くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」「いつか、いつも…いつまでも。」

「MONDAYS このタイムループ上司に気づかせないと終わらない」

大傑作ではないんだけれども、とってもかわいい小品なのだけれども、楽しい。こういう素直に感動させようとノリとツッコミで走っていく映画は大好きです。粗もあるのですが、役者陣がなかなか個性を振りまいていて楽しめました。監督は竹林亮。

 

彼氏に仕事でデートできない旨を電話している吉川の場面から、とある月曜日の朝、泊まり込んだ会社のオフィスで吉川は目覚める。小さな広告会社に勤める吉川は、兼ねてから憧れの広告会社に誘われることになり転職を決意している。今回の仕事をけじめにしようとして必死で仕上げているのだが、なかなかうまくいかず、そんな時、後輩二人から、この一週間が繰り返されていると告げられる。そして、窓にぶつかる鳩を合図にして自分たちのいうことを信じてほしいという。

 

タクシーの事故、部長の親父ギャグ、クライアントとの駆け引きなどで明け暮れ一週間が過ぎた吉川は、月曜の朝、会社で目覚めると、鳩が窓にぶつかる。後輩の言葉が正しいとわかった吉川は彼らとどうやってループを抜け出そうかと考える。どうやら部長が腕にしているガラスの腕輪が良くないと判断し、部長に信じてもらうために、下っ端から順番にタイムループのことを信じさせていき、何とか部長にも伝わり腕輪を破壊するのだが、やはり鳩が窓にぶつかる。

 

原因が他にあると考えた吉川たちの前に部長の補佐で古株の女性社員が、実は誰よりも早くタイムループに気がついていたことを告白する。そして、たまたま部長の机の中にある部長の若き日の夢である漫画に原稿を仕上げて編集者に送ればタイムループを抜けられると判断する。

 

部長に黙って原稿の仕上げをする社員たちだが、一方で吉川は転職の夢を捨てていなくて他のメンバーと確執が生まれてしまう。しかし、転職先の人たちとのやり取りの中、仲間の大切さを思い出した吉川は漫画原稿完成に協力する。やがて原稿は完成、ラストを部長に仕上げてもらうべく依頼し、最後まで書き上がるが部長が編集者に送ることを躊躇してしまう。

 

熱心な説得をタイムループの中で繰り返す社員たちに、部長はとうとう原稿を編集者に送る。そして月曜日、ついにタイムループは止まり、みんなは前に進み始める。吉川は今の仲間の大切さ、部長の思いやりを感じて転職を断る。社員それぞれは、タイムループを抜け出す以上にもっと前に進む大切さを身をもって知ることになって映画は終わる。

 

テーマは、人生のことや生き方、仕事、恋人などなど盛り沢山ですが仰々しい押しつけの展開や演出を施さず、軽いコメディタッチで描いていく流れが心地よくて面白い。決して秀作とか傑作ではないかもしれませんが程よく凝縮された質の良い一本だった気がします。

 

「いつか、いつも…いつまでも。」

一昔前の空気感の楽しいホームコメディでした。起承転結の起の部分をすっ飛ばして物語が始まるのと、コメディのテンポが微妙にズレた演技演出に最初は入りきれないのですが、話が進むとみるみる映画の味が出てきて、次第に不思議な世界に取り込まれていきます。こういう展開の映画久しぶりに出会った感じで本当に微笑ましく感動してしまいました。監督は長崎俊一

 

海辺の診療所、祖父英男、孫の俊英が今日の診療を終え、看護師たちが挨拶するところから映画は幕を開ける。そこへ、近所の叔母さん秋子は一人の女性亜子を連れて飛び込んでくる。俊英は亜子を見て思わず目を奪われる。それは友人の写真に写っていた憧れの女性と瓜二つだったからである。

 

あれよあれよという間に亜子は俊英の家で食事をするが、酔っ払って意識を無くしてしまう。俊英が亜子の部屋に連れていくがそこには精神安定剤睡眠薬が散らかっていた。酒と薬の相乗効果で過剰反応したのである。不動産屋に二重契約で亜子は今の部屋を追い出されることになり、亜子の行動を心配した英男の進言で亜子はしばらく俊英の家に暮らすことになる。何かにつけて騒動を起こす亜子に翻弄されながらも、じいさんの英男、お手伝いさんのきよさん、俊英、亜子の四人はいつの間にか家族のように毎日を送るようになる。

 

実は俊英が憧れた女性は亜子の妹であることが判明、俊英にはまり子という女医の元恋人がいたが今は疎遠になっていた。亜子は二年前にやけになって結婚をしたが夫は海外に長期出張していて精神的に不安定になり、たまたまこの街にやってきたのだった。亜子は漫画家を目指していて、何度かコンクール応募したが今一歩のままだった。亜子は次のコンクールの発表があるまでという期限まで一緒に過ごすことになる。

 

映画は、ドタバタコメディのような展開でストレートに行動する亜子や早とちりする秋子叔母さん、元カノのまり子さんらを交えてアットホームに展開していく。亜子が作る料理は俊英たちを温かくして、きよさんも癒された日々を感じる。しかし、亜子の応募した漫画は結局落選、落ち込む亜子だがいつの間にか心を引かれていた俊英は亜子を優しく抱きしめる。

 

そんな時、亜子に夫から電話が入る。突然の別れにきよさんも英男も、もちろん俊英も気持ちが揺らぐものの、亜子は帰っていく。帰り際きよさんが、必ず帰っておいでと懇願する姿にいつの間にか胸が熱くなってしまいます。そして季節が移り変わり、夏が来る。きよさんが俊英のところに飛び込んでくる。亜子が帰ってくるという。亜子は両親と絶縁し、大量の荷物を俊英の元に送りつけてきた。俊英は亜子を迎えに車を飛ばすシーンで映画は終わる。

 

亜子が可愛がる猫、さりげなく飾るたんぽぽ、庭先の蟻地獄、ネズミ、亜子が作るきんつば、カレー、しゅうまい、などの料理、俊英が東京土産に買ってくる東京まんじゅうなどなど食べ物や小道具が実にうまく映画を彩っていきます。たわいのないホームコメディですが久しぶりにこういうタイプの映画を見た気がします。叔母さんをはじめコメディタッチのセリフのテンポが微妙に素人くさく聞こえるのですが、その新鮮さと忘れていたほのぼの感にどこかあったかくなって映画館を出ることができました。いい映画でした。