くらのすけの映画日記

大阪の社会人サークル「映画マニアの映画倶楽部シネマラムール」管理人の映画鑑賞日記です。 あくまで忘備録としての個人BLOGであり、見た直後の感想を書き込んでいるので、ラストシーンまで書いています。ご了承ください

映画感想「Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり」「邪悪なるもの」「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」

「Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり」

非常にクオリティの高い完成された映画ですが、いかんせん暗い話です。社会の底辺で生きる兄弟のあまりに切なく残酷な現実をこれでもかと描いていく筆致に引き込まれるのですが、たまらなく寂しくなるクライマックスに胸が熱くなってしまう。ラストでわずかな希望を見せるので、救いこそあるのですが、全体に辛い映画だった。監督はジン・オング。

 

裏社会で、正規に就労できない人たちの仲介をしているアディらの姿から映画は幕を開ける。仲介料を手にして、段取りしている最中、警察が踏み込んでくる。逃げ回る中、屋上から落ちて死ぬ人間まで出るが、アディは出生証明をもっていたので釈放される。最初から仲介人の元締めが金だけ手に入れるために警察に通報したらしいとアディが聞かされる。アディの兄アバンは耳が聞こえないが真面目に低賃金ながら市場で働いていた。二人の世話を中年の女性?マニーが住まいや仕事の世話をしていた。

 

二人の身分証明書を作成するために慈善団体のジアエンが奔走していたが、両親も見つからず、正規の出生証明もない中で苦心していた。アバンはアディに真面目に働くように勧めるがアディは受け入れなかった。アバンにはミヤンマー人の恋人がいたが、彼女は難民申請が認められて、この地を去っていくことになる。アバンはプレゼントにスカーフを準備していたが渡せなかった。アディにも愛人はいたが、ここにいても将来がないと田舎に帰って結婚すると去っていく。

 

そんなある日、ジアエンは、アディらの父親を見つけたとアディの家を訪ねて来る。しかしどういう事情かアディは父親を恨んでいるから会いたくないので帰るようにジアエンに言う。しかし、執拗に勧めて来るジアエンと揉み合いになった際、ジアエンは頭を打って倒れてしまう。血みどろの姿に狼狽えたアディは、部屋を飛び出し、戻ってきたアバンと会う。事情を聞いたアバンが部屋に入ると血だらけのジアエンがいた。しかしジアエンは生きていた。そこへ、アバンの職場の同僚がおかずを届けにドアの外に来た。アバンはこの状況を見せないためにジアエンの口を押さえるが、そのせいでジアエンは死んでしまった。

 

アバンは荷物を持ってアディと街を出るため長距離バスに乗るが、途中の休憩所でアバンが水を飲んでいてバスが動いたのに気づかず置いていかれる。しかしアディもバスを降りていた。二人は安宿で一夜を明かすが、アディが目を覚ますとアバンはいなかった。アバンは自主するために警察に行ったのだ。ニュースで聞いたアディはアバンに会いにいくが、アバンは、もう兄弟ではないから来るなと告げる。

 

アディは弁護士に説明に行くも会ってもらえず、アバンは有罪が確定してしまう。マニーもこの地を去る予定が立って来るがアディたちのことは気にかけていた。アディは真面目に働くようになり、月日が経つが、アバンは留置所で食事を取らなかった。アバンは、面談に来た僧侶に、自分は死にたいと叫ぶ。そんなアバンに看守の警官は、命ある限り生きろと説得し、アバンは気持ちを入れ替えて食事を始める。

 

アディは順調に仕事を続けるが、時が経ち、かつてアバンに食事を勧めた看守は所長になっていた。ある朝、一通の通知が届く。アバンの死刑執行の通知だった。所長はアバンに、最後の三日間誰に会いたいかというメモを渡す。アバンはアディを希望し、最後の再会をする。二人は幼い頃からしていたお互いの頭でゆで卵を割る遊びをして卵を食べる。やがて、アバンの処刑が行われた映像描写がされ、アディもマリーも悲しみに暮れる場面から、アディは、食堂で働く父のもとを訪れ言葉を交わす寸前で映画は終わる。

 

アバンの処刑の瞬間、アバンが恋人に買ったスカーフが風で飛び去ったり、留置所の外でアディが空を見上げたり、映像表現が映画的に優れていて、非常に完成された演出が繰り返される見事な作品で、クオリティは一級品ですが、いかんせん暗い映画だった。

 

「邪悪なるもの」

ホラー映画はエスカレートするばかりで、主人公たちの救いもなく、絶望の中で終わるパターンが頻発するようになってきた感じです。この作品、ひたすら悪い方へ悪い方へ進む一方で、グロテスクに恐ろしい。それゆえか画面に釘付けになってノンストップに見入ってしまう恐怖映画という感じだった。正直ぐったりしてしまいました。監督はデミアン・ルグナ

 

アルゼンチン、深夜、ルイスの農場のそばに暮らすペドロとジミーが銃声を聞いて、銃を持って出ようとする長回しのオープニングの場面からは映画は幕を開ける。翌朝見に行ったほうが良いということで、夜が明けてから森に入っていってバラバラにされた死体を発見する。傍に儀式に使うような器具が残っていて、ルイスの農場で働くマリアの家に行く地図があった。

 

