれません。多民族、貧富の差、など様々な問題を抱える登場人物の姿を、スカボローというカナダの一都市を舞台に描くヒューマンドラマですが、登場人物は全て、どちらかというと社会の底辺に位置せざるを得ない様々な境遇にある。その現実を、ギリギリまで人物に近づいたカメラワークで徹底的に描いていく。小さなカットの中に、厳しい現実を垣間見せる映像演出も見事で、あまりにも切なくて悲しいドラマの一方で、子供達の未来へ必死で向かっていく姿に勇気づけられたりする。そんな子供達を見つめる母親や教育センターの教師の姿にも心打たれるものがある。映像作品としても優れているけれど、鋭いメッセージを訴えかける一方で人間味あふれる展開も素晴らしい作品だった。監督はシャシャ・ナカイ、リッチ・ウィリアムソン。

 

秋、小太りのフィリピン人のビンがベッドで母親に起こされる場面から映画は幕を開ける。母のコリーと二人暮らしらしく、父親は精神疾患らしく、時々暴力を振るうようで、その父親から逃げてきたらしい。コリーは仕事を探す中、ネイルサロンの仕事にありつく。発達障害を抱える弟のジョニーと暮らす先住民の血を引くシルヴィーは、母エドナと診療所にやってくる。ジョニーを診てもらうために来たが、結局まともな診断を受けられずに追い返される。家賃滞納で追い出されようとしているローラの母親は、夜逃げするようにローラを連れて家を出る。しかしローラを放って姿を消してしまい、仕方なく父親がローラを引き取る。

 

そんなそれぞれは、教育センターと呼ばれる施設でソーシャルワーカーのヒナと暮らすようになる。ヒナもまたアラブ系の女性でヘジャブを身につけている。ビンとシルヴィーは親しくなりお互い親友と呼び合うようになる。父に連れられてやってくるローラは言葉を話さず、ヒナは、アルファベットのおもちゃを預けて言葉を探してくるようにというゲームをやらせる。

 

ハロウインでローラは背中に羽をつけたりして仮装、ビンもシルヴィーも仮装して盛り上がる。ジョニーは何かにつけて電気のスイッチで遊び周りを困らせるがヒナは暖かく接する。クリスマスが近づく日、教育センターも冬休みに入ろうとするが、ヒナがローラとしていたアルファベットのゲームで、ローラはHUGの言葉を発してヒナを喜ばせる。施設内の食べ物を皆んな分けて持ち帰るがローラの父はそれを拒否しローラを連れ帰る。

 

やがてクリスマス、ローラの父は食べ物を手に入れられず、子ども食堂のようなところに行くが、その日は拒否され、ドラッグストアで万引きしようとするが店長に見つかり、悪態をついて飛び出してしまう。その頃、ビンはコリーと教会にいたが、ビンはローラが走り去る姿を見てしまう。近くに住む裕福な家庭では普通のクリスマスを見せつけるように窓を開けていた。ビンとコリーが外に出るとサイレンに気がつく。

 

場面が代わり教育センター、ローラは自宅が火事になり亡くなっていた。ヒナやビン、シルヴィらは先住民の儀式でローラを送り出してやる。そんなヒナに、教育センターを取り仕切る女性はあまりのめり込まないようにと忠告に来てヒナに非難される。やがて春がやってくる。ジョニーは相変わらずだったがエドナはどうして良いか悩んでいた。ヒナは知り合いの医師にジョニーを診て貰おうと提案しエドナとそこへ向かう。診察の結果、ジョニーは自閉症で、今後も回復の見込みが少なく、両親が亡くなった後のことまで今から考えておくようにと忠告される。

 

教育センターで、エドナはひたすらジョニーと会話して、少しでも成長できないか努力するもなかなか成果が見えない。ところが、ある日、ジョニーはクラッカーの絵をエドナに見せて初めて自らの意思でクラッカーをせがんできた。その姿にエドナもヒナも大感激する。

 

年度末の余興の発表会、ビンは間も無く遠方の学校へ転校することが決まっていた。コリーは、今まで貯めたチップと、お気に入りのブレスレットをお金に変えてビンの最後の舞台で歌う歌のためにカラオケの機械を手に入れる。発表会のステージで、熱唱するビンの姿にさまざまな場面が蘇って映画は終わる。

 

路上で絵を描いている黒人青年、ビンやシルヴィと知り合う娼婦のような女性、そのほかほんのわずかに登場する様々な人物への細かい演出が素晴らしく、物語は非常に辛く切ないものの、映画のクオリティは素晴らしい。今にも触れてしまうのではないかと思えるほどカメラが人物に近づいたクローズアップも見事で、見終わってなんとも言えない感動と、考えさせられる何者かが心に残る一本でした。

 

ぼくらの居場所

ぼくらの居場所

  • kosuke kamishin
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