「おくびょう鳥が歌うほうへ」
決して凡作では無いのですが、アルコール依存症の主人公の過去の回想と、現代の失敗の繰り返しを組み合わせたストーリー構成が、次第に長さを感じ始めて、物語の行先が見えなくなって来る映画だった。結局どういう話だったかと思い返してみても、見えてこないヒューマンドラマ。とにかく真面目に作られた映像は美しいし、音楽を多用したリズム作りもなかなかなのですが、もう少し、伝えるべき何かを絞るべきだった気がします。でもいい映画だった。監督はノラ・フィングシャイト。
スコットランド、オークニー諸島、一人の少女が海岸に佇むカットから場面が変わると、閉店後のバーにやってきたロナの姿から映画は幕を開ける。ロナはすでに酔っ払っていて、店員達も追い出そうとする。ロナは過度なアルコール依存症で飲むと手がつけられなかった。外に出たロナは一台の車に誘われて乗り込む。次のカットで顔を腫らしたロナが病院で面談を受けている。そしてリハビリプログラムに参加し、断酒会に出席して更生を図る。
父は双極性障害で、母とロナを捨てて出ていき、農場で移動住居で生活していた。ロナは、生物学の修士号を持っていて、自然保護活動を続けていた。絶滅危惧種の鳥の声を確認しながら農場主などにその鳥の居場所を保護できるような経営を依頼したりしていたが、いまだにその鳥の声を聞くことができなかった。デイニンという恋人と同棲していた時期もあるが、度重なるアルコール依存症によるトラブルにデイニンはとうとうロナから離れていった。
断酒会に参加して一時はアルコールを遠ざけるのだが、何かでストレスがかかると酒による失敗を繰り返し、母や周囲に迷惑をかけることを繰り返す。父の様子を見に出かけたりするが、何かにつけてロナを頼ったり、薬を飲まずに自身を見失って施設に入れられたりを繰り返す父にロナも疲れて来る。度重なる失敗を克服するべく、離れ島のパパイ島に移住し、そこでしばらく生活を始める。子供時代の父の姿、恋人との別れ、アルコールで失敗し、乗り込んだ車の男に暴力を振るわれて顔にあざを作り、別れたデイニンに迎えにきてもらった過去などが蘇る。
やがて、この島に母がやって来る。娘の姿を見た母は、それなりに立ち直った様子を見て、二人で海に入って泳ぐ。やがて春が来て、ロナは海藻を使った新しい活動に向けて前に進む事にして島を後にし、その途上で、今まで聞けなかった鳥の鳴き声を初めて聞き映画は終わる。
全編、失敗と反省を繰り返すストーリー展開で、時に映像でロナの心の風景を表現したり、雄大な大自然を描いて、自然の中で生きる厳しさ、一人の人間の小ささなどを語りながら綴る真面目な映画で、決して退屈はしないのですが、何か核になるものがあればもっと見やすかった気がします。
「悪魔のいけにえ」
まさにカルトホラーと呼べる一本だったが、カメラワークがなかなかのものである。特に、クライマックス、拉致されたサリーが阿鼻叫喚で叫び回るクローズアップを繰り返すカメラアングルのカット割が見事。その後のラストシーンも映像美学に凝っているし、語られるだけのホラー映画の一本だった。監督はトビー・フーパー。長編デビュー作である。
これから起こるテキサスチェーンソー殺人事件に巻き込まれる若者の悲劇を語るナレーション、ワンボックスで走らす五人の若者の姿、車椅子のフランクリンを下ろして用を足させてやる場面から映画は幕を開ける。彼と共にサリー、ジュリー、カーク、パムはフランクリンの父の実家に向かっていた。ニュースでは、墓地で死体が掘り起こされ、オブジェのように飾る事件が起こっていた。
途中、ヒッチハイカーを乗せてやるが、その男は自分の体に傷をつけてみたり、牛を殴り殺す屠殺場の話などをするので、不気味に思ったカークらはその男を放り出して走り去る。男は車に血で何やらサインを書く。
フランクリンの実家に着いたものの、ガソリン不足で立ち寄ったガソリンスタンドにもガソリンがなかった。仕方なくフランクリンの実家に入って過ごす事にする。カークとパムは近くにあるという川に泳ぎに行くが、川は枯れていた。ふと耳を澄ますと発電機の音がしたので、その音のする家に向かう。カークが家に入ると顔にデスマスクを被ったハンマーを持った男が突然現れ、カークは殴り殺される。カークが戻ってこないのに不審を持ったパムもその家に行き、突然現れた男に、肉を吊るす鈎に吊るされてしまう。
カークとパムが戻ってこないと、ジェリーが探しに行く。ところが、発電機の音のする家に入っていき、そこの2階で腐敗したような人間がいた。さらに下に降りて保温箱を開けると中からパムが飛び出して来る。そしてチェーンソーを持った男が現れ、ジェリーも殺されてしまう。夜になってもカーク達が戻らないので、フランクリンとサリーは懐中電灯を持って探しに行くが、突然森の中からチェーンソーを持った男が現れフランクリンは殺されてしまう。
