くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エル・トポ」

エル・トポ

カルトムービーの頂点というふれこみで、実に40年ぶりの公開ということでしたが、正直、全くついていけませんでした。映像は監督の感性のなせるままに何の動きの連続性もなく映し出されてきます。血しぶきや動物たちのグロテスクな死骸などが目の覚めるような真っ青な空と広々とした荒野を背景に描かれる画面は非常にシュールかつアートなイメージです。

「創世記」「預言者たち」「詩編」「黙示禄」と区切られ、聖書やキリストの宗教感をテーマに描いているのはわからなくもありませんが、ストーリーが追えない上に、登場人物の区別が付かない。そのため、最初の三分の一の四人のガンマンをひとりづつ撃ち殺していく展開はついていけるのですが、その後ガンマンであるエル・トポが女たちに裏切られ撃たれ重傷を負う展開で、死んだものと思ったので後がつながらなくて苦労しました。

次の展開に移ると、洞窟の中で奇形人間たちがすみ、神とあがめられて眠る一人の金髪の男エル・トポ、その彼がよみがえって坊主頭になり小人の女と洞窟から町へつながるトンネルを掘るために奮闘する姿姿が描かれますが、最初のガンマンと別人と思ってしまったためエピソードがつながらず、必死でした。

そして終盤、つながったトンネルを通って奇形人間たちが町に飛び出すも、町の人々によって撃ち殺され、悲嘆にくれたエル・トポの、前に、かつて捨てた息子がガンマンとなって現れます。すべてがむなしくなったエル・トポは油をかぶって炎にまみれ死んでいく。ガンマンとなった息子がこびとの女を馬に乗せ去っていきます。

タル・ベーラ監督の映像に通ずるかと思いきや、完全なオリジナリティの世界で、グロテスクと美学が混同された不思議な世界と宗教感をにおわせるせりふがちりばめられ、独創的な映像世界が展開する様はまさにカルトの頂点といえます。