くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「ほどなく、お別れです」

「ほどなく、お別れです」

全く期待していなくて、贔屓の浜辺美波目当てだけで見にいったのですが、思いの外、良くできた映画でした。脚本が実に巧みで、配役が絶妙に上手い。要所場面ごとに芸達者を配置してしっかりと演技を引き出し、次のエピソードに繋いでいく語りがとにかく素晴らしい。オープニングからラストまで泣き通しで見てしまいました。決して一級品の出来栄えの作品とは言いませんが、商業映画としての仕上がりは見事だったと思います。監督は三木孝浩。

 

老婆と幼い娘が散歩していて、娘が手を離れてしまい、場面が変わると知人の葬儀に向かう清水美空がバスの中で、就活の不合格通知を読んでいる場面から映画は幕を開ける。葬儀場で焼香を済ませた美空が帰ろうとすると、お腹の大きな女性と出会う。その女性はこの葬儀の故人柳沢玲子だった。美空は幼い頃から、亡くなった人が見えた。玲子は美空に、棺の中にクリーム色のカバンに入れているものを納棺して欲しいと伝える。

 

美空の様子を見ていた葬儀プランナーの漆原礼二は、美空から話を聞き、玲子の夫亮太にアドバイスとして伝える。カバンの中に入っていたのは、玲子が亡くなる前日亮太と一緒に準備した赤ん坊のオムツだった。全てに絶望していた亮太は、玲子の思いを知り、玲子を送り出す心の準備を整えていく。

 

美空の能力を知った礼二は、美空を、礼二が勤める葬儀社坂東会館にスカウトする。最初は躊躇していた美空だが、祖母花子の言葉もあり、とりあえずインターンとして坂東会館で働く事にする。

 

次に美空が出会ったのは、幼くして娘を亡くした久保田夫婦の葬儀だった。美空は死んだことの自覚がない娘に、両親のことをあちらの世界で先に行って待っているようにと諭し、娘が生前、母にしてもらった三つ編みをしてもらい、悲しむ母に貸してあげると言った可愛がっていた人形を託す事で、見送る決心をつかせる。

 

続いて、美空が立ち会ったのは、借金を作った夫と別れて一人で二人の子供を育てた母桂子の葬儀だった。息子の長野翔一は、勝手に出ていった父親を憎んでいたが、母は、ずっと父と会いたがっていたことを美空は知る。父が出て行ったのは、離婚して自己破産し、妻や息子を借金から守るためだったと知り、礼二は、父が暮らす霧ヶ峰まで遺体を搬送することを提案する。そして、この家族も無事、見送る決心をつける。

 

漆原礼二の妻遥は、六年前に事故で亡くなっていた。その時に、自分は絶望の底で何もできなくなったため、遺族に寄り添う仕事につきたいと今の職場に入ったのだという。

 

そんな中、美空の祖母花子が入院、両親から、余命わずかだと告げられる。美空には、生まれた日に亡くなった姉みどりがいたが、花子と散歩していて川に落ちて亡くなった過去があった。冒頭のシーンである。間も無くして花子は他界する。美空の母美波は、表立ってはいないが花子を恨んでいたと呟く。美空は、花子から、自分もずっと後悔していたが、みどりの事を美波と話したかったと伝える。

 

美空は両親に、故人の姿が子供の頃から見える事を初めて告白する。礼二は、花子の棺を、みどりが亡くなった河原に運び、そこでお別れをするべきだと提案、美空達家族が河原で花子に最後の別れを言い、みどりもまたその場で花子と共に旅立っていく。礼二は美空に、正式に坂東会館の葬儀プランナーになったと告げて、美空は初めて、旅立ちの言葉を遺族に告げる。

 

姉みどりも旅立った事で、美空の能力は失われたかもしれないと礼二に告げる美空だが、礼二は、遺族に寄り添えるようになっているからと応えて映画は終わっていく。

 

家族に死を迎えた遺族の悲しむ姿のみを淡々と描くのではなく、それぞれに、様々な姿を表現していく事で、旅立つ故人への思い、死に対する本当の悲しみと、遺族の明日への希望の旅立ちを丁寧に描いた脚本が見事で、原作の良さもあるかもしれないが、物語の構成が抜群のリズムを生んでいる。しかも、要所要所に演技力のある配役を行った事で、映画が薄っぺらくならなかったのが功を奏して、いい作品に仕上がっていました。