サリーは必死で逃げてガソリンスタンドのところにやって来る。そして間一髪でガソリンスタンドの男に匿われるが、その男はずた袋を持ってきてサリーを拉致して車に乗せ、発電機の家にやって来る。途中、ヒッチハイカーと出会うが、どうやらガススタンドの男の息子らしかった。さらにチェーンソーを持った男は弟らしかった。
サリーは拘束されてチェーンソー男の家に拉致され、気がつくと夕食の場にいた。二階のゾンビのような男がサリーの指から出る血を啜り、ヒッチハイカーとチェーンソー男、ガススタンドの男と食卓につかされる。そして、ガススタンドの男に促され、ゾンビ親父にサリーを殴り殺させようとするが、すでにハンマーを握れず、サリーを押さえつけていたヒッチハイカーが代わろうと手を緩めた隙にサリーは逃げる。そしてハイウェイまで行くと、追ってきたヒッチハイカーは走ってきたトレーラーに轢き殺され、チェーンソー男が追ってきたが、通りかかったピックアップトラックにサリーは飛び乗り逃げる。残されたチェーンソー男は、朝陽の中チェーンソーを振り回す姿で映画は終わる。
確かにホラー映画ではあるけれど、カット割が見事で、単純なストーリーを凝った映像作品に仕上げているのは、これまで評価されてきたのも納得の出来栄えだった。なかなか面白かった。
「コート・スティーリング」
まるで漫画の世界という出来のメチャクチャなクライムアクションだった。主人公以外悪者ばかりで、しかも主人公に周りの人間も容赦なく死んでいくし、撃ち殺す流れは爽快なほどに躊躇なく、リアリティを越してあれよあれよと単調な物語が前に進んでいく。それでいてカメラワークにもこだわった演出はちょっとしたもので、まあ、B級映画と言えばそれまでだが、B級の一級品という仕上がりの映画でした。監督はダーレン・アロノフスキー。
地下鉄の壁にクレジットが流れ、次のカットで野球のバッターボックスで主人公ハンクが見事に打席を務めてカメラが引くと、ポールのバー、ここでハンクはバーテンダーとして働いていた。仕事が終わり、恋人のイヴォンヌと自宅に戻ると、隣の部屋の友人のラスが待っていた。父が危篤なので実家に戻るから猫のバドを預かってくれという。仕方なくハンクはバドを預かる事にする。
ところが翌日、ラスの部屋の前にロシア人らしい二人組が現れ、ハンクが文句を言うとめちゃくちゃに殴り蹴りされて腎臓を破裂させられて病院へ搬送される。しかし、ラスが何を隠していたか調べるために無理やり退院する。警察に連絡したらローマン刑事がやってきて、襲ってきたのはロシアンマフィアで、おそらく麻薬絡みだと知らされる。さらにコロラドという男らがやってきたら危険なのですぐに知らせるようにと言って帰って行った。
ところが、早速コロラドらの姿を見かけたハンクはローマン刑事に連絡するも捕まらず、ロシア人二人組に襲われて、ラスから預かったものを要求される。実はハンクは、バドのトイレの中に、おもちゃに入った鍵を見つけていた。それをポールに預けたがしこたま飲んで酔っ払って帰ってきたので、鍵のありかがわからなくなっていた。ロシア人に責められたが答えられずうやむやにしていたら、イヴォンヌが彼らに殺されてしまう。容赦なく人を殺す彼らに不安を抱く。
そこへラスが戻ってきた。そして、見つけた鍵は金を隠してある所の鍵だと知らされる。ハンクは寄って帰った日、ズボンのポケットに鍵を入れたまま脱ぎ捨てていてホームレスが履いていた。それを取り戻す。しかしラスは、ハンクを金を保管してある倉庫へ連れて行ったものの、ハンクが敵と間違えてバットで殴ったことが原因で死んでしまう。ロシア人らはさらにハンクの周囲の人間を殺すと脅してきた。母親も危険だと判断したハンクは母を避難させ、ローマン刑事に相談するが、ローマン刑事も敵方だった。ハンクは、ローマン刑事とロシア人二人組を同士討ちさせようとするがうまくいかず、ポールもその争いの中で死んでしまう。
コロラドらによってローマン刑事も殺されて、脅されるままにハンクは殺し屋二人組を車に乗せ、金のあるところに案内すると走り出す。実は、ハンクは、かつて野球でドラフト指名が決まっていたが友人と車を走らせていて事故を起こし友人を死なせ、自分は膝に大怪我をして野球を諦めた経緯があった。ハンクはあの時と同じ事故を二人組を乗せて起こし、まんまと殺す事に成功する。そして金を手に入れ、半分を母親に送り、残りを持って、ラスと同じ髪型にしてラスのパスポートで海外へ脱出する。こうして映画は終わる。
ロシアンマフィアとハンクのバトル戦は若干前後間違っているかもしれないが、容赦なく周囲の人間を殺すロシアンマフィアのキャラクターと、何の取り柄もないハンクながら必死で窮地を抜けようとする丁々発止がなかなか面白い。リアリティは全くないもののちょっと個性的なクライムアクションという一本だった。
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