「リライト」
尾道を舞台にし、尾美としのりを出演させたりして大林宣彦監督の「時をかける少女」にオマージュを捧げながら描くタイムトリップ青春ムービー。と言えば感じがいいが、全体がちょっとぐだぐだしていて、すっきりと展開していかない軽いタッチの仕上がりの映画だった。でも、こういう小品もあっていいかもしれない気楽なSFジュブナイルでした。監督は松居大悟。
一人の女性美雪、背中を向けた彼女は、10年前から来る自分を待っているところから映画は幕を開ける。やってきた10年前の自分が、将来書くであろう小説を手渡されて、物語は10年前、美雪の高校時代に物語は遡る。美雪は、図書委員で、クラスメートから本を返してきて欲しいと言われ図書室へ行って、保彦と出会う。というか突然彼は現れた。そして自分は未来人だといい案内を頼まれる。そして二人はデートを繰り返し、次第に心が惹かれ始める。
そして7月21日、教室で合唱の練習をしていた美雪は、突然地震が起こり旧校舎が崩落する現場を見る。保彦はこの日旧校舎へ遊びに行くと言っていた。美雪は慌てて自宅に戻り、保彦に貰った10年後にタイムリープできる薬を飲み安彦の無事を確認しに行く。そして10年後の自分から、保彦は高台にいると告げられる。貰った薬は十秒間しか止まれないので、美雪は再び10年前に戻り保彦に会うが保彦は美雪に、将来書く本のタイトルを聞き未来へ帰っていく、
そして10年、美雪は小説家になり、まもなく最新作として「少女は 時を掛ける」を出版しようとする。美雪は、10年前からやってくる自分に会うべく実家に戻ってくるが、約束の日、10年前の美雪は現れなかった。戸惑う美雪だが、そこに、今度出版する本の盗作疑惑が浮かび上がる。美雪は夫の助けを借りて、真相を探るが、一方、クラスメートの茂から強引に同窓会に誘われる。彼は全員を集めることを望んでいたが、一人室井だけは交通事故で亡くなっていた。一方、美雪のクラスメートの鈴子は、美雪の出版予定と同じ物語の本を出す予定だと迫ってくる。
同窓会が開かれ、あまり目立たなかった友恵もやってくる。全員が盛り上がったタイミングで茂はある真相を話す。実は、保彦は複数の生徒と出会って、未来人だと告白していた。その理由は、安彦のタイムループがうまくまとまらないままで試行錯誤を繰り返していたからだった。そして保彦は茂に相談し茂はクラスのメンバー一人一人と保彦を引き合わせる計画を指揮することになる。そして33人目友恵と引き合わせてようやくタイムループがつながることに成功したというにだ。
図書室、出版できなかった本を美雪は図書室に寄贈したが、図書室に行くと友恵がいた。そして友恵は保彦とのあの夏の日を語る。友恵は全て承知の上で保彦と付き合い、最後の最後、自分が書くであろう本の名前「エンドレスサマー」保彦に告げた。それは保彦が探していたものだった。友恵は保彦と結婚していた。こうして、友恵は新しいタイムリープの薬を調合して美雪に渡したことを告白し、新しいタイムループの薬で未来へ消えていく。自宅に戻った美雪は、少しズレた時間で戻ってきた過去の美雪と出会う。そして、何事かを告げる。書店で友恵が書いた本を立ち読みしていると傍に保彦をみかける。こうして映画は終わる。
少し、混乱してしまい。ラストは間違っているかもしれませんが、楽しめる一本でした。
「フロントライン」
宣伝を見ていた時から期待していましたが、期待通りの出来栄えでした。作品に合わせて役者を選ぶというのはこういうのを言います。新型コロナウィルスの集団感染で横浜港に釘付けにされたダイヤモンド・プリンセス号の実話をもとにしたドラマですが、役者それぞれが実に良い演技をしているし、監督によって生かされている。しかも、脚本が緻密に丁寧に描かれているので、物語が安っぽくならない。もちろん商業映画なので架空のエピソードを挿入していないとは言いませんが、前半のDMATのヒーロードラマから中盤の転換で、周囲の人々の矢面に立つ展開、そして終盤の大団円と、構成もうまい。しっかり作られだ作品というのがひしひしと伝わる傑作だった。こういう映画は見ないといけない。監督は関根光才
横浜に停泊しているダイヤモンド・プリンセス号の廊下をカメラがずーっと追い求めていくとストレッチャーに乗った患者の姿、それについていく客室乗務員羽鳥の姿、そして外に開かれた扉で深呼吸する場面で映画は幕を開ける。夜勤でソファで眠る結城医師のところに電話が入る。横浜港に停泊のダイヤモンド・プリンセス号でコロナ患者が出たのでDMATの出動を要請したいということ。DMATのリーダーである結城は、DMATは災害派遣のボランティア団体なので、依頼先が違うと断るが、厚生労働省の立松は、とにかくきて欲しいと電話を切る。
結城が対策室に行くと、船内で感染者が出てその搬送に立ち会って欲しいという依頼だった。難色を示した結城だが他に行くものもいない中、搬送だけならと承諾する。船内にはDMATリーダーとして仙道が入り、対岸の司令室に結城が待機する。医師の真田も、家族に口止めをして船内に乗り込む。しかし船内は悲惨な状況だった。次々と感染者が出る中、優先順位を決めて搬送を進めるが、突然、船内にいた感染症専門医の動画がアップされるに及んで、DMATへの人々の避難が始まる。それを報道としてテレビ局の上野らも取材を進める。搬送だけにとどまらずDMATのメンバーは船内で治療をすることになる。
船内で起こるさまざまな出来事に真摯に対応するクルー達、仙道や結城、立松の対応に、船内から感謝の言葉も出始める。次第に感染が広がる中、受け入れ病院を手配するのも苦慮されるようになった頃、愛知県の藤井病院が建設中の建物をそのまま提供すると連絡が入る。そして、残る乗船客を自衛隊などの助力で一斉に下船させ病院へ搬送するのがクライマックスとなる。全てが終わり、結城は立松らと帰ろうとするが、そこへ、仙道から電話が入る。北海道で集団感染だという。こうして映画は終わる。
細かいセリフの端端が実に丁寧に書き込まれていて、演じる役者達も、しっかりと言葉を伝えようと演技している姿が素晴らしく、完成度の高い映画とはこういうものかと感動、途中のエピソードの数々にも涙しながら見終わりました。良い映画だった。