ペドロたちはマリアの家に行くと、マリアは息子のウリエルが悪魔に憑かれて腐敗者になっているから助けて欲しいという。どうやら腐敗者を殺すために処理者と呼ばれる悪魔退治の専門家が来たが、森で殺されたらしいと知る。ウリエルは醜く太って腐敗してベッドで生きていた。警察に行っても埒があかず、処理者のを依頼してもなかなか来ないので、その事を農場主ルイスに相談する。ルイスはウリエルを農場から追い出す事にしペドロとジミーと一緒に車でマリアの所にやって来る。

 

三人はウリエルをトラックに乗せて農場からかなり離れたところへ捨てに行くが、途中で、子供とぶつかりかけた拍子にウリエルを落としたことに気がつく。そのままウリエルの所在がわからないまま仕方なく農場へ戻ってきたルイスたちだが、ルイスの農場の山羊の一頭が不気味な姿に変わっていた。ルイスはそのヤギを撃ち殺そうとするが、妊娠していた妻がルイスを斧で殴り殺し、自らも斧で頭を割って死んでしまう。

 

異様な事態に、悪魔に呪われたと知ったペドロたちは、この村を脱出するべく、まず先妻のサブリナの家に行き危険を知らせ、強引に子供達やサブリナを連れ出そうとする。ところが、ペドロが脱いだ服の匂いを嗅いでいた犬が突然幼い娘を襲い、咥えたまま逃げ出す。サブリナの今の夫が銃で追いかけるがペドロが止めようと走る。悪魔は銃で撃ち殺してはいけないルールがあった。一方ジミーは母親を迎えにいっていた。サブリナの夫は犬を撃ち殺したために悪魔に憑かれて、サブリナをトラックで轢き殺す。ペドロは無事な子供ヴィッキーと長男で自閉症の息子二人を連れて脱出、ジミーと母親を乗せて首都へ向かう。

 

途中、ジミーの友人で処理者でもあるミーシャに家に立ち寄るが、死んだはずのサブリナがヴィッキーを連れ出してしまう。ペドロたちが追いかけるが。サブリナはヴィッキーを食べながら歩いていた。ミーシャは、悪魔退治の器具を持ってウリエルの体を探しにペドロたちと向かう。そしてある小学校にいる事を突き止め、ペドロとミーシャが学校に行くと腐敗者となった子供達や教師たちの死体を発見する。ジミーは母と長男の三人でミーシャの家で待つ。

 

ミーシャは器具を設置して、講堂の床下に隠れるウリエルを発見し退治しようとするが、腐敗者たちに操られたペドロがミーシャから離れた隙にミーシャも殺されてしまう。やがてウリエルから悪魔が誕生し、ペドロに赤い印をつけて何処かへ去る。ペドロがジミーと長男のいる家に戻るが、長男の口から母親の体が吐き出される。ペドロはジミーと絶望して、映画は終わっていく。

 

なんとも言えない結末と、あまりに救いのないラストに打ちのめされてしまう映画で、ここまでホラー映画は行き着いたかとある意味絶望してしまう作品だった。ただ、悪魔憑きを近年の環境破壊やパンデミックの暗喩であるとするなら、奥が深い一本だったかもしれない。それにしてもペドロが何かにつけて舞い上がってしまってその度に悪い方向に進んでいくツッコミどころはちょっとコミカルだった。

 

「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」

ダラダラした演出とキレのない脚本、芯のないストーリーで、終始退屈の極みのホラー映画だった。一体何を見せたいのかわからないし、映像表現になっていない画面の連続で、どうしようもなかった。監督は近藤亮太。

 

山中、一人の少年が道に迷っている風な映像から映画は幕を開ける。そこに熊よけの鈴を鳴らしたボランティアの捜索員敬太が現れ子供を抱いて救出する。敬太の眠る部屋に同居人の天野が戻って来る。敬太の母から荷物が届き、開いてみるとビデオテープが入っていた。敬太の弟日向は幼い頃に敬太と遊んでいて行方不明になり、いまだに見つかっていなかった。後日、送られたビデオテープを見てみると、敬太と日向が遊んでいて、日向が行方不明になった時の映像だった。しかし写っている建物がどこかわかっていなかった。

 

天野に一人のジャーナリスト久住が声をかけて来る。先日山中で子供を救出したボランティアの青年は少年を引き渡した後姿を消したので取材しているのだという。そしてどうやら敬太がそのボランティアだと突き止めたのだ。天野は昔から霊感が強く、敬太に届いたビデオテープにも怪しいものを感じる。久住の上司は、日向が行方不明になった山で、二十年前に大学生が失踪する事件があり、その際その学生らが録音したテープを手に持っていた。そのテープにも廃墟にたどり着いたという声が入っていた。

 

天野、敬太、久住は、行方不明事件が連続する山を調査することにし、テープの声を元に廃墟にたどり着く。敬太はそこで日向の姿を見つけるも、天野はそれは魔物であって、日向はすでに死んでいていつも敬太のそばに霊として存在していた事を告白する。そして、日向がかつて着ていた服を階段の下で発見した敬太は、現実を目の当たりにして絶叫する。

 

三ヶ月後、久住はまだあの山の記事をまとめていた。実はあれ以来天野が行方不明になっているのだ。敬太も日常に戻り、事件はなおも続いていく形で映画は幕を閉じる。

 

で、どういうお話なのかという感じで、敬太の父は先日亡くなり、遺骨が部屋に置かれたままで、山に調査に行った敬太たちが、ばら撒かれて捨てられている骨壷を発見したりと、なんとなく霊の存在が窺えるのですが、それが物語に上手く関わってこなくて、一向にミステリアスさが見えてこない。そして唐突にエンディング。芸がないと言えばそれまでですが、テレビドラマ以下の仕上がりの映画だった。