2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧
「ベルトルッチの分身」 ベルナルド・ベルトルッチ監督の初オールカラー作品で、いままでソフトの発売もなかったフィルムが公開された。映画が始まると、カメラが一本の木を映し、引いてウィンドウの中に入ると喫茶店、一人本を見る主人公ジャコブのショット…
まず第一に、非常におもしろかった。「第一部 太陽旗」「第二部 虹の橋」の二部構成ながら4時間36分という長尺。にもかかわらず、ぜんぜん飽きることなく、ラストシーンまでスクリーンに釘付けになるのである。物語の展開がスピーディであることもそうだ…
紛争の耐えないコンゴ民主共和国を舞台にした、一人の少女の残酷ながら、人間の生と死に焦点を当てて見事に映像として描いた、アカデミー外国語映画賞ノミネートの作品を見てきました。物語の展開は非常に幻想的なショットがたくさん挿入されているのに、あ…
「ジャッキ・コーガン」 映像と音の使い方がおもしろい、ちょっとしゃれたモダンな作品で楽しめました。監督はアンドリュー・ドミニクです。映画が始まると、タイトルと映像が交互に、しかも音がぷつりと切れては出るという演出。一人の男フランキーが手前か…
「スカイラブ」 その寿命を終えて、地球に落下してくる人工衛星「スカイラブ」をその題名に選んだ、とってもファンタジックな群像劇です。列車に乗り込んでくる両親と子供二人の四人のふつうの家族。指定された席が二人ずつのバラバラなので四人掛けのいすを…
「ベルヴィル・トーキョー」 主人公のマリーの夫ジュリアンが列車に乗るところから映画が始まる。ところがその直前、ジュリアンが行き先のベネチアに愛する人がいると告白。一人列車に乗ったマリーのショットでタイトルがかぶる。マリーは妊娠している。ジュ…
「カルテット!人生のオペラハウス」 ダスティン・ホフマン監督作品として、ちょっと気になる一本をみました。これがなかなかの映画でした。傑作とまではいかないけれど、小品ながらちょっとした秀作でした。 ストーリーテリングが実にうまいのです。映画が…
「大脱走」 テレビを含めると、一体何回見ただろうという名作を、久しぶりに大スクリーンで見ることができました。かなり映画スレしてきている私でも、やはりおもしろい。しかも、その緻密に練り込まれた脚本のすばらしさに、改めて恐れ入りました。スローと…
甘酸っぱい青春の一瞬を、感受性豊かな感性で、詩的に映像にした映画でした。監督は「あの夏の子供たち」のミア・ハンセン=ラブ。たわいのない物語で、特にテクニカルな映像も見られない。強いて言えば、フランス映画によく見られる青、赤、黄色三色を時折…
「リンカーン」 今年のアカデミー賞をにぎわせた最後の一本、スティーヴン・スピルバーグ監督の「リンカーン」をみる。確かに一本筋の通った演出で、丁寧かつしっかりとしたテンポで物語を語っていくのはさすがにスピルバーグの円熟実を感じる。しかし、リン…
「桜並木の満開の下に」 ほとんど、自主映画のレベルの作品だった。一つ一つのシーンがやたら間延びする。果たして二時間を超える内容が脚本に描かれているのかと思えてしまうのです。しかも、演技指導が十分になされていないのか、演技自体も素人のような台…
「天使の分け前」 最初はちょっと嫌悪感が漂うムードで始まるのですが、途中からどんどんよくなって、次第にちょっとしゃれたコメディになってスクリーンに引き込まれ始める。そして、ラストシーンに至っては、その小粋なエンディングににんまりして劇場を後…
「舟を編む」 「川の底からこんにちは」の石井祐也監督作品なので期待の一本でした。辞書を作るという、あまり知らない世界を、さりげなくサスペンスフルに盛り込んで、淡々と静かに進む緩い作品でした。悪くいえば普通の映画だった気がするし、前半の三分の…
「ベラミ 愛を弄ぶ男」 モーパッサン原作のスキャンダラスな物語、その配役が抜群にすばらしい。美男子で、男を武器にしていく主人公ジョルジュにロバート・パティンソン、金持ちだが素直でかわいらしい、最初の女性になるクロチルドにクリスティーナ・リッ…
「紙ひこうき」 アカデミー賞の短編アニメ賞を受賞した作品で、「シュガー・ラッシュ」と併映されていたのでみました。モノクロームの画面で、ほんのささやかなラブストーリーを、紙ひこうきを交えてファンタジックに描いた作品で、ほのぼのとした素朴な感動…
「君と歩く世界」 事故で両足を亡くした女性の感動の人間ドラマかと思っていたら、何の、もっと奥の深い物語でした。しかもマリオン・コテイヤール扮するステファニーはどちらかといえばわき役に近く見えるのです。監督はジャック・オーディアール。映画が始…
「タワーリング・インフェルノ」 なつかしい、なんと41年ぶりにスクリーンで見直した。 あのグラース・タワーが炎に包まれる。ポール・ニューマンが、スティーヴ・マックィーンが命を懸けて人々を救出していく。アメリカ映画がシンプルでとにかくおもしろ…
「ヒッチコック」 映画ファンにとっては、あまりにもビッグネームとなる映画監督の物語である。その偉大さ故に何百冊、いや何千冊以上もの研究書や実生活を描いた本が存在する。しかし、ひとたびスクリーンの中でその人物を描くとなれば、それはあくまでフィ…
「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」 ツイ・ハークが製作をつとめた香港アクションホラーの傑作をようやくスクリーンで見ることができた。いやぁ、素直におもしろかった。これが香港映画の醍醐味である。ストーリーの雑さ、脚本の荒さはそっちのけでスピ…
レオス・カラックス監督13年ぶりの新作は、シュールなドラマというわけでもなく、映像詩でもなく、といって具体的なわかりやすいドラマがあるわけでもない。画面から何がしかのストーリーやメッセージも感じ取りにくい、一種の難解ながら、なんとも不思議…
「シャドー・ダンサー」 ちょっと期待していたのだが、ふつうのサスペンス映画でした。というより、シリアスすぎて重々しい。ミステリアスなおもしろさよりもIRAとMI5との確執、英国とアイルランドの溝を背後に淡々と描いていくために、とにかく全体が…
「ユンポギの日記」 大島渚が韓国で撮ってきた写真を写しながら「ユンポギの日記」という韓国幼年の詩を背後に流すいわゆるフィルムドキュメントである。描くのは朝鮮戦争直後の韓国の孤児たちの現状であり、そこにかぶるのは日本によって支配され、蔑まれ、…
「白昼の通り魔」 ストーリーだけを語るといたって単純なのだが、恐ろしいほどにカットが細かい上に時間の前後、空間の前後、極端なクローズアップからの俯瞰の遠景などテクニックの限りを尽くしているために実に込み入った複雑な作品として完成されている。…
「日本の夜と霧」 製作されたのが1960年、公開四日目で上映中止になった問題作であるが、大島渚監督の先を見据えた辛辣な視点に頭が下がるすばらしい一本でした。物語のメッセージ性のみならず映像作品としてもずば抜けたオリジナリティと実験性にあふれ…
「太陽の墓場」 二年前に見た作品の再見であるが、さすがにすばらしい傑作である。極端な顔のクローズアップ、這うようにパンするカメラ、長回しによる緊迫感を絶妙のリズムで組み合わせていく大島渚の演出が秀逸。汗くさく、むせ返るような釜ヶ崎のドヤ街に…